今回のサブタイトルには『バラバラで意思疎通ができてないムサニ制作班』という裏の意味が篭められています。なので、どうしてそう言えるのかを最初に見ていきたいと思います。
「ノアは、下着、です。」
まず、サブタイキャッチであおいが、このようにわざわざ区切ってコールしています。
「これは、下着、ですか!?」
「はい!これは下着です!」
「ノアの下着です」
「それは白いです!」
更に、原画・久乃木愛と、木下監督、演出・山田と円がこのような会話を行います。こんな少ない情報のやり取りなのに、監督達三人の言葉を全て繋がないと答えがわかりません。
『各制作担当が、自分の担当部分に関することのみ話し、意思疎通が滞っていることの暗示になっていました』
しかも、制作を統括するはずの制作デスク・宮森あおいが、それをまとめたサブタイコールが「ノアは、下着、です。」なのです。
「ノアの下着は白色です」
→「ノアは下着(姿)です。」
と、白色という情報が抜け落ちているどころか、その意味合い自体が誤解されかねないほど内容が変わってしまっていました。(脚本の方が)「。」までつけてこれがあおいの持つ情報の全てだ、なんて念押しまでして・・・・。
よってサブタイは、そんな風に内部がバラバラで連携が取れていないムサニ制作のことを指しているのです。
あと、16話レビューで書いたように、普通に考えたら今回のサブタイこそ「続・ちゃぶだい返し」が相応しいです。何といっても今回最大のイベントは、野亀&茶沢のク○コンビによるアレなので。
なのに、そうなってないことが、サブタイに特別な裏の意味が篭められている何よりの証拠です。
更に、次回があおいの「続・ちゃぶだい返し」である伏線も、今回ちゃんと張られていました。
不満が貯まっても、酒でガス抜きしていたタローや平岡、堂本や新川、そしてずかちゃん(坂木しずか)をわざわざ長々と描いたのは、
『13話からずっと不満を貯め続けているのにガス抜きできていないあおいがいよいよ爆発する伏線』
なのです・・・・多分w
ということで、以降は本編を細かく見ていきます。
●バラバラの制作
冒頭、制作室の朝礼が映されますが、各キャラが報告する時、大半のキャラはアップで一人ずつ映されます。これはそのキャラが自分のことしか見えていない演出です。
またその時、あおい、タロー、佐藤、安藤の背後に映される扉は心の扉≒社交性≒他人と協力しようという心の暗示です。イメージ通り安藤だけ後ろの扉が開いていてそのオープンさが暗示されていました・・・・矢野さんはお父さんのことでまだお疲れ中なだけだと信じてます・・・・。
だから、制作の中では、佐藤と二人で映されたタローが一番制作仲間(≒後輩)のことを気にしているのです。
(佐藤が発言する時は佐藤一人だったので、この演出は明らかにタローのものです)
また、丸川社長と総務・興津と平岡が同時に映っていました。丸川と興津が平岡のことだけは気にかけていて、平岡も自分を気にかけてくれた二人に多少恩義を感じている、そんな演出がされていました。
あと平岡の視線があおいの方を向いていたので、平岡を切らないでくれたあおいにも少し恩義を感じている・・・・と思います。
こんな感じなのですが・・・・
まず丸川社長。あおいや新人達、お父さんのことがある矢野をちゃんと見守って、ヤバそうならフォローして下さい。
次に、一人で扉なしのナベPがホントに使えないので、制作全体を見てあおいのフォローをしろ下さい・・・・サブタイはナベPにこそ相応しい暗示だと思いますよ・・・・。
そして最後に「最終話に向かって、ロックオン!」と声を上げる丸川社長のアップに、あおい達のバラバラの返事が重なります。
バラバラの返事でさえなんとかポジティブな印象になっているここと、21話の最後を比べたら、21話レビューで書いたように、21話の最後が不穏な演出だったことが良くわかると思います。
●伏線?
