「モテないし、夏が終わる」
●服装でわかる智子の気持ち
「ビッチの友達として町を歩く以上、迂闊な振る舞いはできないからな。あとは・・・・それっぽい服か」
こう言う智子の部屋には、翌日の衣装選びの為に出した服が散乱していた。8話レビューで書いたように智子の言う「ビッチ=憧れのリア充」。そんな優と映画にいく為、智子は真剣に衣装を選んでいた。そしてそれは映画をどれだけ楽しみにしているかの表れでもある。
しかし、優が叔父のケーキ屋を手伝う事になり映画にいく話は流れてしまう。そのお詫びにケーキを奢るという優に、翌々日店にいくと約束する智子。しかし、電話を切るとうな垂れて
「映画観ないなら家でゲームやってたいな」
と女子力が枯渇し砂漠のように乾いた事を呟く。
そして智子がケーキ屋に着ていったのは、(高校になって優とはじめて会った)2話の時の超地味な服。智子のやる気のなさが服装にありありと表れていた。まあ、一応ネックレスの分だけ、2話よりはお洒落になったと言えなくもないかもしれない(笑)。
●ゆうちゃんはマジ天使
少し時間を戻って、優に映画にいけなくなったと言われた時、智子は
「変なメール(ゆうちゃん 今どんなパンツ はいてる?)を送ってたから?ついでにエロく見えたら負けな画像を添付したから?」
「ゆうちゃん、エッチな言葉でしりとりしよ。私からね。じゃあ、竿」
「えっ、えっ、えーっと・・・・お、お、お、おっぱい!」
「FUUUUUU!!」
「・・・・なんて事だ、絶交される心当たりがあり過ぎる・・・・っ」
と数々の悪行を思い出す・・・・ホントになんて事してんだよ、セクハラで逮捕されろ(笑)。こんな智子を見捨てないゆうちゃんはマジ天使。マジ器がデカい(意味深)。
・・・・なのだけど「おっぱい」を引き出した功績で、今回は特別に智子を不問にしたいと思います!(笑)。
●酷過ぎる妄想
色々あって、母親のツテでケーキを作るバイトをする事になる智子。バイトでの事を色々妄想するけど、手ブレで画面が揺れまくり、フィルム劣化によるノイズやらチラ付きが重なって非常に観辛い。智子の欲望に沿った妄想に無理があり過ぎる事を示す演出。
「(私が"モテすぎる"のはどう考えてもお前らが悪い!)んー良いタイトルーぅ」
「私イケてんな、こりゃ」
「き、キター。こ、こ、これは後ろ・・・・」
「ちゅ、ちゅ、チュー・・・・そ、そんなとこ付いてない、付いてないところに、ウホーキター」
そして妄想に合わせて漏れる智子の独り言も酷い(笑)。
●遥か遠くにあるリア充への道
しかし、バイト先にいってみると、お洒落なケーキ屋ではなくガサツなおばちゃんに囲まれた工場のライン作業だった。
「いや、ケーキだけどさ・・・・」
昼休みに、こう言いながら空を見上げる智子。青く高い夏空には淡い虹が架かっていた。虹は橋の暗喩、橋はこちらの岸と対岸を結ぶもの。つまり智子と、(優の様なお洒落なリア充になる為の)お洒落な職場との架け橋。しかし、それが空に架かった淡い虹。リア充への道は余りにも遠く、目には見えても触れる事のできない幻だった。
なのに、夏空とそれに映える虹は余りにも美しい。オズの魔法使いの劇中歌「Over the Rainbow(虹の彼方に)」の
「Somewhere over the rainbow〜(虹の彼方のいずこかに)」
というフレーズが浮かんでくる。
そして昼休み終了の放送と共に、青く高い夏空の下、一面の緑に囲まれたケーキ工場が映される。連なる山々とそこまで伸びる一面の畑は全て深緑に覆われている。そんな中にポツンと佇む「工場前バス停」の看板。
智子が求めていたお洒落な職場は町の中心の商店街。なのに、町を出て緑に囲まれた郊外の工場がそれからどれだけ外れているか、夏の日差しを受けて深く染まった緑が力強く語っていた。
●夏の陽が照り付ける眩い屋外と、薄暗い屋内
Bパートになり、夏の陽が照り付ける眩い屋外が映る。その後映るのはダラけきった智子と、電気を付けず薄暗いリビング。「外=世間」はあんなに輝いているのに、「屋内=智子」は暗く沈んだ生活を送っている演出。
そこに母親の声がかかり、風呂掃除を命じられる智子。母親は、智子から言い出したのに、そのバイトを1日で辞めゴロゴロしている智子にかなり腹を立てているようだ。また普通に(充実した)生活をしている母親がいるので洗面所は明るい。
しかし、智子が掃除するシーンで風呂は薄暗く陰鬱な雰囲気が漂う。ボッチの暗い生活に加え、掃除したくない智子の不満が表れている。
