「それでも彼と彼女と彼女の青春はまちがい続ける。」
金マーク付きたこ(?)の着ぐるみを撮る時、左の女子2人と右の子供が怪訝な表情。遠くから適当に撮る事もできた筈だが、珍しく職務に励む八幡。しかし次のハロウィン&ウィッチ(?)はだいぶ離れている。せっかく頑張ったのに顔を顰められて心が折れてるようだ・・・・イキロ(笑)。
その後雪乃に会って明らかに不審者を見る顔をされてOPへ。
そして場面は陽乃のステージに。前で立ち見をするスペースは空いているのに、陽乃のバンド(?)の演奏を一番後ろで聴く2人。床から数メートル上、体育館(?)の壁の途中にせり出して設けられた作業用通路。その一番後ろ。
10話で
「それは知ってます、見てはいたので」
と答えた雪乃。その時もこんな感じだったのだろう。
バンドを見ながら
「私もああなりたいと思っていた(過去形)から」
と言う雪乃。姉へのわだかまりが解けたのは良いが、なら今はどうなりたいのだろうか・・・・?
そこに相模がいなくなったとの報告が。報告に来た男子生徒は、雪乃の後ろに跪く→立ち上がって耳打ち。
色々あって、相模を探す時間稼ぎの為に陽乃に協力を要請する雪乃。去年と同じく「見てはいた」自分は「ああなりたいと思っていた」過去のものなのだと証明する。それを見た陽乃と雪乃のやり取り。
「雪乃ちゃん成長したのね」→「いいえ、私は元々こういう人間よ」
"こういう"とは、どういう人間だろうか?
陽乃が勝手に「お願い」と勘違いしてるなら放置すれば良い。損得勘定なら「命令よ」と言い直す理由がない。1話結衣、2話材木座、10話相模など素直に無能と言ったのと同じ。自分の求める結果に誘導する為に、お世辞などの嘘を言わず、(相手にとって不本意、不愉快な話でも)誠実に話す。
また生徒会長や静に陽乃を説得してもらう方法もあった。自分が話しにくいからと、他者を使った交渉、絡め手を使わない。副実行委員長の仕事を独力で解決しようとしたのと同じ。自分で真正面からぶつかる。
「この私に貸しを1つ作れる。これをどう捉えるかは姉さん次第よ」
しかし問題はここ。陽乃が「雪乃ちゃんが私にちゃんとお願いするなんてはじめてだし」と言うように、副実行委員長の仕事のように、今までの雪乃はそもそも協力を要請しない。仮に苦渋の決断で要請してもこの1文が言えず黙り込んでいた筈だ。だから陽乃が成長したと評価した。
ここが以前と変わらないと言うなら会話スキルのような表面的な話ではない。もっと根本的な行動指針、性格の話と考えられる。ならそれは何か?
7話で留美をどうしたいか聞いた静に葉山と雪乃が言った答え。
葉山「可能な範囲でなんとか」
雪乃「あらゆる手段を以って」
陽乃に協力を言い出せなかったのは、
9話最後のモノローグより、八幡は雪乃(の生き方)に憧れて、8話の最後で1度雪乃に失望した。そして10〜11話で雪乃を見つめ直した八幡。その八幡が肯定し、このあと相模の説得で張り合ったほど憧れ(直し)ている雪乃は"こういう"人間。
色々あって特別棟の屋上で相模を見つけた八幡。
「相模南を委員長としてあの場に立たせる事。そして委員長としての栄光と、挫折と後悔をきっちりと与えてやる事だ」
「雪ノ下は雪ノ下のやり方を貫いた。なら、俺は俺のやり方で、正々堂々、真正面から、卑屈に最低に陰湿に」
この屋上でのモノローグが八幡の目的と方法。方法を述べる時、八幡本人から伸びる影に次第にズームしていく。光=太陽は雪乃、伸びた影はその影響でできた虚像。本来の八幡ではない演出。では本来の八幡とは?
