屋上で霧絵と対峙する式。瞬く間に8人の取り巻きを倒す・・・・8人目はまだ飛び降りておらず、体は無事の筈。消えた後、元の体に戻るなら良いけど
「だが、巫条ビルの幽霊が君の意識であったのなら、君は今頃式に殺されている筈だ」
後のシーンで橙子がこんな事言ってるし・・・・。
●式は・・・・
そして雨水が貯まった屋上の床が、空を写し本当に空を飛んでいるよう。
「暗示は効かない。元々そんな憧れ、俺にはないんだ。生きている実感も、生の苦しみも知らない。ああ、本当はお前の事だってどうでも良い。でも、あいつを連れていかれたままは困る。拠り所にしたのはこっちが先だ。返して貰うぞ」
更に式がこう話す時、式の足元から何重にも円形の波が広がっていく。これらは、式が空を飛んでいる、もしくは浮かんでいる演出。しかし、式がどちらなのか、今はまだわからない。
しかし、滅茶苦茶デレてる筈なのに、むしろ怖いのは何故だろう
●霧絵が本当に見ていたもの
「落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろ!」
逆にこう叫んだ霧絵だが、心臓を貫かれ空に溶けるようにバラバラに砕けていった。霧絵は結局飛べなかった。ここで重要なのは仰向けに倒れていった事。俯瞰に見下ろすのではなく、空を仰ぐあおり視点。後の霧絵の台詞
「あの時、心臓を貫かれた瞬間に感じた閃光。圧倒的なまでの死の奔流と生の鼓動。私には何もないと思っていたけれど、まだそんな単純で大切なものが残っていたのだ。けれど、あの時のような死を迎えるのは不可能だろう。あれ程鮮烈な最期は、おそらくもう望めまい。針のように、剣のように、雷のように私を貫いた、あの死には。だから、できるだけそれに近付こうと思う。大丈夫、方法だけはもう決まっている・・・・言うまでもないけど・・・・・・・・私の最期は、やはり俯瞰からの墜落死が良いと思うのだ」
より、霧絵は式によって与えられた死に魅入られていた。死によって浮かび上がらされた生。今までずっと気付かなかった、自分に残っていた単純で大切なもの。
では、今まで霧絵が見ていたものとは?5話レビューでは地上は眼中になく空を見ていると書いた。しかし違った。隔離された、"遠い"世界だと思いつつも、霧絵はずっと俯瞰して"地上を見ていた"。空を仰ぎ、空を見ていたのではない。「(地面を見つめながら)俯瞰からの墜落死が良い」、それが霧絵の本心、飛べなかった理由。
●霧絵の演出
霊体を式に殺され、病室の本体に意識が戻った霧絵。そこに橙子が現われる。
「あの・・・・良い、眺めでしょ?」
「ああ」
「今夜は、月が、綺麗でしょ?」
「ああ」
「やっぱり・・・・私ここからの眺めが好きなの。ふふ、貴方は私の敵ね」
この日は雨、式の戦闘シーンでも月の姿はなかった。なのに嘘をついて適当に流す、世間話などする気がなく重要な本題がある、だから敵・・・・ではないと思われる。雰囲気で敵だとわかっていて、確かめる必要などなかった。遠視ができるようになる程、ずっと見ていた病室からの風景。病気で世界から隔離され俯瞰するしかなかった自分の全て。その風景の大切さがわからない・わかる必要のない、世界と繋がった者=敵。負け惜しみだったかもしれない、最後の意地だったかもしれない、だが確実に何かそんな意志が混じっていたと思われる。
「でも、この景色はいなくならないから。どれだけ憎んでも、私にはこれしかないから」
病室からの風景がどれだけ大切だったか、この台詞からも伝わってくる。そして、この台詞に合わせて家族の写真が映される。家族はいなくなっていると連想させる演出。5話レビューで書いた「霧絵は重病で、現在の記録は闘病中だが、事実上もう死んでいる」環境の詳細が明かされた。
「目には何も見えなくなって・・・・でも私の風景は変わらなかった」
空ばかり見ていたのは寝たきりの病気の為。病気のせいで世間から遠い、世間から隔離された空が居場所になった。病気が治り、他人との繋がりを再構築しない限り霧絵の心はずっと空に浮いたまま。ずっと"遠い"地上を見下ろすだけ。
●命懸けの恋(マジ話)
「病院の廊下で、彼と会った。毎週毎週、同じ時間に、綺麗な、花束を持って。私も、連れていって欲しかった」
この作品でフラグを建てると命に関わる・・・・でもヤンデレに絡まれたら、ヤンデレの彼女が殺してくれる・・・・何それ怖い(笑)。
●浮いている?飛んでいる?式はどっち?
