今回まず注目するのは、ミチルの父親がワンダラーになってしまってしまった『三年』前の事件です。
カヅキは、2話で仕事を「十年近くやってる(=九年)」、3話で「あの子(アイラ)と六年一緒に暮らした」と言っていました。そして、ミチルの父親の事件が「三年前」で、アイラの余命が二千時間なので、これで時間的にはほぼ余白がなくなります。
●アイラが不調な理由
よって、カヅキは三年前の事件が切っ掛けでアイラとペアを解消していて、それはアイラの身体能力が低下し仕事をさせるのが危険だと判断したからだと思われます。
だとすると、アイラの身体能力が低下しだしたのは三年も前からで、ギフティアの耐用年数が九年四ヶ月なんて謳っているSAI社は詐欺で訴えまくられますよね・・・・。
よって、アイラの不調はイレギュラーな何かが原因で、例えばミチルの父親と戦って、人間でいえば脊椎や脳に損傷を受けたのだと考えられます。
●アイラはいつから不調?
でも、1話ではミチルが、
「私もアイラが現場に出るところを見るのははじめてなのよ」
と言っていました。
よって、ミチルの父親の事件の前から、アイラには何らかの問題があり、カヅキが現場に出していなかったのだと思われます。
(直前にも別のワンダラー事件が起きていて、そこで負傷していたのにアイラが無理に参加したなどの可能性がなくはないですけど・・・・)
なのに、ワンダラーという緊急事態のためか、アイラが強く望んだからなのか、とにかくアイラを現場に出してしまい、そこでの戦闘がアイラの運動機能に致命的な損傷を残してしまったのです・・・・多分。
といったところで、以下は本編を追っていきたいと思います。
●背景の演出
OPの最後、4話で顔を上げていたアイラが、表情を曇らせ視線を少し下げてしまいました。まあ、今回の内容を考えると仕方ない感じです。
OP明けて、マーシャが闇業者に拉致され、ソウタがマーシャが帰ってこないとツカサに相談し、一課全員でマーシャの捜索をはじめます。
そのことを山野辺課長が部長に報告するシーン以外、背景に緑が多く描かれていて、
・マーシャとソウタが互いを思う気持ち
・ツカサ達のマーシャを無事に保護したい思い
・マーシャがまだワンダラーになっていないという希望
が演出されています。また、逆に部長は何の感情も持たず機械的にマーシャを処理しようとしていることが対照的に描かれています。
それから翌日になるまでツカサ達は捜索を続け、闇業者が潜伏しているエリアに目星をつけます。でも、そのエリアに入ろうとしたところで、SAI社が荒事を任せるために業務提携している「R,SECURITY」の社員達がそのエリアを封鎖していました。
ここ以降、背景から緑がなくなり、
・機械的に動くR,SECURITYの社員達
・三年前の事件を重ねるミチルとカヅキ
・それを心配するザックとコンスタンス
・マーシャを心配するソウタの思い
・最悪、心を殺してマーシャを停止させなければいけなくなったツカサ達の思い
・三年前に囚われギフティアの仕事を機械的に全うしようとしているアイラ
が演出されています。
●ギフティアの本気
そして、最悪の状況(マーシャがワンダラーになってしまった場合)を想定し、ツカサ達もまずは装備を整えます。
ツカサ達スポッターは"ソフトウェア破壊プログラム"を撃ち出す拳銃型の装備を、アイラ(ギフティア)達は身体能力のリミッターを解除した上でブレード型の装備を身につけます。
そこまでする理由をシェリーが
「(ワンダラーになったギフティアはリミッターが外れ)車くらいなら簡単に持ち上げられます」
と説明し、破壊プログラムで停止されたギフティアはもう元に戻らないとも話します。
・・・・原発と一緒で、目先の安さに目が眩んで、不必要に高出力なものを無理矢理運用している感じでしょうか。まあ、どれだけ技術力が上がろうと、利益しか考えてない企業ならやりそうなことですね・・・・。
●水の演出
その後、ツカサ達は何組かに別れてマーシャを探し、ミチル、ザック、ツカサ、アイラが一緒に行動します。
「信じられない、あんな連中と組むなんて。(後略)」
そこでミチルはこう憤りながら、足早に水溜りを荒海に変えていきます。「水溜り=心」の暗示で、R.SECURITYへの敵愾心に大荒れのミチルの心を演出しています。
また、ここから「雨=零れ落ちていくもの≒失った悲しみ≒涙」が降りだしていて、ミチルやアイラの三年前の悲しみと、それを心配するザック、ツカサの抱える家庭問題での悲しみ(=だからマーシャの姿に憧れ助けたいと思っていること)も演出されていました。
ツカサの家庭問題の詳細は、4話レビューをご覧下さい。