「あんまり調子が良くないんで、壁打ちしてて良いですか?迷惑かける事になっちゃうんで」
「自分が変われば世界が変わると言うが、そんな事はない。人が人を評価するのは固定観念と印象だ。ボッチはボッチである事を強要される」
これは3話冒頭、2人組を作れと言う教師に対して八幡が言った言葉。次のは8話で八幡の世界観を述べたもの。社交性を磨き2人組を作れるようになるのではなく、2人組を強要する世界=教師の意識を変える。相手の思考を読んで、相手が受け入れられる形で。これが本来の八幡。
問題はその方法を他人に拡張する時、自分が傷つくと、辛い目に遭うとわかっていても自分を貫く雪乃の影響を受けた事。八幡は雪乃(の生き方)に憧れている。雪乃のそれは確かに強さではあるがその分茨の道。雪乃も葉山のように建前と妥協と欺瞞を駆使すれば随分と楽に生きられるだろう。ところが八幡はその痛みをよりにもよって世界を変える為の犠牲に当てた。尋常ではない、静に説教されるのも当然。
葉山のやり方なら相模を連れていく事はできるだろう。しかし、周りがフォローしすぎて本来与えられるべき後悔と挫折が激減する。それを与える為に、そして相模がそれを受け入れ易くする為に「卑屈で最低で陰湿な八幡に泣かされた可哀想な相模」と言う世界を作った。演出の示す通り正に影の解決法。
また、葉山の説得が長そうだから短縮を計ったのではない。むしろ葉山の方法なら遅れてしまい、代理スピーチ中の雪乃と途中交代するくらいの失敗をする方が良い。
ただ、葉山の方法は八幡も最初に解決法として挙げている。ベストでないにしろ最低限それで目的は達成される。雪乃の生き方に憧れ、自分が傷つくとわかった上で、自分のやり方を貫きたかった。そんな八幡の、雪乃に張り合う気持ちが彼を動かしたのは確かだろう。
その後色々あって、ギャグとして流しそうになる海老名の「昨日の"敵"は今日のホモ」が引っかかる。雪乃とあーし(優美子)は敵対しているが、八幡と葉山は表立って対立していない筈。テニスで勝負するにはしたが、その後3バカの事件依頼や合宿など実に友好的だ。しかし、それと比べると10話の会議室の時は営業スマイルがなかった。なら7話レビューで書いた「それでも」の信憑性が高まる(本当は8話レビューで書くべきだったのに7話に書いてしまった。変な時期にブログはじめたせいで時系列と逆に書いていたので・・・・)。
結衣、沙希、戸塚が複雑な顔で去っていく中
「ヒャッハ
と陽乃がやって来る。八幡のヒールっぷりを賞賛し
「私好きだなー雪乃ちゃんには勿体無いかもねー。ねー静ちゃん」
と言って去っていく。その陽乃と対する静の言動でこの2人は確実に何かしがらみのようなものがある。
これまでも8話の最後に陽乃が登場してからの静の背景は相当の闇に覆われる演出がされていた。また1話で静から八幡に関する依頼を受ける時の雪乃の答え。
「まあ、先生からの依頼であれば無碍にはできませんし」
そして7話レビューで書いた車内の座席配置の話。2期があればその詳細が出てきたりするだろうか?
そして八幡に説教をし戒める静。
「比企谷、誰かを助ける事は、君自身が傷ついて良い理由にはならないよ」
「君が傷つくのを見て、痛ましく思う人間もいる事にそろそろ気付くべきだ、君は」
普通あんな自爆テロ紛いの事を繰り返したら確実に破滅する。八幡ならそれでもなんとかしてしまうのかもしれないが・・・・もしそうでないなら、破滅しかけた八幡を救う為に、雪乃が、結衣が、もしかしたら静や小町や戸塚も傷つくだろう。それを見た時、八幡はどうするだろうか・・・・?
