【有頂天家族11話】弁天は天狗でなく人間。「そうさん」とは誰?【感想レビュー】


有頂天家族2の記事も始めましたので、よろしければご覧下さい。
【有頂天家族2】一期のまとめと二期の予想
【有頂天家族2】第1話 感想・考察
【有頂天家族2】第2話 感想・考察



有頂天家族 第11話「捲土重来」

●橋は繋がり

 冒頭の矢三郎の独白の最初に、石橋に集まる狸・兄弟達が映る。総一郎を死なせてしまったと落ち込む矢二郎をみんなが心配し集まっている。橋は繋がり、絆の表れ。

「てんでバラバラの兄弟を繋ぎ止めているのは、海よりも深い母の愛と、偉大なる父とのさよならである。1つの大きなさよならが、残された者達を繋ぐ事もある」

8話の矢三郎の独白にあった通り、総一郎の死により繋がりを深めた兄弟達の演出。

●雨は涙

 前回に引き続き、夷川に囲まれていた矢三郎。しかし、そこに弁天が表れ矢三郎を連れ出してしまう。手下達は雨笠を被っているし早雲も手下が傘をかざしていた。しかし、弁天が矢三郎を連れていってしまった後、早雲は手下の傘を払いのける。雨は涙の暗喩。弁天に計画を邪魔され涙目の早雲の演出・・・・ざまぁ(笑)。

 そして矢三郎は前回からずっと雨に濡れ続けている。傘に変化(へんげ)しても矢三郎自身は濡れ続けている。夷川、叔父にここまでされ悲しみが止まらない。

 ここまではなんの問題もないんだけど、問題は弁天。

「おかげで助かりました、ありがとうございます」
「私が何かした?お礼を言う事はないわ」

ついに師匠のツンデレが伝染ってしまった(笑)・・・・ではなく、まだ雨が降っているのに矢三郎・傘を手放してしまう。再び雨に濡れる弁天。よって弁天は涙に濡れ続けている。

●弁天が全くわからない

 問題は弁天が泣いている理由。それが全くわからない。赤玉は本当に普通に暮らしていた鈴木聡美を攫ってきたのか?それとも自殺などしようとしていた鈴木聡美を助けようとしたのか?

「一昨日のイヴの夜、"お師匠様"のアパートにいったわ・・・・久しぶりに酔っ払っちゃったから、たまには"先生"の顔でも見ようと思って」

 矢三郎・傘を手放して、弁天はこう言っている。自分を攫った相手なら"エロジジイ"などになる筈。それに幾ら酔っていても自分から会いにいくとも思えない。また1話で赤玉は

「ワシが見ていてやらねばすぐに魔道を踏み外す」

と言っていた。これらより赤玉が一方的に攫ったとは考えにくい。しかし

魔王杉で赤玉を騙した矢三郎(と弁天)を追及しない赤玉。
父を食べた弁天(淀川)を慕ってしまう矢三郎。

などこの作品には二律背反の思いを抱く者が非常に多い。よって、弁天が一方的被害者なのに、赤玉をそこまで毛嫌いしていない可能性も少なくない。

「弁天様に、欲しいものなんかないでしょう?なんでも手に入れるくせに」
「酷い事言うのね。欲しいものなんか、何一つ手に入らないわ」

 とりあえず確かなのは、今回の雨や矢二郎の井戸で流した涙やこの台詞から、理由はわからないけど弁天はずっと現状を嘆き続けている。

●弁天の詳細が出ないのは、弁天が「人間」だから

 1話レビューで書いたように、OPより有頂天家族は狸の4兄弟と母親、天狗の赤玉、そして弁天の7人家族の物語。

よって弁天が背負うのは「人間」。

 そしてこの作品は人間が人間の為に書いたもの。狸や天狗を使い、人間を浮かび上がらせる、人間について考えさせる為に書かれている。

「全く人間という奴は性質が悪い」
「だって私は人間なのだから、鍋になった狸を食べるだけ。痛くも痒くもないのだもの」
「こんな酷い事は狸のする事じゃないよ。まるで天狗や人間のする事じゃないの」

これらの台詞を見ればそれが良くわかる(因みにこの作品の天狗は気位が高いだけで、高いからこそ陰謀を巡らしたりはしない・・・・筈。よって、前回弁天と同じ部屋に控えていた鞍馬達は、いよいよ下級の天狗モドキと言える)。

 原作がお堅い部類っぽいなと思ってはいたけど、ここまで来てこの感じなら、予想通り最後まで進んでも弁天が攫われた詳細は出てこない。「人間」を背負っている弁天は特に考える余地を残す為ほとんど語られない。また夷川もおそらく明示的な断罪はされない。でも悪を放置してる訳じゃない。どう罪を償うべきか?もしくは狸なら許されたけど人である自分はどうあるべきか?などを考えさせるヒントが散りばめられている・・・・筈。

 ・・・・そんなレビューを1日で書けと・・・・?今から最終話がタノシミダナー(白目)。

●ロリコンになっても仕方ない(笑)

 話を戻して、矢三郎が化けたのはフリフリのついたロリータ風の傘。2話で母親とビリヤード場にいった時に、矢三郎はロリータ服を着た少女に化けていたけど、その時に差していた傘。どう見ても弁天には似合わない。

