さて、記事タイトルがふわふわしてアレな感じですが、1話は余白を残しつつも色々な暗示が散りばめられた、良い導入回でしたw
●久美子の本心
冒頭は、主人公・黄前久美子が中三の時、京都府吹奏楽コンクールの結果を発表会場で見る場面が映されます。
久美子達の吹奏楽部は「ダメ金」で、金賞(上位入賞)だけど関西大会など上位コンクールには進めないという結果でした。一緒にきていたモブ部員はその結果に喜び、他の部員に結果を知らせにいきます。
しかし、モブがいなくなると、周囲の音が消え、久美子が結果を噛み締め集中していることがわかります。
「金だ・・・・」
そして久美子がこう呟いた直後に、これまで薄明かりだった会場が真っ暗に映されます。
よって、久美子は実はこの結果が不本意でした。本当は金賞を取り、全国大会に進みたかったのです。
●縛られた心
でも久美子は「ダメ金だけど金・・・・」と自分を誤魔化し、無理矢理笑顔を浮かべます。そして後ろ向きに心を整理し、久美子が我に返ると、隣の席で同じ吹奏楽部員の高坂麗奈がうずくまるように泣いていました。
「(ダメ金なんかで満足できるなんて)良かったね、金賞で・・・・」
久美子は麗奈が喜んでいるんだと思ってこう声をかけます。久美子(の中の人)の演技からもこんな含みがあった気がします。
「悔しい・・・・悔しくって死にそう。何でみんなダメ金なんかで喜べるの?私ら全国目指してたんじゃないの?」
「本気で全国いけると思ってたの?」
でも麗奈は久美子と同じく、いえそれ以上に、もっと上を目指していました。
でも、久美子は同じように全国大会を目指しつつも、周囲の下手さに半ば諦めも持っていて、サボテンのようになっていました(サボテンにつていは後述します)。
だから、うっかりそのトゲで麗奈を刺してしまい、麗奈は泣きながら外に出ていってしまいました。本当は久美子だって全国を目指していたのに、本当はトゲではなくその渇きを共有したかったのに・・・・。
だから、ここで久美子はその後悔に『縛られて』しまいます。
久美子はここを含め中学の回想ではずっとポニーテールをしています。それはきっと演奏の邪魔になるから=久美子が本気で吹奏楽に打ち込んでいる暗示でした。
でも、このシーン以降、ポニーテールはこの後悔に『縛られて』いる暗示になってしまいました。
そう言えるのは、久美子の幼馴染の塚本秀一が、後に久美子を見て、
「髪、縛ってんの?」
と言うからです。「結んでんの?」ではなく『縛ってんの?』と・・・・。
(高校に入ったら、胸がおっきくなるなんて噂、どうして信じちゃったんだろう?)
また、タイトルキャッチのあと、久美子は高校にいく準備をしながらこんなことを考えて「他人に影響されやすい=他人の言動を気にする性格」なことも演出されていました。
だから、本当に言いたかったことと真逆のことを言ってしまった上に、麗奈を泣かせたことを気にして、ずっと心が『縛られて』いて、それがポニーテールで演出されているのです。
●桜並木は吹奏楽部
高校への道すがら、久美子は川の土手を訪れます。道を彩る桜並木の楽団が、幾重にも重なって、舞い散る桜に春の旋律が響いていました。
久美子は道端でしゃがみ、積もった桜を両手ですくうと立ち上がります。そして大きく息を吸い込むと、桜並木の楽団に負けないように、一気にそれを吹き出します。
桜は青い空に五線譜を引き音符を記すように飛んでいきますが、向かい風に煽られ何処かに消えてしまいます。
久美子はそのまましばらく青い空を見上げますが、桜吹雪の向かい風に、ユーフォニアムの息遣いを聞いたような気がするのでした・・・・。
『久美子が吹く=演奏』の暗示で、久美子の吹奏楽部に入ってユーフォニアムを再び吹きたいという気持ちが演出されています。
でも、きっと久美子は中学の時、全国大会にいきたいと思いながら、吹奏楽部で他の部員達に何も言いませんでした。このままでは府大会止まりだと思っていたのに。
また、後の公園のシーンで、
「高坂さんがいた〜・・・・上手いからラクシュウとかリッカにいってると思ってた」
こう言ってるので、麗奈と物別れに終わっても、それを修復しようともしませんでした。
(わざわざ同じ中学の子が少ないこの学校を選んだのは、憧れのセーラー服の高校がここだけだったのと、色んなことを、一度リセットしたかったから)
更に、久美子は高校に着くとこんなことを思いながら、各部の新入生勧誘に沸く校庭を歩いていきます。中学で周りの部員がダメだと思いながら何もしなかった久美子、麗奈とのすれ違い、そんなものから逃げ出して、やり直そうと思っていたのです。
