【境界の彼方4話】「だから…生きろ」境界の彼方で…【感想】


境界の彼方 #04 「橙」

●未来と友達になりたかった秋人

 今回の隠し玉はなんと言っても秋人(妖夢モード)だった訳だけど、どうして秋人はそれを未来に言わなかったのか?

「生まれた時から悪魔のように扱われ触れる事すら恐れられた私の何がわかるって言うんです?・・・・知ったかぶりしないで下さい」

3話で未来がこう言った時が絶好のチャンスだった。むしろ秋人の境遇を知りもしないで、自分の方が不幸だと思ってる未来に真実を言いたかった筈。

 でも、その後も自分の秘密を話すのを頑なに拒んだ秋人。

その理由は、未来と友達になりたかったから。
(まあ、なれるものなら恋人に、と思ってたかもしれないけど(笑))

 もし未来を助けたいだけなら、秋人が自分の秘密を話して、ここなら未来でも表面上は良好に見える関係(秋人は少なくともこう思っている)を築けると未来に言えば良い。

 未来が唯を殺してしまった事に対するフォローがないけど、それは自分の秘密を黙ったまま、人殺しのフォローもできないまま、それでも未来を文芸部に誘った秋人も同じ。そして秋人の秘密を言えば、その状況より遥かに未来の心を動かせただろう。

 そうしなかったのは、秋人が自分の秘密を知られたら未来に拒絶されるかもしれないと恐れていたから。勿論、未来の境遇に同情・共感して助けたいという気持ちもあっただろう。でも、それ以上に秋人は同じ境遇の未来なら、美月達より深い友達になれるかもしれないと思った、自分を受け入れてくれるかもしれないと思った。
だから、自分の秘密を打ち明けられなかった。

●サブタイトルの意味

「あのさ、僕は、普通の人間に見えるかな?」

 でも、今回の最後で未来にこう言った秋人。こんな台詞はこれを否定しそうな者に対して言ったりしない。秋人の秘密を知っても、未来は一緒にいてくれている。未来ならこんな自分でも受け入れてくれる筈、そんな期待が込められた秋人最大のデレ。

「そうですね、ただの性格の悪い、眼鏡好きの先輩に見えます」
「・・・・なんだそれ・・・・」

 そしてそれに対しこうデレる未来。孤独だった2人が、自分と同じ境遇の者と出会いやっと心を通わせる事ができた。灯ったばかりのか弱い、でも温かな"橙"の火が、2人の心の中を優しく照らしていた。

●タイトル「境界の彼方」の意味

 異界士仲間にすら呪われた血と忌み嫌われた未来。半妖でその力を制御できず、ずっと異界士(泉、博臣、雫、彩華)に監視されてきた秋人。そんな人間と化物との境界を彷徨い続けた2人がその果てで出会う事ができた。心を通わせる事ができた。

 そして共に歩み出した2人。
そんな2人が進む境界の彼方には・・・・きっと、幸せな未来があると信じたい・・・・。

 また、妖夢だけど人間の境界に近い新堂彩華に、新堂愛。(未来を本当に殺す気なら)常人と人殺しの境界を綱渡りしている伊波桜。

 あと藤真弥勒と名瀬泉が良からぬ事を企む黒幕なら、狂人とかアレな感じの何か(笑)と常人の境界
、なんて意味も込められているのかもしれない。

 それらを含んだとしても、最後はハッピーエンドに辿り着けると良いな(笑)。

●指輪を見て未来が思った事は・・・・

 虚ろな影の化けた巨大な唯に握られ動けない未来。そんな場面を前に何もできなくて、近くに落ちていた金の指輪を未来に投げつけた秋人。そして指輪は未来の顔の前を落下していき・・・・。

「唯・・・・唯は、もう・・・・いないんだ!」

 落下する指輪を見ながら、心の中でこう絶叫した未来。一見未来が過去を振り切った希望あるシーンに見える。でもここは未来が過去の罪をもう1度胸に刻む、絶望を噛み締めるシーン。

 この時、未来は楽しかった唯との生活を思い浮かべる。それはもう自分の手から離れてしまった、目の前を落ちていく指輪=失くしてしまった生活。3話で、未来が唯を殺したと告白した時の回想で、指輪を外すところが強調されていたのはここに繋げる為。

 もし未来がこの指輪をずっと填めていたら唯は死ななかったかもしれない。でも、未来は恐怖に駆られ指輪を外してしまった。幸せな唯との生活を自ら手放してしまった。

(・・・・と未来は思っている。僕の脳内では1000%虚ろな影のせいで、唯も未来に自分を殺すよう言っていたりして、仕方がなかったと全会一致で確定してるけど、未来は今でも自分を責め続けている)

「唯・・・・唯は、もう・・・・いないんだ!私が、指輪を外して、殺したから!