 ・・・・初恋の相手は父を食べた悪女で、許婚は(行動的には助けてくれるけど)ツンツンした口調で姿すら見せてくれない・・・・ロリータファッションはそんな矢三郎の「優しい娘が良いな(切実)」という願望の表れだとしたら・・・・イキロ!(笑)。

●渡りにくくても橋は橋

 雨の中、川に設置された飛び石の橋を渡る弁天と矢三郎。半ばジャンプして渡りにくそうに飛び石を渡っていく2人。5話の狭く、至るところに錆が浮かび、不安定で脆い屋根の上の渡り廊下と同じ。頼りない2人の繋がりの表れ。

 しかし、今回も2人は橋を渡りきった。頼りなく脆くても繋がりを持つ事ができ、矢三郎は淀川の事を聞く事ができた。そんな2人の関係を飛び石の橋が演出していた。


●サブタイは釣り

 色々あって、薬を盛られ倒れる寸前の矢三郎に金閣が高らかに言い放つ
「捲土重来!」
と。確かに2話で、4話で、7話で悉くやられてたけど金閣、銀閣のリベンジなんてどうでも良いよ!(笑)。

 次回矢二郎がどうやってみんなを助けるのか想像もつかないけど(笑)、今回のサブタイはどう考えても次回に付けるべきでしょう・・・・もしかして今回のサブタイは予告に出てる矢二郎を指しているって事?・・・・汚いなさすが大人きたない(笑)。

●寿老人はやはり悪役

「それでわたくしが一肌脱ぐ事になりまして」
「お前はそういう商売をしていたのか?全く"悪い奴"だ」

 人間が狸を売買しても"悪い奴"にはならない。よって寿老人は早雲が狸だと知っている事になる。狸が人に化けられると知っていて食べている・・・・完全な悪役です、本当にありがとうございました。

「これはいけません、これはいけません。例え寿老人様の仰る事でも、こちらの狸はお譲りできません」
「お前のお気に入りという事かね?」

 そうだとすると、この会話の下衆度が一気に上がる・・・・。

●『そうさん』

 名前で前々から気になっていた事がある。下鴨兄弟は矢一郎〜矢四郎、夷川も(呉一郎は確定はしてないけど)呉一郎〜呉三郎(二郎が金閣、三郎が銀閣)。なら早雲は総二郎ではないのか?夷川に入って改名した?そんな事を考えていたけど

「『総さん』かい。アニキは先刻ご承知だよ」
「あんたは俺を夷川と呼ぶ・・・・」

この早雲の台詞より、少なくともこれまでずっと早雲の最初の2文字は『そう』。だから『そうさん』とは『早さん=早雲』の事でもある。

 早雲(総二郎?)も『そうさん』なのに、兄が『そうさん』なら自分はなんなのか?しかも、よりにもよって惚れた女が兄をそう呼んでいる。早雲の台詞には、そんな思いが込められていると思われる。

 もし海星と矢三郎が付き合い、矢三郎の事を『やーさんやーくん』と呼んだとしたら、矢二郎はどう思うだろうか?

●海星マジ天使!

 矢一郎を鍋にする事までは知らなくて、馬鹿なだけの可能性があった金閣、銀閣も目出度くクズの仲間入り。早雲に寿老人などクズなおっさん、爺さんだらけ。弁天は良くわからないし。

 そんな地獄の中に現われた海星は正に天使!メチャメチャ癒されるよ。矢二郎がロリコンになっても惚れても仕方ないね!(笑)。

 しかし、矢四郎を助けたのが見つかり、夷川の手下達に囲まれた海星と矢四郎。やはり雨=涙に濡れている・・・・海星が泣くなら早雲も許しちゃおうかな?(オイ)。

 そんな事を思いつつ、泣きながら阿呆を貫こうとする矢一郎がカッコ良かったので最後は本編と同じく矢三郎の独白で〆。

「阿呆高じて崇高となる。我らはそれを誇りとする。我らの父も、そのまた父も、下鴨家の狸達は代々、その身の内に流れる阿呆の血の然らしむるところによって、時に人間を化かし、時に天狗を陥れ、時に、煮え立つ鉄鍋へ転げ落ちてきた。これは恥じるべき事ではなく、誇るべき事である。例え涙が滲んでも、それでも尚誇るところに、我ら兄弟の面目があると知れ!」
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2013年09月16日 14:36 by 元会長
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この記事へのコメント
またまた参上^^;
いつぞや金曜倶楽部のメンバーの一人が文豪に似ている的なことを書いたような気がするのですが、太宰治、のような気がします。
「電気ブラン」繋がり。。。かな。。。
Posted by 通りすがり at 2013年09月20日 23:13
コメントありがとうございます。

「電気ブラン」でググってみると、
太宰治の「人間失格」の中に出てくるんですね。

文学作品は胃薬が要るものが多いので(笑)、
「人間失格」も駄目男の話だと聞いた事があるくらいで
実際に読んだ事はないのですが、
早雲が駄目狸である伏線だったのかな〜と思ってみたり。

こんな感じですが、
よろしければまたお越し下さい。
Posted by 元会長 at 2013年09月21日 15:04



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