第23話「Glass Slippers.」
さて、だいたい20話レビューや22話レビューで予想したように、本田未央と渋谷凛の二人が島村卯月を励まして、先に進むきっかけを作ることができた、そんな回になっていました。
ただ、ラストに映される時計がやっぱり十二時を指したままで、卯月はサブタイトルにある「ガラスの靴」をまだ見つけられていないのだと思います。
7話レビューで書いた、7話で卯月が踏んでしまったガラス片(≒ガラスの靴が欠けた暗示)や、13話レビューで書いた、フェスの後に映されたアイドル達が履いていたガラスの靴、など視覚的にそれを暗示するものも描かれていないですし。
(後述するように、間接的には色々描かれていますが・・・・)
なのに、どうして今回のサブタイが「ガラスの靴」なのか、ちょっと悩ましい感じになっていました。
●ガラスの靴は・・・・
まあ、結論から書くと、ガラス製だけあって
『ガラスの靴は見えにくいものです』
卯月が、1話で凛に新たな一歩を踏み出させたほど「輝く可愛い笑顔=ガラスの靴」を履いていたとしても、
『それが綺麗なほど、透き通っっているほど、靴は見えにくくて卯月にはそれが見えていないのです』
だから、7話のように欠けでもしないと見えないし、13話の凛のように爪先立ちになって一瞬だけ靴を履けていたとしても目に見える形では描かれませんでした。
卯月(や凛)のガラスの靴にはそんな暗示がこめられていました。
また、21話レビューで書いた「秘密の花園」も、寂れた屋敷の中に隠れている素敵な花園を見落とさないで、といった話なので、一連の伏線になっているのだと思います。
といったところで、本編を順に追っていきたいと思います。
●卯月のスリッパ
冒頭、卯月は凛からの電話を自室で受けます。
そして卯月は元気そうに振る舞いますが、電話の間「顔≒表情≒心」が隠され、「自分だけアイドルとしての資質を何も持ってない」という不安、本心を隠していることが演出されています。
だから、卯月は(精神的に)立ち上がることができず、座り込んで膝を抱えながらスマホで話していました。
更に、卯月が
「心配かけちゃってごめんなさい。今日はちょっと調子が・・・・(後略)」
こう言う時、その傍にはウサギのスリッパが置かれています。卯月は裸足だと思っているけど、今までは「ガラスの靴=笑顔」以外にも、もこもこで可愛いウサギの靴のような可愛さをまとっていた(そんな靴を履いていた)ことが暗示されていました。
なのに、卯月は(21話レビューで書いた"呪い"のように)自分には何もないと、ウサギのスリッパまで脱いでしまっていたのです。
だから、卯月がそう思っているだけで、その足元にはずっとウサギのスリッパ(やガラスの靴)が寄り添っている、そんな暗示になっていました。
●お城の入り口で・・・・
なので、翌日、卯月は「346プロ=お城」の玄関で、続々とお城に入っていく人達を傍目に、一人だけお城とは逆の方を向いていて、武内Pがやってくると、お城から離れるように武内Pに駆け寄ります。
そして卯月は、養成所でレッスンを受けなおしないと申し出て、「自分もアイドルとしての何かを手に入れなくては(手に入れたい、ではないんですよね・・・・)」と空回りし、逆走している状況が暗示されていました。
●卯月の枯れ木
「はい。それで、あの・・・・」
また、卯月が武内Pにこう話を切り出すとき、葉が落ちてしまった枯れ木が一瞬映されます。
20話レビューでは、1話の卯月は、オーディションに落ち、ずっとレッスンばかりで、アイドルへの夢を散らしかけていた。舞い散る桜の花びらがその暗示になっている、と書いていました。
でも、それはちょっと違っていて、卯月はそれまでずっと一人で、オーディションに落ちても、アイドルになるために、OPのShine!!の歌詞にあるように
「この自分の靴で今進んで行ける勇気」
で、(まだ成果に繋がってなかったとしても)踏み出し続けていました。しかし、
『武内Pや凛に会って、一緒に進んでいく仲間が見つかって、卯月は二人に依存してしまい、弱気に、臆病になり、アイドルへの道に踏み出すことから逃げてしまいました』
1話の舞い散る桜(と今回の枯れ木)は、そんな暗示になっていたのだと思います。
だから、今回、ここ以外にも随所に枯れ木が描かれていて、そんな勇気を失くしてしまっている卯月の心が繰り返し暗示されていました。
●未央と凛と階段と
一方、OP明けて、シンデレラプロジェクトのミーティングの後、未央と凛が卯月のことを話しながら、地階への階段を登っていきます。
自分の足でアイドルに続く階段を登っている二人と、(おそらく)武内Pに養成所のことを話したあと、346プロの玄関の階段を降りて行ったであろう卯月が、対照的に暗示されていました。