よって、久美子の吹いた「桜=ユーフォニアム」は、桜並木の桜吹雪と「響く」のではなく、独りで自分の思いを「飛ばす」みたいな演出になっているのだと思います。
でも、おそらく久美子は気づかなかったけれど、「吹き飛ばした桜は向かい風に流されて桜並木に戻ってきます=久美子は葉月と緑に流されて麗奈のいる吹奏楽部に入部します」
そして今度は周りの部員が下手でも何も言わないのではなく、みんなと響き合えるように、桜並木と響いていく・・・・そんな新しい試練が向かい風となって演出されていました。
桜並木のシーンにはこんな暗示が込められていると思います。
●北宇治高校吹奏楽部
久美子が校庭を歩いていると、吹奏楽部も新入生の勧誘をしていました。
でも、指揮者兼スピーチをしてたのは、副部長の田中あすかで、部長の小笠原晴香は演奏をしていました。多分晴香が引っ込み思案な性格だからだと思うのですが・・・・
「新入生のみなさん、北宇治高校へようこそ!」
「輝かしいみなさんの入学を祝して」
あすかが一行目を言う時、その手しか映されません。そして二行目になってやっと顔(上半身)が映されます。自分達の演奏がダメだと自覚していて、小手先でなんとか誤魔化そうとしている演出、に見えるんですよね。
何故なら、あすかは後に久美子達が吹奏楽部の見学にいった時も、手品で気を引こうとしていました。更に、麗奈が入部希望だと伝えると、近くの部員にすぐ用紙を取ってくるように言い、
「当たり前でしょ、逃げちゃったらどうすんの!」
なんてことを言うからです。
話を戻して、久美子が興味津々で見詰める中、あすか達は「暴れん坊将軍」の演奏をするのですが、導入部の不安定感や、確実に吹き損じてる「プー」の音が堪らない良い演奏でしたw
「ダメだこりゃ・・・・」
それを聞いた久美子は、愕然とこう呟き、幸せの青い鳥が飛んでいく演出が入るのでした。
でも、一時的に飛び立っただけで、北宇治高校に幸せの青い鳥がが住んでいる、と解釈したいところです・・・・w
●葉月と緑
その後、久美子は席が前後だった縁で加藤葉月と知り合います。
「何が?」
「えっ!?」
「今言ってたじゃん、下手だよな〜って」
でも、葉月がこう声をかけてくるところや、二人が握手するところが暗い影に沈んだ画で映されます。
しかも、葉月はしゃがんで久美子の机に胸の前で組んだ両手を置き、それを支えにしています。だから握手も下から差し出すような感じで、(精神的に)独りで立っていられない演出、に見えます。
だから、葉月がどうして久美子に声をかけたのか、本当に吹奏楽部に入ろうと思っていたのか、ちょっと気になるところです。
その後、久美子達は鞄につけていたゆるキャラが縁で川島緑輝(かわしま さふぁいあ)とも知り合います。(酷いキラキラネームだから)緑輝は自分のことを「緑(みどり)」と呼んで欲しいと話します。
ただ、三人が廊下ではじめて話す時、お互いのことを話して親密になっているはずなのに、視点がどんどん引いていきます。なんとなく話が噛み合わず、逆に心の距離が開いている演出です。
「もし良かったら、(吹部の見学に)みんなで一緒にいきませんか?」
そしてそのシーンの最後で緑がこう言う時は、もう三人の姿すら映っていませんでした・・・・。
●踏み出せない三人
だから、三人で音楽室に吹奏楽部の見学にいっても、入り口の扉のガラス窓から中を覗くだけで、誰も中に踏み出せませんでした。三人にとってはその「扉=心の壁」がとても大きいものだったから。
よって、久美子は麗奈や周りが下手だと思っていたのに何も言えなかったことを引きずっていて、葉月は二人に合わせているだけ(もしくは、全くの素人で気後れしている)、だとしても、緑も何かしら問題を抱えていることになるんですよね・・・・。
そしてあすかの方からその扉を開けてくれたけど、吹奏楽部はやっぱり下手で、三人が見学していると麗奈がやってきて、三人は入るかどうか保留したまま音楽室から出ていくのでした。
●響け!桜の花びら
そして高校からの帰り道、三人は桜の花びらが舞い落ちる中、押しボタン式の信号が変わるのを待っていました。
そこで葉月が、顔の前に飛んできた花びらを吹いて、空に舞い上げようとしますが、全然上手くできません。
でも、それを見て久美子もやってみると、一枚だけですが、綺麗に舞い上げることができました。そして久美子の花びらは周りの花びらと一緒に、空に響いていったのです。
だって、久美子はこの日の夕方、吹奏楽部に入る決心をするのだから・・・・。
●緑の本心は?