あと、1話レビューでミチルが劣等感を抱えていると書きましたが、その理由はかつて父親をワンダラーにしてしまっていたからだと思われます。
●安定のツカサ・・・・
「あの時って、もしかしてお父さんに関係していること?」
話を戻して、そんなミチルにツカサはこんなことを言い、その無神経さをザックに注意されてしまいます。ツカサの無神経さと、おどけていますがザックはザックなりにミチルを気遣っていることが演出されています。
「ツカサがバカで無神経なのは知ってるし」
でも、ミチルはこう言うと、三年前のR.SECURITYに父親を破壊された経緯と、だからR.SECURITYを許せない思いを話します。
「俺は今俺にできる仕事をするよ。ソウタ君のためにも、絶対マーシャさんを見つけて保護する・・・・カヅキさんだってマーシャさんを見つけることを最優先したんだと思う。君のお父さんに起きてしまったことを繰り返したくないんだよ」
でも、ツカサにこう言われ、ミチルも気持ちを切り替えることができました。
ただ、ツカサは自分の不幸な家庭環境をソウタに重ねていて、更にツカサに興味のない両親がいっそ育児放棄して、ギフティアにツカサを育てさせていたらあったかもしれないifの母親をマーシャに重ねているだけです。
(ミチルの父親の話に強く共感したのも同様の理由です)
だから、ミチルの気持ちをほとんど考えられておらず、たまたま話が噛み合ったから良いものの、相変わらず危うい感じなんですよね・・・・。
でも、この場は上手く運んで、四人はツカサとアイラ、ミチルとザックに別れマーシャの探索を続けます。
その頃、ヤスタカ達の班が闇業者のアジトに乗り込みますが、闇業者はワンダラーと化したと思われるマーシャに気絶させられていて、マーシャの姿はありませんでした。
それを聞いたカヅキはマーシャの保護を諦め、目的をマーシャの停止に切り替えるようツカサ達全員に指示します。
その後、路地裏でツカサとアイラがマーシャと遭遇しますが、ツカサが戦闘をアイラに任せたせいでアイラは蹴り飛ばされ右足に大きなダメージを受けてしまいます。
更に、ツカサ達を追っていたソウタが現れ、マーシャにソウタを連れ去られてしまいました。
そんな状況で、アイラを残して一人でマーシャを追うか迷うツカサに、
「ツカサ、足手まといにはならない。だから、私の役割を奪わないで・・・・私達は二人で一組、そうでしょう?」
アイラはこう懇願します。だから、ツカサはアイラに肩を貸し二人でマーシャを追跡するのですが・・・・
アイラのためを思ってとはいえカヅキのようにアイラを箱入りにしてしまうよりは、ツカサのように接した方がアイラのためなのかもしれません。
でも、アイラの「足手まといになりたくない」、「役割を奪わないで」の意味を、ツカサは理解していません。仕事を遂行することにしか自分の存在意義を見い出せないから、アイラは必死にそれを全うしようとしているのです。
「思い出なんて要らないと思ってる?」
でも、ツカサはアイラがこう思ってるから、必死にマーシャと戦おうとしていると勘違いしていて、だから肩を貸しながらわざわざこう確認したのです。
「その方が俺は悲しいよ」
更に、そう聞くと黙り込んでしまったアイラに「悲しいと"思う"よ」ではなく、より強い意味の籠もったこんな言葉を呟きます。
ギフティアとして生まれ、自身の存在意義に迷っているアイラのことを思えば、そんなのお構いなしに自分の思いを押しつけるこんな言葉をストレートに言えるのは、流石ツカサと言うべきか・・・・。
視聴者視点では、三年前の失敗でカヅキに大怪我をさせてしまい、ペアも解散になり、カヅキとの輝く思い出がかえって重荷になっていることまでわかってるので更にアレですが、それを差し引いても鈍感で無神経と言わざるを得ないというか・・・・。
また、ここでは二人が突き当たりの出口から差し込む光に向かって廊下を歩いている影だけが映されます。二人とも「光=希望、未来」に向かっていながら、心は「影=過去、後悔」に囚われて、全然前を見られていないことが演出されていました。
●結局・・・・
その後、突き当たりの扉を開け、二人が屋上に出ると、呆然と立ち尽くすマーシャと気絶したソウタが倒れていました。
そこでのツカサの説得も空しく、マーシャはソウタの首を絞めだして、逡巡しながら破壊プログラムの照準をマーシャに定めるツカサと、怪我を押してブレードを手に飛び出すアイラが交錯して・・・・何か誤射とかが気になる鬼畜な引きでw、
プラスティック・メモリーズ #06「二人で、おかえり」
に続きます。
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