第20話「Which way should I go to get to the castle?」
さて、(一応、美嘉が表面的には美城常務の企画を受けてますが、)高垣楓を皮切りにアイドル達にことごとく拒否られ、ラスボスというよりなんだか可哀想な敵役になっていた美城常務ですが、ここにきてシンデレラプロジェクトからアーニャと凛を引き抜くという暴挙を行い、やっとラスボスらしい初仕事を飾ることができましたw
そして、美城常務は相変わらず一方的な企画の押し付けしか出来ませんでしたが、
「既存のユニットを解散しろとは言っていない。私は君達の才能を買っている。それをもっと伸ばしてみたいとは思わないか?」
「アイドルの自主性を尊重する。それが君(武内P)のやり方だったと思うが」
などと言われた武内Pが、
「二人にとって、決して悪い話では、ないと思いましたので」
と、それを断れなかったように、一応アイドルのことも"美城常務なりに"考えています。
14話レビューで書いたように、美城常務はシンデレラの継母や悪い魔女ではなく、周りが勝手に勘違いした幽霊の暗示を受けているので、ただ単に悪い敵役という訳ではないんですよね・・・・。
まあ、そうは思っていてもそろそろ「美城常務の方がむしろ可哀想」と書きそうになっていたくらい今までがアレだった訳ですが・・・・w
●自分に自信のない卯月
そんな訳で、美城常務のおかげで大波乱が起きつつあるシンデレラプロジェクトですが、今回一番注目するのは卯月の動向です。
凛に美城常務が企画したトライアドプリムス(渋谷凛、神谷奈緒、北条加蓮のユニット)のことを打ち明けられた未央はそれに反対しようとして、卯月に「しまむーはどう思うの?」と訊きますが、
「えっ!?・・・・え〜っと、あの、私、私・・・・わ、わかりません・・・・わかりません、私」
と卯月は答えることができませんでした。どうして答えることができなかったのか? それは
『卯月は自分に自信がなくて、卯月より奈緒達と組んだ方が凛の言う"新しい何か"が見つかるんじゃないかと思ってしまった』
からです。もし卯月が自分に自信を持っていたなら、未央のように
「しぶりん、その新しい何か、って、ニュージェネじゃできない? 私達とじゃダメなの?」
こう言うことができたはずだから・・・・。
●1話の卯月
何より、そんな自分に自信のない卯月がこれまでに何回も描かれ続けています。
まず1話で、卯月は武内Pに「CDはいつ出せますか?」など色々な質問を、武内Pの目を真っ直ぐ見ながら、さも意欲があるように尋ねますが、恐らく空元気でそう振る舞っているだけです。
何故なら卯月が本当に訊きたかったのは、一連の質問の最後に武内Pから目を逸らしながら尋ねた
「あと、どうして私なんでしょうか?・・・・えーっと、私、一度このオーディションに、落ちているので、今回の選考理由とかできたら聞かせて貰えれば、って・・・・」
このことだったからです。ダンスや歌がまだまだで、一回オーディションに落ちていて、だから自分に自信が持てない卯月が本当に訊きたかったこと。
(これがあったから、1話で卯月は凛を勧誘できないでいる武内Pにずっとレッスンをするように言われても、何も言わなかった・・・・何も言えなかったのです。自分にはまだまだレッスンが必要だと、卯月自身が思っていたから・・・・)
「笑顔です」
「笑顔・・・・」
「はい・・・・説明不足でしょうか?」
「いえ・・・・いいえ! えへっ、笑顔だけは自信があります! ぶいっ!」
なので、それにこう返した武内Pは『この時点では』パーフェクトコミュニケーションと言えなくもないのですが・・・・。
卯月自身が笑顔の素敵なアイドルを目指していた訳でも、(本当の意味で)ここから笑顔の素敵なアイドルを目指すようになった訳でもないんですよね・・・・。
もし、本当の意味で、卯月が自分の笑顔に価値を認めていて、それを自分の自信にできていたら、凛にニュージェネではダメなの? と言えていたはずなので・・・・。
「良いんです。それでもプロデューサーさんは、私の長年の夢を『叶えてくれる』人かもしれないから」
「(前略)そうしたら、プロデューサーさんが『声をかけてくれた』んです」
「プロデューサーさんは、私を『見つけてくれた』から・・・・私は、きっとこれから夢を叶えられるんだな、って。それが、嬉しくて」
だから、1話の後半、卯月が公園で凛に言ったこれらの言葉は全て受身で、ダメな自分を武内Pがお城まで連れて行ってくれるかもしれない、そんな卯月の自信のなさが透けています。
特に、最後の言葉は春の陽気に舞う桜の中、満面の笑みを浮かべる卯月と、一見希望に溢れているように見えますが、卯月はずっと俯いていて、水平より上に顔を上げられていませんでした・・・・。
そこでは、立っている卯月が座っている凛に話すので、ある程度はそうなりますが、でも途中で卯月は凛から視線を外していて、そこでまで地面を見る必要なんて全くないんですよね。麗らかに晴れ渡った春空や、高みから花びらを舞わせる桜の木など、いくらでも素晴らしい景色が卯月の上には広がっていたのに・・・・。
また、公園で、凛にアイドルになりたい理由を訊かれ、
「(前略)だって綺麗な衣装を着れて、キラキラしたステージに立ってて、お姫様みたいで・・・・。
あっ! あんな風になれたら良いなって・・・・」
卯月はこんな答えを返しながら、楓の電子看板を指差そうとします。でも、看板がすぐ上田鈴帆(ファラオ)のものに変わってしまい、卯月は力なく指を下ろします。
卯月自身がどんなアイドルになりたいか見えていない=武内Pに言われた「笑顔」を本当の意味で自分の長所だと思えていない、そんなことが演出されていました。