 だからこれらを敢えて言葉にするとこうなる。未来はこの辛い過去を噛み締め目の前の唯は幻影だと、虚ろな影のまやかしを破っただけ。

 だからこの後、虚ろな影が秋人に取り憑いた時、未来は動く事ができなかった。もし桜に攻撃されたら何もできないままだっただろう。心の問題はほとんど何も解決してないと言って良い。

「私は、普通の人間に、見えますか?」

 そして未来の血で荒廃した森の傍で、こう言いながら金の指輪を拾い上げる未来。"煌く指輪=過去の楽しかった生活"と"周囲の惨状=今の未来の生活"が対照的に対比されてとても切ない・・・・。

 でも、上でも書いたように、こんな台詞はこれを否定しそうな相手には絶対言わない。(無意識にでも)秋人ならこの光景を見ても未来を受け入れてくれる、と未来が思った、心を開きかけている事の裏返し。


 過去は戻らないけど、秋人と未来が共に進む境界の彼方にはきっと・・・・。

●桜の目的は?

 襲ってきた割に、弾をわざと外してるように見えたり、未来を追い詰めておきながら止めを刺さず立ち去ったり、不可解な行動の多い桜。

 また桜は、感情が乏しすぎると言うか、意思が感じられないというか、傀儡の術にでもかかっているみたい。
唯の幻覚を見て武器を握り締めていたので全く意識がない訳でもなさそうだけど・・・・。

 その原因はおそらく弥勒。OPより、桜を術で操るか、言葉巧みに扇動していると思われる。だから、桜の目的=弥勒の目的。そしておそらく弥勒は虚ろな影ではなく、未来と秋人の力を見る為にやってきた。

 よって、桜は

1.1人で戦おうとする未来を秋人がくるまで足止めした
2.未来を虚ろな影まで誘導し、本気で血の力を解放させる


あたりが目的だったのではないかと思われる。

●未来は本当に自殺しようとしていた?

「(前略)でも、それでも栗山さんはここにきたんだ。だったら貫け。虚ろな影なんかに屈するな!屈したらなんの意味もなくなる・・・・刺せ!僕は不死身だ。だから!・・・・だから・・・・生きろ」

 虚ろな影に意識を乗っ取られながら、未来にこう訴えた秋人。これを聞いて1話からの事を思い返す未来。

 1話の未来の自殺は秋人の勘違いで、未来は見晴らしの良い屋上から妖夢を探してただけで、そこに秋人がきたから思い切って刺してみた・・・・のかと思ってたけど・・・・。

 未来は本当に自殺しようか迷っていて、本気の絶望が伝わったから秋人は即屋上に走った。そもそも、未来は虚ろな影と戦い死ぬ気だった。なのに新しい家にいた妖夢にすら勝てなくて、本気で飛び降りようとしていた・・・・。

 じゃないと「生きろ」に繋がらない。1話の秋人の眼鏡紳士っぷりと、ボケボケの未来に騙されてたけど、そこまで追い詰められていた未来。そして本当にその命を救っていた秋人・・・・。

 だから虚ろな影に取り憑かれた土壇場で、今まで隠し続けていた秘密がバレるとしても、未来には生きて欲しいと願った秋人・・・・
本当に悲し過ぎた2人・・・・せめてこれからは、2人に幸せな未来があると信じたい・・・・。

 こんな感じで切ないけど、秋人と未来の心が通ってひとまずハッピーエンドと言って良い区切りになったのではないでしょうか。でも、

「貴方には関係ないわ。結局1人なのよ・・・・みんな」

と予告で言う美月。更に秋人が本当の意味で美月達に心を開いていない事がわかった今回。泉はともかく(笑)、美月(と希望的観測では博臣)はかなり秋人の事を思ってくれてる気がするのに・・・・。

 これまでは出番が少なく、秋人を好きなツンデレって事くらいしかわかっていない美月。次は美月について掘り下げて、美月が報われるような話になりますようにと祈ったところで次回に続く・・・・。
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2013年10月28日 22:52 by 元会長
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