さて、今回一番気になったのは『ツカサが何かしらの強い覚悟を持って思い出を肯定している=良い思い出を残すために強く生きると覚悟を決めている』ということです
ツカサは強く感情移入していたマーシャをその手で停止させた悲しみを隠して、アイラの前で笑っていました。でも、(人生経験が足りないが故の)無神経な鋼メンタルってだけでは、そうは振る舞えないはずです。
では、ツカサにそんな覚悟をさせた出来事とは何だったのかと考えると、
・ツカサもギフティア
・ツカサは余命宣告をされている
くらいしか思いつきません。
そして、このどちらかだとすると、1話で
(もし、自分の命の時間が、予め決まっていたとしたら、俺ならどう受け止めるだろう?)
こんなことを考えていたり、チヅにニーナの替りなんていないと言われて
「・・・・そうだよな・・・・そうなんだけどさ(それでも、もうすぐ死ぬ俺と違って完全な無になる訳じゃないんですよ)」
こんなことを考えたり、マーシャに強く感情移入したこともすっきり説明できます。
(ツカサがギフティアだった場合の、チヅの言葉に対する解釈は1話レビューに書いてます)
●闇業者の意味
あと、マーシャ(ギフティア)を停止させなくてはならなくなったツカサの葛藤を描くだけなら、闇業者は不要です。予想外に早くマーシャの記憶に齟齬が発生したとか、マーシャがいなくなる理由は幾らでも考えられるので。
だから、闇業者にもきっと物語的に重要な意味があって、ツカサの生い立ちや、アイラがどうして三年も前から不調なのかと組み合わせれば、物語の根っこ(=主題)に届きそうな気がするのですが、どうにも噛み合わなくて全部枝葉止まりなんですよね・・・・。
枝葉をこねくり回してもあまり意味がないので、早く根っこを見つけたいところなのですが・・・・といったところで、以降は本編を追っていきたいと思います。
●三年前のアイラとカヅキ
OP明けの回想で、カヅキがホワイトボードの出勤表からアイラの名前を外そうとしてアイラがむくれています。きっとカヅキは冗談めかして言っていたのでしょうが、この時もう既にアイラの運動機能には障害が出はじめていて、カヅキが現場から遠ざけようとしていたことが窺えます。
次に、遊園地のベンチに座るカヅキとアイラが映されます。ここで『私服=本心の暗示』で楽しそうに笑うアイラに比べ、カヅキは浮かない顔をしていました。だから、カヅキはミチルの父親の案件を抱えながらアイラのために遊園地にきていたのだと思われます。
その後、詳細な展開はわかりませんが、同じ私服を着て大汗をかき身動きできないアイラを残してカヅキが(おそらく)ミチル達を追って部屋を出ていきます。
そして足に大怪我を負い手術を受けるカヅキを見て、私服姿のアイラが泣き崩れるシーンに繋がります。また、次の遊園地のシーンではアイラは厚着のコートになり、心が凍えてしまっていることが演出されます。
更に、カヅキが寮の部屋を出ていく時、アイラは『制服=何もできずカヅキに大怪我を負わせてしまった後悔より、SAI社のギフティアとして職務を全うしなくてはいけないという強迫観念』を着ていました。
でも、カヅキが出ていった後の暗い部屋で、アイラは制服の上着を脱ぎ、黒のインナーだけになります。職務を全うしたいと本心から望んでいる訳ではないけど、アイラ自身もどうして良いのかわからない=自分の存在意義を見失って真っ暗な闇の中にいたことが演出されていました。
しかし、そんな真っ暗な闇の中で、アイラが流した涙が光となり、アイラの目覚めるシーンに繋がります。
無感情に職務を全うするだけのロボットに涙を流すことはできません。だから、今は辛いだけだけど、アイラに思い出と感情があったからこそ涙を流すことができて、それがいずれ「無機質な部屋にわだかまっていた闇=アイラの心を覆っている闇」を切り裂く光になることが暗示されて・・・・いたら良いなぁ・・・・w