●ダンスシューズとレッスン室
その後、養成所でダンスレッスンを受ける卯月が映され、その足元のダンスシューズがアップで映され強調される演出が入っています。
ガラスの靴(本当に可愛い笑顔)や、ウサギのスリッパ(卯月の素の可愛さ)を脱いで、ただひたすらに練習に没頭しようとしている(武内Pや凛や未央に本心を打ち明け相談することから逃げようとしている)ことが暗示されていました。
勿論、練習の時にはダンスシューズに履き替える訳ですが、今回、卯月は凛が強引に外に連れ出してくれるまで、ずっと養成所のレッスン室に引きこもっていました(そう見えるようにレッスン室にいるところしか映さない演出になっていました)。
よって、卯月は一時的にではなく、ずっとダンスシューズを履き続けようとしていて、
「今まで何やってたんだろう・・・・もしかしたら、アイドルになるのちょっぴり早かったのかな、なんて・・・・そうです、きっと早かったんです。私にはお城の舞踏会なんてまだ・・・・」
後のこの台詞にも、そんな卯月の思いが表れていました。
だから、今回、レッスン室はずっと暗くて、その窓からは枯れた木々が寒々しくて、不安に潰れそうになっている卯月の心が演出されていました。
また、レッスン室で卯月が鏡に映る自分を見ながら練習するところが繰り返し映されるのも、卯月が「このままじゃダメだ、自分には何もない」と自分を客観視(しようとして過小評価)している演出です。
その後、練習中の卯月のところに武内Pがやってきたり、三村かな子が卯月の代わりに小日向美穂との写真撮影の仕事をしたり、そのかな子の代わりに神埼蘭子が緒方智絵里とレポートの仕事をしたり、未央の舞台練習が映されたあと、武内Pが再び卯月のレッスン室を訪れます。
その時、卯月はレッスン室で膝を抱え座り込んでいますが、ダンスシューズを脱いでいません。「アイドルとしての何かを見つけなくては」と練習に固執している、
『ガラスの靴を履くために周りに相談することから逃げている、卯月の頑なな心が暗示されていました』
でも、一方で、武内Pがそんな卯月の姿を見られたのは、レッスン室の一面がガラス張りになっていたからで、
『窓ガラス≒見えない心の壁がありながらも、卯月も不安な気持ちを武内P達に打ち明けるべきではと、勇気を出そうと葛藤していたことが暗示されていました』
●枯れ木と窓ガラスと
その後、未央が卯月にスマホで電話しますが、卯月の様子がおかしくて、凛にそのことを相談します。
その時の休憩室の窓からも枯れ木が見えていて、「枯れ木≒桜の花びらが散ってしまった木≒勇気をなくし閉じこもっている卯月」との間に「窓ガラス=見えない心の壁」を感じている二人の心が演出されていました。
後に、凛がこの場所で神谷奈緒や北条加蓮と相談するシーンの演出も同様です。
●沈む夕日に
その後色々あって、三度、武内Pが卯月のレッスン室を訪れ、ニュージェネレーションズのライブをやらないか卯月を誘います。
「(前略)できないことこんなにあるんだって・・・・だからこんな、ダメだって気持ちのままやってたら、絶対凛ちゃんにも未央ちゃんにも迷惑かけちゃうと思うんです」
しかし、卯月はこう言ってそれを断り、この時、レッスン室の窓越しに、枯れた木々を越えた、高いビルの向こうに沈みゆく眩しい夕日が映されます。
夕日のように眩しく輝いている凛達がこんなにも遠くて、それがまぶしいほど切なくて、でも、だからこそ自分もそんな何かを見つけなくては・・・・、そんな卯月の心が演出されていました。
●あの時とは違います
その後、凛と未央は武内Pからそんな卯月の様子を聞いたり、色々あって、凛が
「卯月に会いたい。一緒にライブに出ようって、私と未央の口から言いたいの」
と武内Pにレッスン室の場所を尋ねます。そして、それに素直に応じた武内Pを見て、凛と武内Pは
「・・・・こちらに任せて下さいとは言わないんだ・・・・」
「あの時とは違います」
こんなやり取りを交わします。
7話で「凛や卯月に心配をかけないよう、未央のことを自分だけで抱え込もうとした武内P」が、凛達を信頼し一緒に問題を解決していけるようになっている、そんな武内Pの成長、凛達との絆が演出されていました。
そして、その7話の武内Pが今回の
『凛や未央に迷惑をかけないよう、自分のことを抱え込んで相談することから逃げている卯月』
にダブっていて、卯月も武内Pのように変わっていける暗示・・・・になってると良いなw
●卯月の心を連れ出して
その後、シンデレラプロジェクトの地下室を出て、階段を登る凛や、階段を登りきったところにやってくる未央、枯れ木の風景などが入り、凛達が卯月のレッスン室にやってきます。
