第24話「Barefoot girl.」
さて、今回はサブタイトル「裸足の女の子」のように、
『魔法が解け、ガラスの靴のない島村卯月が「裸足=ありのままの自分」で、自分には"何もない"かもしれないけれど、それでも自分の可能性を信じて新しい一歩を踏み出した』
OP「Shine!!」の歌詞にあるように、
「この自分の靴で今進んで行ける勇気」
を持つことができた、そんな回になっていました。
●イベント会場と卯月の心
まず、今回、卯月と武内Pはニュージェネレーションズのクリスマスライブに向かう途中、通りかかったイベントホールに立ち寄ります。
そこは13話のラストで、卯月が本田未央や渋谷凛と話していた会場――凛がフラワースタンド届けていた、未央が観にいっていた、卯月がスタッフとして参加していた、高垣楓達の冬のステージがあった場所――でした。
そんな思い出の、卯月の思いが詰まった場所。だから、卯月が武内Pと会場を見て回るのは、(武内Pと)今までの自分の思いを振り返る、自分を見つめ直す、そんな暗示になっています。
だから、二人が入った入り口は薄暗くて、卯月の心が暗く沈んでいることが演出されています。
●1話に描かれていた、約束の場所
そして二人は、陽の光の入る表側の階段を登っていくのですが、この階段は、1話の冒頭で(楓達のライブを観にきていた)未央が登っていた階段です。
更に1話冒頭では、階段を登りきったところで、未央が荷物を運んでいた卯月にぶつかり、よろけた卯月が凛にぶつかって、卯月の「荷物=ガラスの靴」が階段の下に落ちてしまいます。
未央と凛が(21話で)卯月の「ガラスの靴=魔法」を解くきっかけになる、そんなところまで1話の時点で暗示されていました。
そして階下では、武内Pが落ちたガラスの靴を拾い上げ、階段の上で出会っていたニュージェネレーションズの三人を見上げていて・・・・。
その他にも、まず荷物を運ぶ卯月とフラワースタンドを持ってきた凛が出会っていたり、時計塔(十一時二十分頃)のある会場の前を未央が走っていたり。
更に、1話冒頭の(卯月達が目指していた)ステージで歌われていたのが「お願い!シンデレラ」で、その歌詞
『お願い! シンデレラ
夢は夢で終われない
動き始めてる 輝く日のために
(中略)
お願い! シンデレラ
夢は夢で終われない
叶えるよ 星に願いをかけたなら
みつけよう! My Only Star
探し続けていきたい
涙のあとには
また笑って
スマートにね
でも可愛く
進もう!』
はまさに今回の卯月のために書かれたような内容です。
だから、1話の時点で今回の成功、約束の日の訪れが既に確約されていましたw
●卯月の表層意識
話を戻して・・・・卯月と武内Pの二人は陽の光の入る表側の階段を登りきり、二階(?)の廊下からイベントホールに繋がる扉を開けると、
「ステージ、キラキラして、眩しいです」
卯月がこんな感想を漏らします。
ここら辺は卯月が認識できていた表層の思いで、眩しいキラキラしたステージに憧れて、そんな漠然とした思いが「魔法」となって(深く自分を省みることなく)階段を登りきったけど、卯月はステージどころかイベントホールにすら入れていませんでした。
(階段を登りきったのが13話くらいだったのかなと思ってみたり)
単に、その扉を開けて廊下から眩しいステージを眺めているだけ・・・・卯月を動かしていたのは「アイドルへの憧れ」、子供の時にそうなりたいと思った誰かへの憧れ(に後述する武内Pや未央や凛に対する依存が加わったもので)、どこまでも第三者(≒≒ファン)視点で「自分がそうなるんだ」という当事者意識がほとんどありませんでした。
今回、卯月が星の飾りに具体的な願いを書けなかったのも、20話感想で書いたように、1話の公園で凛にアイドルを目指す理由を聞かれ、返答に困った卯月が苦し紛れに楓みたいになりたいと楓の電子看板を指さそうとしたのも、それが上田鈴帆(ファラオ)の看板に変わり力なく指を下ろしたのも、そんな卯月の演出です。
●卯月の深層意識
でも、二人はそこから武内Pのペンライトを頼りに、陽の光の入らない裏側の階段、卯月の深層意識へと入っていきます。
