●まなかにとっての紡
冒頭は、前回に引き続き、夜の海に浮かぶ紡の船の上。沖では海と空が闇に溶け、陸の光は遠く幻のよう。
真っ黒な世界で、紡の、船の小さな灯りだけが、圧しかかる闇から、まなかを守ってくれていた。光の告白や冬眠の事で行き場をなくし、暗い海を泣きながら彷徨っていたまなか。そんなまなかを暗い海から引き揚げ、光を見せてくれた紡。
だから真っ黒な世界に浮かぶ、小さな船の小さな灯りの筈なのに、その光は太陽のように眩しく、熱いくらいまなかを照らしていた・・・・。
そして「悪かったな」と謝りつつ、紡がまなかに渡したのは梅干入りの熱いお茶。日の丸弁当より、梅干は太陽の暗示。だからそれを飲んだまなかはその熱さに涙ぐむ。
「太陽だから・・・・紡君が、太陽だから。(中略)ちっちゃい頃、まだ1人で勝手に地上に上がっちゃ駄目って言われてて、それでもずっと空を見上げてた。憧れてたの。海の向こうの、空の向こうの、ずっとずっと遠くの太陽に。眩しくて、照らされて、熱くなって。ドキドキして。でも・・・・(届かない)」
そして紡にその理由を聞かれ、ずっと抱いてきた憧れを噛み締めるように、こう言うまなか。そして言い終わると紡の方に手を伸ばし、全然届かない自分の手を力なく下ろすと、まなかの目からは熱い思いが零れるのだった。
(届かない)となるのは、冬眠でもう同じ時間を生きられないと思っているから。
演出的にひー君に勝ち目がない感じなんだけど(笑)、夜の海ってのと、太陽=手の届かない憧れ、に望みを繋ぎたいところ。まあ、告白しても紡はちさきの事が好きだから、きっと・・・・。
●頭を冷やす光
OP明けて、家で1人、銀に輝く月を見上げながら、これまでの事を思い返す光。
月を見て変身する狼男などより月は"魔"の象徴。そして"昔話や神話の魔物=人間の邪念・欲望"。一方、吸血鬼や狼男は銀の武器でしか倒せないといった感じに、昔から銀には"魔除けの力"があるとされてきた。よって、銀色の月を見上げるのは、自分の心を見つめ、邪念を払う暗示。
「みんな、誰かを思って、そんで、その思いを自分でも気づかなかったり、持て余したり、折角思ってくれてるのに気づけなかったり、応えられなかったり」
そして光がこう独白する時、うろこ様も映される。10話レビューで書いたように、やっぱりうろこ様はあかりが好き・・・・な筈。
また「応えられなかったり」の時に紡が映るので、こっちもやっぱりまなかの思いに気づいていても、ちさきの事が好きだから・・・・。
「揺れて、揉まれて、みんな必死に舵を取って、渡ってるんだ。それでも(舵を取りきれなくて)、いや、それだから(精一杯舵を取らなきゃいけないんだ)・・・・」
そしてこう言って光はもう1度まなかに会いにいく。よって、()の中のような事を思っているのだろう。
しかし1話から振り返ってみると、ホントに光は成長したな〜。
●月を見れないまなか
一方、海村を元気なくトボトボと歩くまなか。しばらく歩くと、まなかは立ち止まり、銀色の月を見上げる。でも、海面越しに見る月は揺らいでいて、まなかは光のように自分で答えを出す事ができなかった。
そこに、まなかの家に向かっていた光がやってくる。そして2人は近くの広場に移動する。
「散歩、か?・・・・月、綺麗だもんな」
「うん、ホントダネ」
そこで月を見上げながら光がこう言って、広場の一段高いところとの段差に三角座りをして地面を見ながらこう相槌を打つまなか。月が見えている光と、見えてないまなかが演出されている。
●光は旗
「あのな!」「あのね!」
そしてしばらく言いよどんだ光が、意を決して口を開くと、同時にまなかもこう言って立ち上がっていた。
そこでまなかが譲ると、光はもう1度ちゃんと言っておきたいと言って、
「俺、やっぱりまなかが好きだよ。まなかが好きで大切だ。それは絶対だ。でもちさきも要も、紡も、あかりも美海もさゆも、親父だって、やっぱみんな大切なんだ。お前が俺の事を好きでも好きじゃなくても、俺にとって、お前が大切なのは絶対変わんねーから」
まなかにこう思いを告げるのだった。それを聞き、目から涙が溢れそうになるまなか。
「そんでお前の方・・・・さっき、言いかけてた事・・・・」
「おふねひき、終わったら言うね」
続けて、少し遠慮がちに光がこう尋ねると、まなかは目に涙を溜めながらも笑顔でこう答える・・・・アカン!それはアカンフラグや!(涙)。
そして小走りに近くの登り階段を数段登ると光の方を振り返り、
