今回は、広く色んなことが掘り下げられたので、何に焦点を当てるか迷いました。
勿論、葵が戻ってくるなら葵回なのですが・・・・葵は5話レビューで書いた梓のように、晴香達が取り零してしまったものとして配役されている気がします。
よって、葵の退部にはどんな物語的な意味があるのか?と考えると、
『あすか&滝の腹黒策士コンビが協調性も身に着けようと自省するトリガー』
なのかなと、今のところは思っています。
そう思った理由は、あすかと滝が本当にこのままで良いのか自問自答する演出が積み重なっているからです。
●揺れるあすか
まず、6話レビューで書いたように、あすかは葉月を辞めさせまいとかなり気を回しています。
そして、6話で葉月の後ろで仁王立ちしてるところも、4話で「オイーッス、三者面談終わりっす」と言う前後でも、あすかの眼鏡が光を反射して、奥の目が見えなくなっていました。
これは、目は口ほどにものを言うとの言葉のように、「目=口=心」を隠している演出です。よって、あすかは本心から葉月を指導しようと思っていません≒本当にあすかが指導して良いのか迷っています。
いままでずっと「中立」で他人を突き放していたのに、今更面倒見の良い先輩になろうだなんて、虫が良すぎるのではないかと・・・・。
「だったらあすかが部長やれば良いでしょ!あすかが断ったから私がやらなきゃいけないことになったんだよ。あす・・・・」
「だったら。だったら晴香も断れば良かったんだよ・・・・違う?」
だから、今回、晴香とあすかがこう言い合う時、一瞬あすかの眼鏡が反射光で白く陰ります。今までなら普通に言えていたはずの言葉なのに、本当にそれで良いの?と、あすかの心に迷いがあることが演出されていました。
更に、この時、あすかは上目遣いで晴香を見据えています。上から見下すのではなく、下から見上げているのです。
泣き言を言うくらいなら私のように最初から受けなければ良いんだ、と思う一方で、(そんなリスクがあったのに消極的だったにしても)部長を受けた晴香を眩しく思っているのです。
だから、本来のあすかなら内容的には同じでも、もっと角の立たないおどけた言い方をしていたはずです。でも、あすかが「眩しい、見習うべきでは?」と思っていた晴香が挫けているのを見て、余計に心がさざめいてしまいました。
そして、あすかはそのイラつきを晴香にぶつけてしまったのです・・・・よって、ここであすかが言った「情緒不安定」は即ブーメランとしてあすかに刺さっていますw
そんな訳で、次の日(晴香が休んでしまった日)、あすかはチューニング中に考え事をしていた久美子をマジトーンで注意してしまいました。普段のあすかなら、
「どうしちゃったのかな黄前ちゃん、反抗期かな〜?」
などとおどけていたはずです。
隠そうとしていても、あすかの
●余裕がない滝
同様に、その後の練習では、滝がマジトーンで久美子を注意します。内容的には厳しいことを言っていても、口調だけは優しさを装っていた"粘着イケメン悪魔"も、その余裕がなくなっていました。
「厄日だね〜ハハ・・・・」
そんな腹黒策士コンビの集中攻撃に遭い、久美子はぐったりとこんな愚痴を漏らしてしまいますw
勿論、久美子も葵のことで気が抜けていて、注意されるような行動をしていました。でも、辞めると言った葵を追いかけたことで、あすかだけでなく滝にも葵のことで久美子がそんな調子であることがバレています。