「(私、ずっと『アイドルに、キラキラした何かになれると良いなって思ってて、だから、プロデューサーさんが見つけてくれた時は嬉しかった』です。)なんだか魔法にかかったみたいで、ずーっとこのままだったら良いなって・・・・」
そこで卯月はこんなことを言いますが、この時、階段の隙間から二人を覗くような視点になり、卯月の声が階段に反響し、まるで世界の裂け目から違う世界の自分を見ているような、残響が重なってなんだか違う自分の声を聞いているような、
『魔法にかかり当事者意識のないまま、自分には何もないかもしれないという恐怖に向き合わないまま、夢の中で行動していたような卯月の心が演出されていました』
よって、卯月の「魔法」は22話感想と23話感想で書いたように、
『子供の時に抱いたアイドル(自分ではない誰か)への漠然とした憧れと、武内Pが見つけてくれたからお城まで連れていって貰えるかもしれない、未央や凛と一緒なら"何もない"自分でもアイドルになれるかもしれないという他力本願な願い』
でした。
でも、『自分が』アイドルになり眩しいステージに立つためには、子供の時に憧れた誰かではなく、武内Pでも同じユニットの未央や凛でもなく、『卯月自身に』その輝きがなければなりません。
自分には本当にそんな『何か』があるのだろうか? その恐怖と向き合い乗り越えた者だけがキラキラした眩しいステージに立つことができるのです。
その恐怖を隠してくれていた、誤魔化してくれていた魔法に頼っている限り、いつまで経ってもアイドルになることはできません。依存していた凛や未央、魔法の輝きが強いほど、そのことを突き付けられ、卯月の魔法は解けてしまいました。
「でも、みんながキラキラしてるのに、私だけできてなくて。できないんじゃないかって怖くて・・・・」
卯月のこの台詞にもそんな状況が暗示されています。
(だから、22話感想で書いたように、22話のサブタイトル「星を見るための一番良い場所」はそんな残酷な・・・・でも、アイドル、星になるためには避けて通れない現実を突きつけられた卯月の立ち位置を指していたのだと思います)
しかし、前回の未央や凛に加え、シンデレラプロジェクトのアイドル達に励まされ、武内Pに見守られ、遂に卯月は武内Pにも、
「もう一度、頑張って探して、それで、何もなかったらどうしよう、って・・・・頑張っても、もう駄目なんじゃないかって・・・・自分のこと、怖いんです・・・・」
こんな本当の思いを打ち明けることができたのです。
●今度こそ・・・・!
そして、卯月の思いを知った武内Pは、ペンライトを持つ手に力を込め、今度こそ卯月に自分の言葉を信じてもらえるように、卯月が信じることができるように、
「春に出会った時、私は貴方に、選考理由を質問されました。私は、"笑顔"だと答えました。私は、今、もう一度同じことを質問されても、やはりそう答えます。貴方だけの、"笑顔"だと」
と、精一杯自分の思いを伝えます。更に、
「今、貴方が信じられなくても、私は信じています。貴方の"笑顔"がなければ、ニュージェネレーションズは、『私達は』ここまでこられなかったからです」
武内Pがこう続ける時、最初に1話で初めて会った時の卯月の笑顔が映され、7話の健気に微笑む卯月、1話の公園での卯月の笑顔などが映されます。
1話で武内Pが初めて卯月に会った時、(卯月以外の)問題らしい問題は起きていません。そしてその卯月の笑顔で卯月自身が救われていたりもしていません。なのに『私達』がここまでこられた、その言葉に重ねられる一番最初のシーンが卯月の初めての笑顔なのです。
なら、その卯月の笑顔に救われていたのは武内P以外に考えられません。何人かのアイドル達を辞めさせてしまい立ち止まっていた武内Pが、それでも再起しようとしていた武内Pが、前に進めたのは卯月の笑顔のおかげだったのです。
よって、22話感想でもちょっと書きましたが、武内Pにとっても1話の卯月の笑顔が全ての(再起の)始まりだった・・・・のだと思います。
●島村卯月、頑張りますっ!