●2話と19話の卯月
そんな訳で、2話では初めてのダンスレッスンの前に、卯月と凛と未央が、
「凛ちゃんはダンス初めてですよね」
「うん」
「本田さんは?」
「友達と踊ったりしてたけど、ちゃんと指導受けるのは初めてかな」
「なるほど〜。私は養成所に通ってましたから、わからない時は訊いて下さいね」
こんな会話を交わしますが、その後の練習で卯月だけがターンを失敗し、一番ダンスが苦手であることが示されていました。
そして、それが19話レビューで書いた奈緒や加蓮の歌を聞いて自分の腕を抱き締めた卯月に繋がっていて、卯月は未だにダンスや歌に――アイドルとしての自分に、自信が持てていないのです。
●7話の卯月
よって、7話レビューでは、7話で卯月が寝込んでしまった理由を、
オーディションに落ちながら、ずっとレッスンに耐え、待ち望んでいたアイドルデビューが、あんなことになってしまったから
と書きましたが、ちょっと齟齬がありました。
別に卯月は悪くないけど、同じユニットの仲間としてなんとかしなければならないのに、ショックで自発的に動くことができなかった
ではなくて、
『未央に関係なく卯月はライブの時に失敗してしまったし、卯月がダメなせいで客が減ってしまったかもしれないと、どうしても思ってしまう。ここにきて、自分への自信のなさが溢れてしまい、そのせいで寝込んでしまった』
のだと思います。
でも、それでも卯月が、見舞いに来た武内Pに、俯きながらでも、
「だから、次はちゃんと最後まで笑顔でステージに立ちたいな、って」
と、健気に笑おうとしたから、それが武内Pを動かし、ニュージェネレーションズの危機を救ったのです。
だから、もし、今回も卯月が未央や凛に笑顔でこんなことを言えていたら、(未央に凛の掛け持ちを承服させ)二人を繋ぎとめられていた・・・・そんな気がします。
しかし、いくらそんな力を持っていても、誰よりも、卯月自身が自分の力を信じられていないのです。
だから、よくよく考えてみると、シンデレラプロジェクト十四人の中で、卯月だけが未だに(精神的に)成長できていない、自分に自信が持てないままでいる、そんな立ち位置に甘んじていました・・・・。
●卯月の今後は・・・・
なので、歌やギターに自信がなくても、無理に歌やギターの練習にしがみついていくのではなく、「自分がロックだと思ったらそれがロック」と自分の道を見つけた李衣菜のように、卯月も「笑顔」が自分の道だと、本当に笑顔になれる場所を探していくのかな〜? と思ってみたり。
もしくは、卯月の
「私、こういうの思い付かなくって。新しいこと考えるの苦手なのかも・・・・未央ちゃん凄いです!」
この台詞が立ち止まっている卯月の演出だけでなく、卯月が他人の長所を見つけ伸ばしていける、そんな暗示になっているのなら、そっち方面でも成長していくのかも、と思いつつ、卯月がどうやって自分のアイドルの道を見つけていくのか、見守っていきたいところです・・・・。
●ラブライカと・・・・
一方、一期で唯一落ち込んだりしていない、強いメンタルと安定性を兼ね備えたアナスタシアにも、美城常務から声がかかります。
しかし、アーニャはちゃんと自分で考えて答えを出し、みんなのお姉さん、シンデレラプロジェクトのリーダー格である美波もそれを受け入れます。
そして、OPより、アーニャが掛け持ちになって、それを補うように蘭子がラブライカに加わるのかな〜、って思ってみたり。
・・・・まあ、そんな気遣いより、ラブライカとニュージェネレーションズ、誰でも良いので一人ずつ入れ替えると途端に安定感が激増すると思うのですが、やっぱりユニットの色的に、お姉さんキャラと新人キャラの混合はちぐはぐしちゃうのでしょうか・・・・。
(アーニャはお姉さんキャラなだけで、実際は15歳ですが・・・・w)
●未央と武内Pと美嘉
そして最後に、未央のソロデビューという、多分最悪の選択をした、プロジェクトの問題児、未央と武内Pですが・・・・。
恐らく、凛を除いた未央と卯月のデュオだと凛に当て付けるみたいだし、卯月も「わからない」とニュージェネにこだわりを見せなかったから、未央もソロを選んだのでしょうが・・・・。
勿論、未央だけが悪いんじゃなく、「わからない」と答えた卯月と凛、三人共に道を見失っているのですが・・・・そこで武内Pが未央を止められないってのが痛恨のバッドコミュニケーションというか、今までちゃんと卯月を見ていれば、どうして卯月が「わからない」と言ったのかわかるはずで、なら未央の説得のしようもあったはずなんですよね・・・・。
でも、ニュージェネはバラバラになってしまい、卯月は一層自信を失ってしまって、もう簡単には元に戻れなくなってしまいました。
まあ、噴水のところで話す未央と武内Pを美嘉が見ていたので、凛と奈緒達を一緒に歌わせてしまった責任を感じて、美嘉が動いてくれるのかな〜と期待しつつも、美嘉もそんなにハイスペックではないのでやっぱり紆余曲折するのかな〜といった感じですw
●クローネ
因みに、美城常務が立ち上げようとしているプロジェクト・クローネの「クローネ」はドイツ語などで「王冠」を表す単語のようです。
あくまで別世界のお姫様を目指す美城常務らしいというか、王冠なので、お姫様を通り越して女王にまでなってしまっているというか・・・・w
といったところで、
アイドルマスター シンデレラガールズ 2nd SEASON
第21話「Crown for each.」
に続きますw
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