「にしても、監督にこんなリリカルなところが(あるなんて知らなかったなぁ・・・・)」
サブタイキャッチが明けて、井口がこう言う時、壁の色あせた魔女っ子もののポスターが映されます。
今回のラストで三女の原作者・野亀がゴネたのは、
野亀視点では『木下監督の絵コンテがリリカル(叙情的)すぎる=感情を画で表現しすぎている』
からだった、って伏線なのかも・・・・?
●欠けたドーナツ
そのシーンで、井口と監督とあおいが最終回の作監について話し合うのですが、井口は作監補佐に絵麻に頼みたいと提案します。
そこであおいは絵麻を屋上に誘い、その話をしながら買ってきたドーナツを一緒に・・・・あおいだけドーナツを一口かじってしまいました。
『"ドーナツ=人の輪"の暗示を持つものが、あおいだけ欠けてしまいました』
そしてこれこそが、あおいの(多分)最後の課題を暗示しているのです。
今回、あおいは絵麻をはじめクリエイター達とは頻繁に打ち合わせをしますが、制作同士ではただの一度も打ち合わせ、意思疎通をしていません。
それがあおいと矢野の差であり、堂本や新川が制作に不信を抱くことになった原因です。
21話レビューで書いたように、
『あおいは本当はクリエイターになりたかった』
ので、未だに制作よりクリエイターの仕事に目が向いてしまっているのです。外部との人の輪を作ることばかりに気を取られて、内部=制作内の人の輪がおろそかになってしまっていました。
欠けたドーナツは、そんなあおいの最後の課題を暗示していたのです。
話を戻して、あおいは色々説得しますが、それでも絵麻は作監補佐を断ろうとします。そこであおいは、とりあえずよく考えてみてと一旦話を保留するのでした。
●信号機と車
シーンが変わり、あおいは赤信号で止まった車の中で考え事をします。車は人を運ぶもの=思いを運ぶもの、人の輪を作る暗示ですが、赤信号=それが停滞していることが演出されていました。
●コーヒーの演出
瀬川の部屋に着き、あおいは瀬川をなんとか説得し、三女12話の作監を受けて貰うことができました。そして瀬川はボヤきながらも、二人分のコーヒーをあおいのところまで持ってきます。
"熱く苦いコーヒー=熱く苦い要求"の暗示で、それを二人で飲み交わそうと瀬川が歩み寄ってくれたことが演出されていました。
ただ、予測行動的に、それを二人で飲み交わすほど近づけたと取るか、まだ飲むほど互いに歩み寄れてはいないと取るかは悩ましいところです・・・・w
●本当に恐いのは・・・・
その後、絵麻がアフレコ用の絵コンテを作ってるりーちゃん(今井みどり)に話しかけます。二人は色々話しますが、
「りーちゃんは恐くないんだ、ね」
「何言ってんスか絵麻先輩。恐いのは脚本家になれないことです!」
などのりーちゃんの言葉に、絵麻は少し背中を押された気がしたのでした。
●あおいに足りないもの
一方制作室では、タローと平岡が連れ立って帰ったあと、矢野が瀬川と平岡のトラブルに触れ、
「一度失った信用は中々元には戻らないって話。(中略)いつまでもあると思うな他人の信用、だよ」
佐藤と安藤の新人コンビに制作の心得を教えます・・・・あおいがかじって欠けてしまったドーナツを、矢野が少しだけ埋めてくれていました。
でも、これこそがあおいの最後の課題なのです・・・・。
●酒飲んでガス抜き!