「島村さん、選んで下さい。このまま、ここに留まるのか・・・・可能性を信じて、進むのか。どちらを選ぶかは島村さんが、決めて下さい」
だから、武内Pはこう卯月の背中を押して、卯月も遂に自分の意思で前に進みたいと、自分には何もないかもしれないという恐怖に向き合うことができました。
だから、シーンが変わり、卯月を待つ未央と凛のところに卯月がやってきた時、卯月は自分で全ての階段を登りきります。
「あの! 私まだ、まだ怖くて、私だけの笑顔になれるかわからなくて・・・・でも、見て欲しい」
更に、卯月は未央達にこう言って自分から新しい一歩を踏み出します。そして、
「私確かめたいんです! もし、何かあるかもしれないなら・・・・あるかわからないけど、でも・・・・信じたいから! 私もキラキラできるって信じたいから、このままはイヤだから・・・・」
と、子供の時に憧れた誰かでも、武内Pや未央や凛に引っ張られるだけの第三者でもない、『自分自身が』アイドルになれると『信じたい』と・・・・やっと、そう言うことができたのです。
だから、クリスマスライブが始まり、言葉に詰まった卯月が、シンデレラプロジェクトのアイドル達に励まされて言った、
「島村卯月、頑張りますっ!」
は、今までの言葉とは全然別のものでした。
今までは、自分には何もないと自分を信じることができなくて、どんなアイドルになりたいのかもわからなくて、なんのために頑張れば良いのかすらわからず、ただ闇雲に頑張るだけだった卯月。
でも今は、
『自分には何かがあると信じているから、眩しいキラキラしたアイドルになるために、怖くても、不安でも、それでも自分の可能性を信じて頑張りたい!』
そんな決意がこもっていました。
だから、制服に普段履きの靴、そんな「裸足の女の子」でも、卯月の思いがこもった「S(mile)ING!」に、卯月が取り戻した、本当の意味で手に入れた笑顔に、会場は溢れんばかりの歓声に包まれたのでした。
●1話への答え
「私らしさってなんだろう?」
「お姫様にあこがれる」
「普通の女の子」
「信じよう」
「キラキラできるって」
「笑っていよう!!」
また、「S(mile)ING!」が流れる間にこれらの文が映されます。そしてこの文のレイアウトは1話の「お願い!シンデレラ」が流れる間に映された
「私達は夢をみている」
「ガラスの靴をはいて」
「お城へ行く」
「光の中で踊る時が来る事を」
「信じてる!」
「夢は夢で終われない」
「みつけよう」
「私だけの 光」
「さがしつづけていきたい」
これらの文のレイアウトと全く同じです。
よって、1話の時にはまだ探していた答え、自分だけの光、My Only Starをやっと見つけることができた、願いを書くことができなくて凛がボケットにしまってくれた「星=裸足の自分」をやっと輝かせることができた、その輝きを信じよう・・・・笑顔で!
そんな1話の卯月に対する、今の卯月が辿り着けた答えになっていました。
だから、目から熱い思いを零しながらもファンの歓声に、輝く笑顔で
「ありがとうございましたーっ!」
と応える卯月の声が、高く高く、冬の星空に響き渡るのでした・・・・。
といったところで、
アイドルマスター シンデレラガールズ 2nd SEASON
Special Program「Smile History」
に続きますw
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