●大麻畑で戦う理由
式は白純の大麻畑を突き止め、再び2人は相見える。その戦闘で注目したいのは2人を上下逆さまの視点で映す演出。それは10話レビューで書いた式の正面に立てない白純の演出と同じ。自分の行動を決めるしっかりとした信念がなく、視点の定まらない"2人"の演出。黒桐に白純を殺してはいけないと言われ、どうして良いかわからない式の演出。
そしてそれは2人の戦いの場が大麻畑になった理由でもある。白純は式という、式は黒桐という麻薬に侵され感情が麻痺している。大麻畑はそれを暗示している。
後に式は黒桐を"夢"だと言うけど、夢が眩し過ぎて、式が夢を見るのではなく、黒桐という夢に式が"浮かされている"。更に織はそんな夢の為に死んでしまった。
勿論白純も"式への恋心"という麻薬に飲まれ、式は殺人鬼だという妄執に"浮かされている"。後に黒桐が言った
「人を殺して、その罪を自分のものとも認められない。ただ逃げて、殺人者にも殺人鬼にもなりきれない逃亡者。それが貴方の正体です、先輩」
この台詞の通り。殺人鬼の道を選び、そこで罪を背負うのではなく、白純はその罪に"浮かされている"。そういった意味では、式の祖父は正に殺人鬼だったのだろう。
●白純はまだ人間
上で書いたように、白純は圧倒的な覚悟や悟りで殺人の罪を受け止めた上で、殺人を犯す"鬼"ではない。フィクションの中にある遠い存在ではない。なんの覚悟もないまま人を殺してしまって、その罪からひたすら逃げている「身近な弱い人間」。ちょっと戦闘力が高く薬学(魔術?)に長けてるだけで、心は脆弱なただの人間。
それなのに、あれだけ涎を垂らし式を舐めても、式を食い殺さなかった。涎は変態の演出(笑)と共に、圧倒的なその欲求に耐える白純の演出でもある。
「つまり(起源を)自覚するとその方向性に負けてしまうんですね」
11話の黒桐の台詞より、その食人欲求は凄まじいものがある筈だ。
「おかげで俺は食いたくもない死体を処理するハメになったがな」
更にこの台詞を裏返せば、食いたくて仕方ない式を起源に逆らって食べなかった。それだけの自我がまだ残っている。
白純は悪い意味でも、良い意味でも正に人間として描かれている。
そこまで白純が最後の一線を守っているのは
「殺れよ。俺を殺って本当のお前に戻れよ!」
「どうして・・・・ただの1度も"人間"を殺してないんだ?荒耶みたいな人間じゃない相手を殺っても駄目なんだよ」
これらの台詞と、11話の橙子の台詞
「白純里緒は1個の人間ではなく、複数の獣と見た方が良い。白純里緒という人格が残っている今はまだ良いが、それが消えれば、本当に獣の群隊に変貌するぞ」
より、起源に飲まれ獣になってしまっては、式に殺されても意味がない、式を殺人者にする事ができないから。
●黒桐は死んでない?
「大丈夫。すぐにあんたを縛り付けている原因をなくしてやるから」
白純は今まで"殺す"と簡単に口にしてきた。なのにここで敢えて"殺す"という言葉を避けている。更に階段を降りかけて、立ち止まりしばらく式の方を見つめている。平時でさえ人を殺す事ができず、更に薬で朦朧としている式が、その煽りに反応して立ち上がるとは考えにくい。それより黒桐を殺す方が遥かに確実だ。なのに、それでも式が反撃してこないか待ってしまった。
また白純は、11話で折角2人きりで会えたのにわざわざ黒桐を見逃している。
「君は優しいな・・・・そうだった、いつだって君だけは、白純里緒の味方だった。だから今、僕がこうして自分を保っていられるのは君のおかげなんだろう」
そしてこの台詞より、"式への恋心"に"浮かされていた"白純を繋ぎ止めていた最後の楔は黒桐。
これらより白純は黒桐を殺したくない、殺してしまったらもう人でいられない。
黒桐に"逃亡者"だと言い当てられ、逆上して黒桐を殺したように見える白純。でも、白純は"人間"でなければならない。獣になってしまったら、人でなくなってしまったら、もう殺人を描けない。
人が害獣を殺すのは罪ではない、獣になった白純を殺す事に最早なんの意味もない。獣になって尚殺さなかったら、血を吸ってきた蚊を殺さない、そんなフィクションの世界の遠い話になってしまう。
また黒桐と白純が話したのは廊下、大麻畑ではない。それは白純が"式への恋心に浮かされていない"事の暗示。
白純が意図的に殺さなかったのか、深層心理のブレーキなのかはわからない。でも、白純は黒桐を殺していない。だから式が白純を殺すかどうかの葛藤に意味が残る。
式は白純を殺してしまうのか?それとも踏み止まって不殺を貫くのか?次回はいよいよその答えが出る最終話。今までの話がどう収束するのか?できればハッピーエンドが良いなと願いつつ注目の最終話に続く!
(2013/9/22追記)
いよいよ新劇場版「未来福音」の公開が迫ってきました!新キャラはこのお三方がされるようです。
瀬尾静音:井口裕香さん(イン何とかさん。1〜2話では看護婦の声をされてましたね)
両儀未那:金元寿子さん(イカちゃん)
瓶倉光溜:石田彰さん(カヲル君)
・・・・男キャラはともかく、お二人とも可愛い声だし、そんな女の娘達がヒドイメニアワナイトイイナー(笑)。
あと、その他の公開館情報などは、こちらの【公式サイト様】をご覧下さい。
スポンサード リンク
スポンサード リンク
その最終話と同時に新劇場版である空の境界「未来福音」の公開が始まります
殺人考察(後)を最後まで見ていれば楽しめる内容です
追記で公式サイト様へのリンクを貼りましたので、
興味のある方は是非いってみて下さい。
こんな感じですが、よろしければまたお越し下さい。