Bパートになり、動画検査・堂本知恵美と色指定・新川奈緒がおでん屋台で一緒に飲んでいました。
「つーか連携が取れてないんだよ。各話の制作がさ、自分の話数のことしか考えてないんだよね」
「あー、それはそう。それで自分の話数優先でもの言ってくるから、ちょっとねー」
そして制作の連携が取れていないことをこの後長々と愚痴り合います。あおいのドーナツが欠けていると解釈したのは、主にこのシーンがあったからです。
同じ頃、タローと平岡も飲み屋で愚痴を言い合っていました。そしてずかちゃんも、自室でビールを飲みながら声優番組を見て、静かに不満を吐き出していました・・・・。
「って言うか、今日が最後の晩餐かもね」
「しばらく地獄だね」
でも、堂本と新川のシーンはビールを飲み干し、こう言って笑いあう二人で〆られます。愚痴=陰口を言うというより、毒を吐いて決戦に備える、そんな印象の方が強いです。
「帰る・・・・ケメ子がくるから」
一方平岡も、まだ飲み歩こうとしたタローにこう言って、ギリギリ二日酔いを回避しました。そして21話レビューで書いたように「ケメ子=ペットの猫=あおいとの心の交流の暗示」です。
だから、平岡がここで思い止まれたのは、前回あおいが平岡とちゃんと向き合ったからです。(きっと)あの時のあおいの顔が不意に浮かんできたから、平岡はここで帰ることができたのです。
よってこれは、あおいが最後の課題を克服しかけた、はじめて制作と人の輪を作ることができた希望の演出なのです。
まあ、ケメ子は前回の残り香みたいなもので、弱いと言えば弱い暗示です。でも、(脚本の方が)わざわざ口実としてケメ子を選んだのはそんな意図を篭めているからだと思うんですよね・・・・。
でも、そうだとすると、この酒飲み五人のシーンの演出意図は何なのでしょうか?
自分のことを棚に上げて愚痴っているバラバラな各部署を見せるためでしょうか?
「小金井動画がちょっとだけなら手伝えるって言ってたから、今から押さえとこうかと思って」
でも、堂本は最終話を心配してこんなことも言っています。
しかも上に書いたように、しずか以外はむしろ節度を持ってガス抜きできたポジティブな印象さえ受けます。なら、同時に描かれたしずかだって、"自分の内面を見詰める色=青色"のテレビの光の中で眠りながら、きっとガス抜きができたはずです・・・・。
よって、これらは別に悪い演出ではありません。ちゃんとガス抜きができたというポジティブな演出だったのです!
・・・・22話だけで考えたなら・・・・次回のサブタイが「続・ちゃぶだい返し」なんて題でさえなければ・・・・。
そう、次回あおいがいよいよ爆発するなら、どう考えても
『五人のガス抜きは、ガス抜きできず爆発するあおいを浮かび上がらせるための伏線』
なのです。ネガティブな演出がポジティブな演出に変わったと思ったら、よりネガティブな演出になっていました・・・・。
●原画と制作
翌日、瀬川にリテイクを出され、絵麻がやっぱり作監補佐を断ろうとしますが、杉江がその背中を押しました。
そして遂に、絵麻も覚悟を決め井口にその決意を伝えます。そこで井口は、
「あのね私が言うのも変だけど、やんないとわからないこともあるから。(後略)」
こう言って絵麻に原画として進む道の先を示すのでした。レジェンド杉江に井口と、原画チームは同部署内での連携が完璧でした。そんな先輩達の姿を見て愛も、一人で作打ちに出る決心をしたのです。
このような姿が並列して描かれることで、制作がバラバラな現状をより浮かび上がらせていました・・・・。
●あおいでなくても・・・・
そして絵麻が両親に結婚記念の贈り物をしたり、三女のアフレコが無事終了したり、良い流れの中・・・・
最後の最後で野亀&茶沢の○ズコンビがまたまたやらかしやがりましたよ!
・・・・ナベPは議事録作れよとか、あまり生々しいことは言いたくないんですが、いい加減あおいの前に僕がブチ切れますよ?ホントに・・・・。
といったところで、次回ブチ切れた平岡&タローのゴールデンコンビが夜鷹書房のク○コンビをボコる展開を期待しつつw、
SHIROBAKO 23話「続・ちゃぶだい返し」
に続きます。
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