(まあ今回、枯れ木に関してはホントに随所に描かれていますがw)
卯月が引きこもっている暗く沈んでいるレッスン室は「卯月の心の暗示」で、凛と未央がそんな卯月の心に入ってきて、腹を割って話してくれている、そんな暗示になっています。
「もしかしたら、アイドルになるのちょっぴり早かったのかな、なんて・・・・そうです、きっと早かったんです。私にはお城の舞踏会なんてまだ・・・・」
でも、卯月は上で書いたようにこんなことを言って、本心を匂わせつつも、窓ガラスを隔てたレッスン室のように「自分には何もない」という本当の不安を打ち明けないまま、
「島村卯月、がんばります!」
と無理矢理笑顔を浮かべてしまいます。
だから、凜は「誤魔化さないでよ!」と強引に卯月の手を取って、卯月を(おそらく1話と同じ)外の公園に引っ張っていくのでした。
でも、そのおかげで卯月はやっと「レッスン室=閉じた頑なな心」から外にでて、ダンスシューズから普段の靴に履き替えることができました。
凛が本心でぶつかってくれたから、この後の公園で自分の本心、隠し続けていた不安な気持ちを打ち明けることができたのです。
●1話の卯月と凛
1話の最初では、卯月はずっとレッスン室にダンスシューズでこもっていました。でも、武内Pからデビューを告げられ凛の花屋にでかけます。しかしその後、武内Pに卯月の長所を尋ねると「笑顔」だと言われ、卯月はそれを「卯月には何もない」と受け取ってしまいます。
だから、卯月は再びレッスン室に戻ってしまいました。卯月に本当に勇気があれば、デビューがもう決まっているのだから、2話冒頭の未央のようにレッスン室を出て346にいけば良かったんですよね。
だから、1話で卯月がずっとレッスン室にいた本当の原因は、武内Pが凛を説得できなかったからではなく、
『卯月が新しい一歩を踏み出すことができなかったから』
なのだと思います。
でも、その後、武内Pから凛のスカウトにいくところだと聞くと、好奇心が手伝ってか、もしかしたら何かできるかもしれないと小さな勇気を振り絞れたのか、卯月は自分から凛に会いに行くと、レッスン室を出ることができました。
そして、オーディションに一回落ちていて、武内Pの「笑顔」発言でますます自信をなくし、本当は
『武内Pが、新しい仲間がいれば、「何もない自分」をアイドルにしてくれるかもしれない』
なんて後ろ向きな思いだったけれど、卯月が気付いてないだけで卯月の「笑顔」が本物だったから、その笑顔が凛の背中を押し、新しい一歩を踏み出させたのです。
なので、今回は、その真逆をなぞり、凛が卯月を外に連れ出し、新しい一歩を踏み出させる、1話の映し鏡のような話になっていました。
●7話の武内Pと・・・・
「あの時言ったよね、夢だって。キラキラした何かになれる日がきっとくるって。今は・・・・?」
「えっ・・・・」
「逃げないでよ」
また、凜は公園にくると卯月とこんな会話を交わしますが、「逃げないでよ」は7話でも凛が武内Pに向かって言っていた言葉です。
なので、これからも7話の武内Pと今回の卯月が重ねられていることがわかります。
●透明な涙とガラスの靴
だから、凛の本気の問いかけに、遂に卯月も
「私の中のキラキラするもの、何だかわからなくて。このままだったらどうしよう。もし・・・・このまま時間がきちゃったら・・・・怖いよ・・・・。
もし私だけ何にも見つからなかったら、どうしよう・・・・怖いよ・・・・。
プロデューサーさんは私の良いところは笑顔だって・・・・だけど、だけど・・・・っ、笑顔なんて、笑うなんて誰でもできるもん! 何にもない、私には何にも・・・・っ!」
と、ずっと隠し続けていた本当の思い、不安な本心を打ち明けることができました。
その思いが涙となって卯月の目から溢れ出し、その足元で、透明な思いが卯月の革靴の色をした破片のような染みを作っていきます。ガラスのように透明な涙も、零れ落ちることで染みとなり、ガラスの靴の欠片が確かに卯月の足元に転がっている、そんな演出になっていました。
だから、ラストでは、卯月が冒頭で引き返していた「お城=346プロ」の中に入り、通行止めになっている舞踏会へ続く階段を見上げます。
時計の針はずっと十二時のままだったけれど、きっと次回はその針が進み出す、卯月も自分のガラスの靴に気付くことができる!、と信じたところで、
アイドルマスター シンデレラガールズ 2nd SEASON
Special Program「Road to LIVE」
に続きますw
(なので、そんな卯月が観られるのは次々回になるっぽいですw)
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