そして(おそらく)、あすかも滝も葵のことは自分のせいじゃないと思いたくて、だから葵のことを思い出させる久美子の様子に余計イライラし、八つ当たりをしてしまったのです。
なので久美子は安心して愚痴って良いと思いますw
また、Bパートのはじめに、職員室で独り葵の退部届けを見詰める滝が映されます。吹奏楽部からも教師達からも孤立して、自分だけの思いで行動している滝が、本当にこのままで良いのか自問していることが演出されていました。
●実は強かった晴香
一方、晴香は久美子とあすかの前で泣いてしまい、翌日休んでしまいます。でも、お見舞いにきてくれた香織のフォローと、葵の
「やっぱり私、そこまで吹部好きじゃなかったんだよ・・・・晴香はどう?」
という問いかけに、自分を見詰め直し、それでも部長を続けると、少しだけ決意することができました。
そう言えるのは、以下のような演出があったからです。
葵に上の台詞を言われたあと、葵を見送る晴香が映されます。葵が歩いていく方=音楽から離れる方向を向きつつも、晴香は青白く輝く街灯に照らされていました。
そして、その街灯は晴香の前の「水溜り=取り残され淀んだ水=一年前のわだかまり」にも映り込んでいます。
この水溜りのように淀んでいたり、清流のように涼やかに流れたり、嵐の海のように荒れていたり、穏やかな凪だったり、「様々な状態に移り変わる水=心」の演出です。
だから、今は一年前のことで吹奏楽に背を向けてしまっていて、このシーンの視点のように心が揺れ動いているけれど、晴香の心の中には吹奏楽に対する強い思いが灯り続けているのです。
なので逆に、振り向くことなく夜の道に進んでしまった葵は、もう戻ってこないのかなと、最初の方に書いたような解釈になっています。
●サブタイトルの意味
よって、これらを総合すると、今回のサブタイは「なきむしサクソフォン(の成長)」のように少し成長できた晴香を指していると考えられます。
ただ、表の意味はそれで良いとしても、裏には隠された別の意味がある気がします。
まず「なきむし」が平仮名表記なので、漢字が書けないくらい小さな子供という意味が入っています。でも今回、上で書いたように晴香は少し成長していて「泣き虫」くらいにはなっているはずです。
次に、2話では久美子が「葵ちゃん、高校でもテナー"サックス"なんだね」と言っていました。また、4話の冒頭では、晴香の肩書きが「部長 "サックス"パートリーダー」になっていました。
つまり、作中で"サクソフォン"と誰も言っておらず(言ってないはず・・・・)、ググらないとそれが何物かわかりませんでしたw
(サクソフォン=サックス、のことのようです)
しかし、あすかは2話で、ユーフォニアムの説明をした時、「ゾンメロフォン」や「サクルソン族」と言っていました。そしてその前後の台詞によって、薀蓄キャラとして演出されています。
だから、サクソフォンなんて言うとしたら、あすか以外に考えられません。つまり、サクソフォン=あすかの発言である暗示、ということになります。
よって、今回のサブタイは、上で書いたように本心では晴香を眩しく思いながら、拗ねた子供のように
「だったら晴香も断れば良かったんだよ・・・・違う?」
≒「なきむしサクソフォン」
と晴香に言ってしまったあすかを指しているのだと思います。
あとは細かいことを幾つか・・・・
●マウスピースを洗っていたのは?