●月明かりの演出
その後色々あって、アイラが再び目を覚ますと、側のコンソールが点けっぱなしになっていて、ベットの端に突っ伏して眠るツカサを薄ぼんやりと浮かび上がらせていました。
そこにメンテナンス班の鉄黒ミキジロウがやってきて、
「徹夜でつき添うと言い張ってな。頑固な奴だ。(後略)」
ツカサのことをこんな風に言いながらコンソールを停止させるのでした。
でも、コンソールの光が消えても、窓から月明かりが差し込み、部屋を、ツカサやアイラを優しく照らします。ツカサがずっと看ていてくれて、アイラの心が少し明るくなったことが演出されていました。
でも、しばらくするとツカサが目を覚まし、二人で会話するのですが、
「マーシャとソウタは?」
「大丈夫、カヅキさん達にもフォローして貰って、全部こっちでやっといたから」
こう答える時、ツカサの顔が斜め前から映され、手前だけ月明かりで明るくなっていますが、奥は影に沈んでいます。本当は心が沈んでいるけど、敢えて明るく振る舞っているツカサが演出されていました。
この部分が特にわかり易いですが、全体的に心に落ちる影を抑えながら話そうとする二人の心が、月明かりと影で演出されていました。
でも、ツカサが帰ったあと、心の影を抑えようとしても顔を曇らせてしまったアイラに比べ、(固くても)笑顔を浮かべられたツカサを思い出して、
「どうして・・・・どうして、笑っていられるんだろう?」
アイラは膝を抱えながら、こんなことを思ってしまうのでした・・・・。
●水の演出
翌日、アイラは制服を着て事務所にいきますが、
「おはようございます」
「ごめんなさい」
「ツカサは、笑顔が似合うね」
など、明らかに口数が増え感情を表に出すようになっていました。
まだ、自覚はしてなくても、ツカサに恋をしたことで、三年前に凍りついた心が少しずつ溶けはじめていることの演出だと思います。
だから、(ヤスタカに絡まれている)ツカサをずっと見続けてしまい、(熱い)お茶をコップから溢れさせてしまった=熱い思いを心から溢れさせてしまったのです。
後にアイラがウェイトレスに変装し、転んで水を被るのも(、シャワー室でシャワーを浴びるのも)同様の演出です。
すぐ形を変え、熱くもなり凍りつきもし、清々しく流れる小川にも、淀んだ水溜りにもなり、凪いだ水面にも、大荒れの海にもなる水(≒お茶)は移ろい易く様々な側面を持つ心の演出です。
詳しく説明しなくてもイメージ的にわかるんじゃないかな〜と甘えてきましたが(笑)、説明した方が良いですかね・・・・まあ、水に限らず光と影とかもイメージ的にわかるだろうと甘えだらけのレビューしか書いてないですけど・・・・w
●緑と蝶々
「アイラ、あんたツカサに何か変なことされた?」
(中略)
「私はただ・・・・ツカサのことが気になるので」
(中略)
「アイラっち、それは所謂一つのアレです、恋って奴ですよ!」
一方、そんなアイラを見てミチルはエルと一緒にこんな会話を交わし、結局ミチルの思惑とは裏腹にアイラの恋の手助けをすることになります。
ここでアイラが制服でなかったのも、私服ほどではないけれど本心に近いことを話している演出です。
その後、アイラとエルのギャグシーンが色々あって、結局アイラはミチルに「どうしてツカサは笑っていられるのか?」を尋ねます。
「アイツだって、忘れたりなんか、きっとできないわよ・・・・忘れるつもりも、ないと思う」
「だったらどうしてツカサは笑うの?」
「さぁーどうしてかしらね〜・・・・悲しいから、かも」
そこでミチルはこんな風に答えます。ミチルとツカサが悲しみを抱えながらも、強く生きていることが演出されていました。
また、二人はアイラの家庭菜園の近くの緑に囲まれたベンチで話していて、二人の人間味が演出されています。