「ひー君、旗振ってね!一杯振ってね!そしたらきっと、みんな迷わない!」
と力を込めて光に頼む。自分に言い聞かせるように、どこか痛みを抱えたような笑顔で。登り階段は困難の暗示。前回光に告白された時は「わからない!」と逃げたまなかだけど、"困難=紡との恋"とちゃんと向き合うと決心した事が伺える。
それに、紡の事を"手が届かない太陽"だと言って、涙を流したまなか。もし紡を諦め光を選ぶのなら、ここで光にそう言えば良い。おふねひきを待つ理由がない。
まなかが紡の事を好きなのを知っていても、それでも自分の恋心に向き合いそれを伝えた光。その言葉に励まされ、"地上と海との絆を結んだ"神話をなぞるおふねひきを見届けて、まなかがしようと思う事・・・・もう紡への告白しか考えられない。
前回、光が旗を振ってるのを見て良い感じだと思ったけど、光はあくまで目印となる旗、道標であり、その後ろの太陽ではなかった、と言う事だね・・・・。
おふねひきで光が振る旗を励みに紡に告白するとか、まなかさんは悪女ですね(笑)。なんて事がこの時点では大きな話題だったんだけど、今となっては・・・・できるなら、この頃に戻りたい(涙)。
「誰かを好きになる気持ちを、無理矢理引き離さないで!」
後に、まなかはあかりを攫おうとした海神に向けてこう叫んでいる。勿論、この言葉には冬眠により引き離される、まなかと紡の事も重ねられている。でも、まなかが紡(か光)と結ばれたいと思っていたなら、あかりと2人で浮き上がろうとした筈。特に光を選ぶつもりなら地上に戻れば結ばれる事は確定している。
なのにまなかは1人で、あかりの身代わりになる事を選んだ。どうせ地上に戻っても冬眠の、海神のせいで紡と結ばれる事はなかったから・・・・この事からも、まなかは光ではなく紡を選んだのだと思われる。
だから、まなかは紡に振られる事、もしくは告白しても冬眠で別れる事前提だった。なので別に上に書いたような悪女って訳ではない、筈(笑)。それになんとなく、紡のちさきへの思いに気がついていたのかも?と思ったり、思わなかったり・・・・。
●恋の階段 その2
「なるべく早く戻りなさい」
「母さん達、帰ってくるまで頑張って起きてるから」
翌日、おふねひきに出かけようとしたちさきにこう声をかける両親。反対されると思っていたちさきは、目に涙を溜めながら笑顔で「いってきます」と答えるけど・・・・微妙にフラグっぽい気が・・・・。
そして地上に向かう途中で要と合流し、一緒に階段を登るちさきと要。ここでも階段=恋の試練の暗示。ゆっくりだけど、思いを胸に秘めながらだったけど、同じように恋の階段を登ってきた2人。
「もし結局眠る事になって、別々の時間で目覚めても、僕がちさきを好きな事は変わらないから。それは覚えておいて」
そして最後に、要は優しく、でもはっきりとこうちさきに告げるのだった。
そんな2人が階段を登り切ると、光が先にきて待っていた。光は自分の恋心をちゃんと整理し、2人より先に進んでいる事が示されている。
一方、しばらくして遅れて階段を駆け上がってくるまなか。階段を登ると決心するのは遅かったけど、でも今それを駆け登っている事が演出されていた。
●恋の階段 その3
「うん、気の済むようにやってみりゃあ良い。ワシには何も変えられん。じゃが、お前達には何か変えられるのかもしれんからの」
「いつの間にやらデカくなってたんだな。(中略)あかりに伝えろ。幸せになれ」
そしてうろこ様と灯に挨拶すると、2人はこう言って4人を送り出すのだった。
地上にいって、2階で着替えているあかり達にお茶を運ぶまなか。お茶道具をお盆に入れて、危なっかしく(恋の)階段を登る。おふねひきが終わったら紡に思いを伝えようと、まなかはこんなに一生懸命頑張っていたのに・・・・。
●フラグ立てすぎ・・・・
そしてあかりがいる控え室の前で「お母さん」と呼ぶ練習をする美海が相変わらず健気で可愛い(笑)。
そんな美海とまなかが控え室に入ると、あかりが煌く衣装を纏って立っていた。そして美海があかりを「お母さん」と呼ぼうとするけど、海神への嫁入り衣装なんて見たら許せなくなると言う至の言葉がそれを遮る。
「あかちゃん、私終わったら言いたい事あるから、だから」
「わかったよ、じゃあ後でね、美海」
すると美海はあかりとこう約束し、至を追いかけていくのだった・・・・アカン!これもアカンフラグや!(涙)。
●観光名所?