サブタイキャッチ後の練習シーンの後、吉川優子(黄色リボンの二年生)が、残ってソロパートの練習をしようとしていた麗奈に、
「高坂さん、練習終わりよ。片付けて」
と言って練習を止めさせます。
その横では、晴香がうな垂れながら音楽室を出ていきました。それを見た香織は、優子に
「ごめん、やっぱり先帰ってて」
と言い残し、晴香を追いかけていきます。
そして、その直後に"マウスピースを洗う誰か"が映されます。
マウスピースの大きさから麗奈だと思うのですが・・・・もしかしたらあすかの可能性もワンチャンあるかもしれません。
まず、上に書いたように「水=心」の演出で、蛇口から大量に流れ落ちる水は、心から思いが溢れ出ている演出です。
また、境界の彼方9話レビューで書いたように、『銀』のマウスピースは、
「吸血鬼や狼男は銀の武器でしか倒せない=銀には魔除けの力があるとされています。そして"昔話や神話の化物=人間のエゴや欲望"の表れです。よって『銀は人間のエゴや欲望を滅ぼす色=内面、精神の成長を暗示する色』です。
つまり、昔から人間は銀を見るとこんな印象を受けるということで、それを利用した演出です」
よって、このシーンは、練習の邪魔をする優子達に文句を言うのを必死に抑えている麗奈の演出です。
もしくは、我関せずの「中立」の傍観者を止めるべきではないかと葛藤しているあすかの演出です。
久美子達が、マウスピースを洗う麗奈の奥を通っているので、明暗が分かれている一年生繋がりとも取れます。でも、直前の、葵のことで悩んでいる晴香と香織を受けている、三年生繋がりとも取れるので、ここは本当にどっちで取るべきか悩ましいんですよね・・・・。
●桐原水
同様に、久美子と秀一が
画面では「水原桐」と書かれていましたが、歴史ある佇まいの通り、昔の表記なので今とは読む方向が左右逆なようです。船の船名を読む時に「??」となるのと一緒ですねw
「桐原水」は宇治七名水という観光名所の一つらしく、修学旅行などが残ってる学生の方は、一緒に聖地巡礼できるかもしれませんw
●金と銀
また、境界の彼方9話レビューで書いたように、
「金色は、エジプトのファラオやインカ帝国の王達が、黄金のマスクや杖を身に着けたように、富と権力の象徴、外にその力を示すものです。また持たざるものはそれに惹かれ、憧れ、強い興味を外(黄金)に向けるので、憧れや願望の暗示でもあります」
よって、銀色のユーフォを持つあすかと久美子(小学四年生)は、ただ上手くなることだけを考えて、内に向かって練習をしています。
でも、久美子は金色のユーフォに持ち替えていて、今は吹奏楽部のみんなと協調して良い演奏がしたい、という外に向かう願望のために頑張っているのです。
よって、金のサックスを持っていた葵も、自分より外への思いを重視していて、
「私、『のうのうと』全国目指すなんてできない。去年あの子達辞めるの止められなかったのに、(自分達だけ)そんなことできない」
これこそが葵が吹奏楽部を辞めた本当の理由なのだと思います。勿論、受験のことも相まって、より退部の決断を早めたのだとは思いますが・・・・。
一方、同じく金色のチューバを使っている葉月ですが、今回ラストで久美子に言った
「久美子ってさ、トロンボーンの塚本とつき合ってんの?」
この台詞より、6話レビューで書いたように、葉月が一番気にしているのはやっぱり恋愛のことっぽいんですよね。
前回、秀一に転びそうになったのを助けて貰ってから、葉月はチューバを持って帰らなくなりました=チューバより大事なものができてしまいました。
だから、葉月にとっての「金色=願望」は部活を通して恋愛することとなります。そのために上手に演奏できるカッコ良い女子を目指していますが、まだ楽器とかのことがよくわかっていないように見えます。
よって、チューバに「チュパカブラ=UMA=未確認生物=よくわからないもの=吹奏楽」って名前をつけたのも、そんな葉月の演出なのかなと思ってみたり・・・・。
そんな訳で、次回いよいよ二人の修羅場になってしまうのか、非常に気になるところです・・・・。
●心が近づいた二人
あと、電車で久美子と秀一が話していると、いつの間にか麗奈がすぐ隣の席に座っていました。
麗奈は、4話では久美子や秀一より一段低い階段から二人を見上げていました。また、5話では隣の車両から「久美子が乗っていた車両=久美子の心の中」にまで入ることができませんでした。
でも、その後二人が会話を重ねて、久美子と麗奈の心が近づいていることが演出されています。
・・・・ただ、何か久美子と秀一が仲良くしているのが羨ましくて、麗奈がつい邪魔してしまったように見えるのは気のせいでしょうか・・・・?w
と、百合疑惑が芽生えたところで、8話レビューに続きますw
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