「逃走には2種類ある。目的のない逃走と、目的のある逃走だ。一般的に前者を浮遊と言い、後者を飛行と呼ぶ」
「だって飛べなかった。ただ浮いていただけだから」
「なあ橙子、なまじ飛べちまうと、人間っていうのはあんな末路を迎えちまうものなのか?」
「飛ぶという事を知っていた蝶は、浮遊する自身の軽さに耐えられなかった。だから飛んだ。浮くのを止めたんだ」
周囲に馴染めず、なりたくなくてもそうなってしまう、それが周囲から浮く事。
大半は辿り着けない夢の世界、そこに自分の居場所を作る、それが望んだ世界に飛んでいく事。
浮く、飛ぶ、の間にある大きな違い。霧絵は飛びたかった訳ではない、だが病気により世界から"浮いてしまった"。そして、それは飛ぶだけに限らない。なまじ視えてしまうと、直死の魔眼の末路を式が重ねているのは確実だろう。
「暗示は効かない。元々そんな憧れ、俺にはないんだ。生きている実感も、生の苦しみも知らない」
霧絵との戦闘中に式が言った台詞。よって、式も今はただ浮いているだけ。
●戦闘の意味
藤乃、霧絵と2回の戦いを経て、その戦闘の意味を考えてみた。自分の異常性を理解してなかった藤乃。それを否定する為には、自分を見つめ大義は何かしっかり認識する必要がある。そして式は黒桐寄りの殺人衝動を見出せた・・・・殺人衝動を抑えようとか、不殺を目指すとはならない方向性がおかしいだけで、何もおかしくはない(笑)。
何も目的がなく、ただ力を得て、力に浮かされ、地に足が着かなくなった霧絵。その顛末を見て、式は自分の姿を省みる事ができた。
これらより、式が自分の殺人衝動をどう消化し、その大義を見出していくのか?という物語なのかなと思ったり、思わなかったり。そんな事を考えつつ次回に続く。
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感想を読ませてもらいましたがブログ主さんの空の境界考察は初見ならではの良さがあって中々面白いと思います。
既にご存知かもしれませんが劇場版「空の境界」は原作小説を1〜7章+終章で映像化したものです。
恐らく今回のアニメ放送は9月に劇場化される空の境界 未来福音の宣伝&新規獲得であり、アニメ版は放送クールの関係でかなりの話が削られています。
幹也と式の絡みがない5章と6章、最後の種明かしである終章が消去されていますが特に5章は空の境界の黒幕の話で最も盛り上がる章なので空の境界を十分に楽しみたいのであればレンタルなどで視聴することをお勧めします。
また時系列もバラバラで分かりにくくなっていますが順に並べると
2章 殺人考察(前)
4章 伽藍の洞
3章 痛覚残留
1章 俯瞰風景
5章 矛盾螺旋
6章 忘却録音
7章 殺人考察(後)
終章 空の境界
となっています。
長文失礼しました。
時系列などの詳しい解説ありがとうございます。
13話放映と同時に劇場版新作が公開されるみたいですね。
今から楽しみです(期待)。
初見でのレビューを書いているので、放映が終わり、
一通りレビューを書き終わったら未放映の話数から見てみようと思います。
多分、色々間違ってる初見レビューだとは思いますが、
宜しければ、またお越し下さい。