更に、二人が話しはじめる時に、蝶々がやってきて、二人の話が終わると大空に飛んでいきます。ミチルの話を聞いて、まだ何処に向かえば良いかはわからないけど、ゆっくりアイラの心が羽ばたきはじめたことも演出されていました。
●カヅキと社員証
その後、ヤスタカと伍堂部長がバーで話すシーンを挟んで、メンテナンスルーム(?)でカヅキがアイラに社員証を渡します。
EDラストの社員証入れではなくその中身を渡し、SAI社のギフティアとしてではなく、アイラという一個人として生きろと激励したと解釈したいところですが・・・・
この後、カヅキはツカサにアイラの寿命が残り千時間だと伝え「アイラとの別れをツカサに託そうとしている=アイラとの別れから逃げている」ので、SAI社のギフティアとして職務を全うしたいと言っているアイラの上辺だけしか受け止められていない、のかな〜と思ってみたり・・・・。
だから、ここをどっちで解釈するかは、ちょっと今の段階では悩ましい感じです・・・・。
●偽りの心を脱ぎ捨てて
そしてアイラは寮に戻り、部屋でお茶を沸かしたり、ツカサの「ラブラブ新婚生活マニュアル」を読んだりして、ツカサの帰りを待ちます。
でも、ツカサはなかなか帰ってこなくて、アイラは事務所にツカサを迎えにいきます。すると、丁度部屋でカヅキがツカサにアイラの寿命が残り千時間しかないことを話すところで、アイラはそれを立ち聞きしてしまいます。
「(前略)例え組み続けるにしても、一ヵ月後にはどっちにしろアイラとのパートナー関係は終わりだけどな」
そしてカヅキのこの言葉に、寮から去っていったカヅキの姿が重なり、きっとツカサもアイラの元から去っていくのだろうと、顔を曇らせアイラもその場を立ち去ろうとします。
「俺は、アイラと最後まで組んでいたいです。今は、アイラ以外の誰かと組むことは考えられません」
でも、ツカサはこう言ってくれて、アイラの瞳は喜びに揺れ、笑みを結ぶ口元と一緒に部屋から漏れる光に照らし出されていました。
(一方、カヅキはツカサに丸投げで良いのかと自分を客観的に振り返りつつも、ツカサの肩に黙って手を置くことしかできませんでした。そのシーンが窓に映ったカヅキの写像で描かれたのは、鏡を見るように自分を客観視しているカヅキの演出です)
だから、アイラは先に寮に戻ると、ツカサに貰った遊園地のキーホルダーを取り出し、愛おしそうに撫でていました。
新婚マニュアルもキーホルダーも、思い出なんか要らないと、ずっとSAI社のギフティアであろうと本心を偽り続けてきたアイラが遂に自分の心に素直になったことの演出です。
「おかえり、アイラ」
「ツカサもおかえり」
そして帰ってきたツカサがこうアイラを気遣って、アイラも潤んだ瞳を輝かせ、輝く笑顔でその思いを返すのでした。
そんなアイラがとっても可愛い訳ですが、余韻を残さないまますぐEDがはじまって、生き急がざるを得ないアイラの状況を切なく演出していました・・・・。
●サブタイトルの意味
あと、ツカサの「おかえり」はツカサ自身がそれを意図して言っているかは微妙ですが、アイラが偽りの心を脱ぎ捨て、本心で帰ってきたことに対する「おかえり」です。
ただ、サブタイは「二人で、おかえり」なのでツカサも何処かから本心に帰ってきてるはずです。ツカサが余命宣告されているかギフティアと考えれば共に残り少ない時間をすごそうと覚悟を決めたと言えるのですが・・・・考えられる可能性が多すぎてすっきりしないんですよね・・・・。
まあ、そんなモヤモヤをCパートのギャグで吹き飛ばしたところで、
プラスティック・メモリーズ #07「上手なデートの誘い方」
に続きますw
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