その後、日が暮れる頃には、海岸に地上の者達が集まりだし、花火などが打ち上げられ、祭りの空気が徐々に膨らんでいく。
そして日が地平線の彼方に消え、夜の闇が辺りを覆った頃。海岸沿いに明々としたかがり火が並び、あかりの乗る船を中心に円陣を組んだ10隻くらいの船団が、僅かな光を伴って黒い海を進んでいく。
「あかり、受け取るが良い。ワシらからの祝いじゃ」
同じ頃、村人を眠らせるために、灯と海村を周っていたうろこ様は、こう言いながら持っていた錫杖を打ち鳴らす。するとおふねひきの航路に重なる海底の道沿いに、青い御霊火が次々と灯っていく。
それは海上からも見えるほどの輝きで、2本の青い光の列が、あかりの、おじょし様の乗る船の航路を、黒い海に浮かび上がらせていた。
こんな綺麗な夜景が見られるなら、観光名所にしてマジでおふねひきで村興しすれば良いのに(笑)。この夜景が見られるレストランとか作って、ディナー(和風なら会席料理?)とセットで売り出したら、結構売れると思うんだけどな・・・・野太い歌は流さない方向で(笑)。
●祭りの異変
でも光達がそれぞれの思いを込めて船の上で祈っていると、船団の前に青白く光る多数の渦が現れる。
その渦に揺らされ船から落ちてしまうあかり。それを見てあかりを助けに海に飛び込む光とまなか。またあかりの船に乗っていた紡も、更に押し寄せてきた波に船ごと飲まれてしまう。
渦に飲まれていくあかりを懸命に追うまなか。乗っていた船が離れていたせいで、遅れて渦に突っ込み、あかりを探す光。薄れゆく意識の中、海村の青い光を見て「綺麗だ」と、強い憧れを見せる紡。そう言いながら紡が最後に見たのは、紡に向かってその景色の中を懸命に泳ぐちさきの姿だった。
「うろこ様、これは一体・・・・?」
「・・・・許せ。ワシは所詮、海神様のうろこよ」
それを見てこう言う灯を力で眠らせ、こう呟くうろこ様・・・・。
一方、紡を担ぎ地上を必死に海上を目指すちさき。でも渦の流れで思うように上がれない・・・・そこに現れたのは要だった。要はちさきと目を合わせなかったけど、逆側から紡の腕を肩に乗せ、2人で海上を目指すのだった。
●折れた、心と橋脚
そしてなんとか紡を船に引き揚げる2人。でも甲板に上がろうとした時、要は気絶した紡を胸に抱きかかえる、ちさきの姿を見てしまう。
それに合わせて、渦が起こす激しい波のせいで近くにあった巨大な橋脚が折れ、ちさき達の船に倒れかかってくる。そして、ちさきと紡の姿を見て心が折れていた要は、それをかわすために急旋回した船から投げ出されてしまう。
悲しそうに微笑みながら海の中に消えていった要を見て、「嫌ー!」と悲痛な声を上げるちさき。でも、それと同時に、倒れた橋脚がちさきの叫び声もろとも海面を吹き飛ばし、その轟音だけが荒れ狂う海に消えていった・・・・。
橋はその両岸を繋ぐもの、転じて心の架け橋。巨大な橋脚は海と地上の僅かな繋がりの暗示だったのに、それも折れてしまった・・・・。
●攫われたまなか
一方まなかは、渦の中で懸命にあかりを引き上げようとしていた。
「やめて下さい。あかりさんには待ってる人達がいるんです!お願い!連れていかないで!みんな、誰かの大切な人なんです!誰かを好きになる気持ちを、無理矢理引き離さないで!」
そして渦の底に、海神に向かって懸命にこう訴える。
「どうしても連れていくなら、代わりに私を!」
でも渦は消えず、遂にまなかはこう言って、あかりの代わりに自ら渦の底に泳いでいくのだった。
その時ようやく光もそこに到着する。まなかのおかげで、あかりは渦から解放されていたけど、凄い勢いで渦に吸い込まれていくまなか。それを見て必死にまなかを追いかける光だけど、渦に阻まれまなかとの距離は開くばかり。
そして遂に、渦に吸い込まれていったまなかは海底に激突し、それに合わせて渦は消え、海村は繭の様な物に覆われるのだった・・・・。
10話レビューで書いたように、やっぱり女目当てだった
・・・・なんにせよ、こんな引きで年越しとは本当にドSですね(笑)といったところで来年に続く!
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