その後部室にいく八幡。部室には雪乃がいた。嫌われ者になった自分を肯定する八幡に雪乃が言った言葉が、1話からの変化を語る。
01話「貴方の、そうやって弱さを肯定してしまう部分、嫌いだわ」
↓
12話「その弱さを肯定してしまう部分、嫌いではないけれど」
更に雪乃と八幡の会話は続き、1話との対比も続く。
01話の八幡「きっと俺と彼女はどこか似ている」
↓
雪乃「似たような事を考えるものね」→八幡「俺とお前が似てる訳じゃねーよ」
楽な生き方がわかっていても敢えて周囲に迎合せず、孤独になる道を選んだ2人。1話の八幡が感じた、そして12話までに雪乃が見出した共通の根っ子。しかし八幡は自身を守る為に世界を変え、雪乃は世界を変える為に自身を省みなかった。その姿に八幡は憧れた。それが八幡がはっきり似てないと言う理由。
そして八幡と雪乃が、はじめて部室で正面から向き合う。2人が本気で相手と向き合って話をする演出。
「そう、俺と彼女はちっとも似ていない」
「だからだろうか、こうして交わす言葉がいつも新鮮で心地良いと、そう感じていた」
「問い直して、新たに導き出した答えは、ちゃんと結論になっている」
2行目を言う時に映るのは、床にできた大きな影。過去の思いだった事の演出。しかし3行目で映るのは部室内の実像。出てきた答えが確かに今の部室内に存在する事を示す。
8話で1度雪乃に失望した八幡。10〜11話で再度雪乃を見つめなおし、それでも憧れの対象だと再認識した。今回の陽乃に対する雪乃の言葉を聞き
「ああ、全くそうだ。雪ノ下雪乃ってのはこういう人間なんだ」
と言った事からもその事が良くわかる。
その思いを再確認し、雪乃に友達になろうと言いかける八幡。
01話「(八幡の事を知らないから)あり得ない」
12話「(でも、今は貴方を知っている、から)あり得ない」
しかし雪乃は拒絶する。既に友達だから?なんだったら恋人になりたいから?
「でも、今は貴方を知っている」
と言う雪乃が可愛過ぎて生きるのが辛い(激萌)。
次は事故の話。嘘をついても良いと言う八幡。だが雪乃ははじめて八幡にあった時点では、八幡が事故の被害者だと知らなかった。6話の最後に部室でした3人の会話より、6話時点では、雪乃は八幡が事故の被害者だと知っていた。9話で祭りの帰り、電車を降り夜道を歩く時
「でもね言えない事ってあると思うんだ。タイミングを外すとどうしてもね」
と言う結衣の台詞が、雪乃がそれを言い出せなかった理由を代弁していた。
更に結衣が部室に来る。八幡は雪乃と向き合うのを止め、2人の間に結衣が座る。前回猛烈にアタックしたがちょっと雪乃に離された感じ。そんな部室内で八幡が思う。
「人生はいつだって取り返しがつかない。こんなどうしようもない一幕でさえ、いずれは失うのだ。そして、失った事を、きっといつか悔やむのだろうと思いつつ・・・・」
一見後ろ向きだが、中学生までの八幡は失った事を悔やむような時間があっただろうか?悔やむだろうと思うのは、今の時間を失いたくないから。その気持ちに八幡自身は気付いているだろうか?
台詞に合わせて、体育館ステージ、校門、渡り廊下、屋上、と学校の各所が映される。はじめて見つけた失いたくない場所。いつか今回の屋上での事も、忘れられて良かった過去でなく、失ったら悔やむ時間になると信じて・・・・。
今回のレビューは本当に難産でした。ぼんやり感じていた八幡や雪乃の人物像を言葉にしようとすると全然言葉が出てこなくて・・・・。レビューを1日で書ききれなかったのははじめてです・・・・。まあブログはじめて2週間も経ってませんが・・・・。おかげで昨日はストックにしてた7話を先に上げる事に。夏クールに入り、本格的に視聴番組を決めるデスマーチがはじまる前だったのが、せめてもの救いでしょうか(笑)。
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