更にその後、物置(?)で自分の荷物整理をさせられる智子。その時も物置は薄暗く闇に沈んでいる。そして夏の陽が照らす眩い屋外の風景が繰り返し挿入され、屋内の暗さが対照的に強調される・・・・智子の暗いボッチ生活が強調される。
●サイレンの演出
少し場面を戻して、母親から智貴と比較し自分の駄目さを指摘された智子。逆上し智貴の部屋に駆け上って、智貴に八つ当たりをする。
「てめー、何自分の部屋の掃除なんてやってんだ!脛かじれよ!それに料理なんかはじめやがって!料理好きなの?ラノベの主人公気取りなの?女の子の気持ちに鈍感なの?『ん、何か言ったか?』とか言っちゃうの?」
「とりあえず、出てけ」
智貴が智子にこう答える時、救急車のサイレンがなっている。自分の駄目さを智貴への八つ当たりに転嫁した智子は病院に搬送されるべき、そんな智子の駄目さを表している。
「弟の癖にバカにしやがってよぉ!何が受験だよ、掃除しろオラァ!」
更にこう智子が言うと、パトカーのサイレンと共に母親が現われる。怠惰な上にしっかり者の弟を逆恨みして堕落を唆した智子に、正義の鉄槌が下される、そんな暗示。
●夕日が茜色に染めた物置で
「ふぁー、やっと終わったぁ」
物置の整理が一段落し、智子がため息混じりにこう言う時、物置は夕日の茜色に染まっている。やっと整理が終わった開放感の演出。・・・・だけではなくこの後見つける小さい頃の智貴の作文が、智子の心を明るく照らす暗示。
●蝉の殻は良い子だった昔の智子
智貴の作文により、智貴と遊んでやり、困っている弟を助け、家の手伝いも良くしていた、昔の自分の姿を思い出す智子。蝉の殻はそんな良い子だった昔の智子の暗喩。
後に流星群を見る為に訪れた公園でカップ麺を食べ
「(つらいことや哀しいことは 人生を楽しむためのスパイスだって何かの本で見たけど)スパイスばっかだよ、カレーしかできねーよ」
と涙を零す智子の直後に、殻の上に立ち、脱皮したての体が乾くまで動く事もままならない蝉の姿が映る。
1般的に脱皮は成長の演出だけど、ここでは退化、劣化、悪化の表れ。弟に慕われていた、良い子だった智子はもう抜け殻で、今の本体は動く事すらままならない残念な子・・・・。
その智子が蝉の殻を智貴の机の上に置いた意味は・・・・今回智貴は蝉の殻の事を覚えておらず7話のビデオのように智貴が昔を思い出して智子の事を考えてくれるフラグではなさそう。よって
智子の、少しでも昔の自分の良さを取り戻すという決意の表れ。
であって欲しい。昔は良かったという単なる懐古や、駄目な自分でも昔みたいに慕って欲しいという甘えではないと信じたい・・・・んだけど、全部ごちゃ混ぜで本当に少しだけ改心したって感じなんだろうな(笑)。
そんな感じで、ほんのちょっとだけ成長フラグの先っぽが見えた気がしないでもない今回。でも次回からも相変わらず駄目な子なんだろうなと思いつつ、最後は元ネタを見ながら次回に続く!
●元ネタ
優との電話の時に映る、一番下に"SOUND ONLY"と表示された黒い長方形のモノリスみたいなものは「新世紀エヴァンゲリオン」のゼーレという組織の会議で表示される通信画面(?)。
また、左の目が縦に3つ、右の目が縦に4つ並び、真ん中にAPPLEと書かれたマークは、そのゼーレのマーク。因みに蛇が囲むのは知恵の実=リンゴであり、APPLE(会社名)に2重の意味でかかっている。
母親が智貴と比較し智子を叱るシーンに映るのは「風の谷のナウシカ」の巨神兵。
「何が受験だよ、掃除しろオラァ!」
智子が智貴に言ったこの台詞は「エデンの檻」の
「何がクニだよ クンニしろオラァァァ!」
という台詞が元ネタ。
「何 事ある毎に姉より優れようとしてんの?ケンシロウ?」
物置でぼやく智子の台詞。ケンシロウは漫画「北斗の拳」の主人公で、その兄ジャギの台詞「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねぇ!!」を受けている。
また、この時に映る北斗七星の左に寄り添う赤い伴星は「死兆星」。元ネタは青い伴星で、見ると1年以内に死ぬと言われていた。
カスタネットを「うんたん、うんたん」と言いながら智子が叩くシーンは「けいおん!」の平沢唯の同様のシーンから。
メビウスの輪の模型を見る時に流れるBGMは、ドラマ「Xファイル」のBGMのオマージュ。
「こんなのしょこたん以外欲しい奴いないいしな」
蝉の殻を集めるのが趣味みたいです。
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