「緑はやりますよ〜、音楽が好きですから。音楽はいつだって、世界中の人々の心に訴えることができる、強力な言語の一つだって信じてるので!」
一方、信号を待ちながら、緑はこう言いながら左手を突き上げるのですが、緑が押しボタンを押し忘れていたせいで、ずっと信号が変わりませんでした。
信号が赤→青に変わることで、新たな一歩を踏み出す暗示となり、それにより横断歩道で誰かの心と繋がる暗示でもあります。
だから、緑は口ではあんなことを言ってますが、心の中では全然一歩を踏み出せていないことが演出されていました。
●久美子はサボテン
それから色々あって、久美子は家に帰ると冷蔵からお茶を出して飲むのですが、飲みきれず二割くらい残してしまいました。色々な問題を心に収めきれていないことが演出されています。
「悪気があった訳じゃないんです。ただ、思ったことがうっかり口に出てしまったというか、金取れたし良いじゃんみたいなところもあって、ダメ金でも立派な金」
だから、久美子は、自室に戻るとこんなことを育てているサボテンに話しかけます。
サボテンは暑い砂漠で渇きに耐えながら、トゲで身を守る植物です。よって、
『中学の時、周囲が下手だと思いながら何も言えず、心が渇き、トゲで身を守るように周囲を拒絶していたから、うっかりそのトゲで麗奈を刺してしまった久美子の暗示』
です。
だから、久美子はそのサボテンみたいに今も乾き続けていて、今日もうっかり葉月に、
「一緒に帰る子いないの?」
なんてトゲを突き刺してしまったのです。
●周知の下手さ
そんなところに姉の黄前麻美子がやってきて、
「あんた、吹奏楽やめるの?」
「なんで?」
「なんでって、北宇治だから」
最後にこんなことを言って出ていきます。これより、北宇治の吹奏楽部の下手さは周囲にも知れ渡っていることがわかります。
●死と再生
その後「地獄のオルフェ」を演奏する、中学時代の久美子の回想が入ります。
地獄のオルフェの元ネタは、オルペウスが妻エウリュディケーを冥府に迎えにいくも失敗するという、バッドエンドな話です。
でも、地獄のオルフェはそのパロディで、表面上はハッピーエンドらしいんですよね。
だから、久美子がオルフェなのか死んでしまったその妻なのかわかりませんが、冥府に落ちてしまった久美子(や麗奈、おそらく葉月や緑、そして北宇治吹奏楽部)の再生の暗示なのだと思います。
●響け!次回に
そんな訳で、翌朝、久美子はずっと心を縛っていたポニーテールの呪縛を解きました。高校では一歩踏み出して周囲と響き合おう、そんな決意が暗示されています。
だから、久美子は冷蔵庫から牛乳を取り出すと、それを全部飲み干したのです。真っ白になってやり直す、そんな思いを全部心に収められたことが演出されていました。
更に高校にいくと、マウスピースを買って練習していた葉月に、姉・麻美子がかつて教えてくれたように、それを吹くコツを教えます。そのおかげで、麻美子と響き合えて以来、はじめて(もしくは久しぶりに?)他人と響き合うことができました。
校庭の桜が大空に響いていたその傍で・・・・。
「そうそう、久美子ちゃん。吹部一緒に入りませんか?」
「・・・・うん」
だから、久美子は緑とその横で熱い瞳を向けてくる葉月に、静かにこう応えることができたのです。
そして、久美子は麗奈とも響き合うために・・・・といったところで、次回に続きますw
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