【物語シリーズ 終物語1話】暦が老倉育を学級会で助けられなかった理由【感想・考察】


終物語 第1話「おうぎフォーミュラ」

さて、終物語1話について見ていく前に、宜しければ

物語シリーズにモブがいない理由、撫子と翼が暦に恋した理由、傷物語が延期された理由

こちの記事をお読み下さい。「僕の解釈する」物語シリーズの主題に触れる話なので、なんだったら今回の記事より余程重要だったりしますw

「化物語」から始まった物語シリーズは『ニンゲン』ではなく『化物=怪異』達の話なので・・・・。

という訳で今回、終物語1話でもモブが全く描かれません。正確には、暦が二年前の自分の教室(一年三組)で行われた学級会の様子を回想するシーンに、縦書きの名前(文字)が並んだ棒人間ならぬ文字人間のようなモブ(クラスメイト)が描かれてはいますけどw
(予想通りではありますが、やはり暦は忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)に往き遭う前から、既に『ニンゲン』を認識できていませんでした)

これは『怪異』に近い暦達が普通の『ニンゲン』を自分達と同じものとして認識できない演出です。

『怪異』は、暦のエセ正義などのように一見信念と呼べそうなものを持っていてそれを曲げることなく生きていますが、そもそもその信念が歪んでいるし、そんな信念を貫くために本来人間の力で頑張るべきところを『怪異』の力に逃げています。

『ニンゲン』はニンゲンで、今回なら鉄条や一年三組の学級会で好き勝手言っていたクラスメイト達のように、信念なんてものより、打算的にその時々でズル賢く集団内を立ち回るので、『人間』ではなく敢えて『ニンゲン』表記にしています。

ただ、今回も暦は育を助けられなかったし、「まよいマイマイ」ではメメの助力がなければ何もできなかったし、傾物語に至っては忍ごとを世界を滅ぼしてしまったと、見るに耐えない有様です。だから、

『ニンゲン』>『怪異』

として描かれているのだろうとは思っています。

そんな訳で、自身の業を貫こうとして『ニンゲン』社会で浮いてしまった『怪異』候補の育を、暦は助けることができませんでした。育の目論見は何であれ、数学のテストで不正を働いた犯人を探し出すという正義があったのに、暦はその追及を諦め、『ニンゲン』達に迎合してしまいました。

更に、『ニンゲン』達が捏造した正しさから育を守りたかったのに、その方法がわからず、結果育を見殺しにして、自身の正義を失ってしまいました。

だから、暦はその時のことをずっと悪夢に見続けているのです。育の業がどんなものだったのかはわかりませんが、とにかく自分の業を貫いた育と、『ニンゲン』達に流され(エセ)正義を諦めてしまった(育を見殺しにしてしまった)暦の姿を、ずっと、ずっと・・・・。

もし暦が諦めなくても結果は同じだったかもしれません。でも結果が問題なのではありません。傾物語では忍を助けようとして忍ごと世界を滅ぼしたのに、

「お前(忍)と一緒に死ねて、あのルートの阿良々木君も、本望だったろうぜ」

と平然と言ってのけた『鬼』の心を持つ暦です。自分のエセ正義さえ貫けていれば後悔なんてなかったはずです。
(まあ、「吸血鬼になる前=忍と会う前」の暦なら、もう少しは『ニンゲン』を気にかけていて、忍に血を吸われ暦の世界から『ニンゲン』の気配が完全に消えた時にはそれなりにショックを受けたはず、と信じたいところですが・・・・)

ただ、もし暦がここで正義を貫けていたとしても、アレな『ニンゲン』のアレな世界で生きていくために、それでもズルをせず『怪異』の力に逃げず、人間の力で戦おうとしない限り、いずれ別の何かがトリガーとなり結局『偽物=怪異=鬼』に成り果て、別の悪夢を見続けることになったのでしょうけど・・・・。

猫物語(黒)で、暦が羽川翼に言った

「(前略)万が一将来幸せになっても無駄だぞ。どれほどハッピーになろうが、昔がダメだった事実は消えちゃくれないんだ。忘れた頃に思い出す。一生夢に見る。僕達は一生悪夢を見続けるんだ! 現実は何も変わらねぇよ」

この台詞にあるように。

なので、この台詞、今回の「おうぎフォーミュラ」を観るまでは、漠然と傷物語のことを指しているのかな〜と思ってましたが、そうではなく育のことを指していたようです。

という訳で、どうしてこんな話になるのか、以降は本編を順に追っていきたいと思います。

●封印された教室の暗示

まず、上記のモブとは逆に、暦が普通に認識できる忍野扇は確実に怪異と関わりのある何者かで、一目見た時から暦もそのことはわかっていました。
(まあ、扇が『本物』って可能性もなくはないですがw)

今回、暦はそんな扇と謎の教室に閉じ込められることになります。

そして、この出ることのできない封印された教室は、二年前の七月十五日の午後六時直前で時間が止まっていて、その時に停止してしまった暦の心、暦が心の中に深く封じ込めてしまった思いの暗示です。

ではその思いとはなんだったのかというと、それは

『(老倉育を助けられなかった、)自分の正義を貫けなかった罪悪感、後悔の念』です。

後に扇が言う「答え」を暦が認識していながら育を見捨ててしまったのか、
はっきり認識できてはいなかったけれど、もっと本気で考えていたら真犯人を特定できていたはず=育を助けられていたはずだと漠然と感じていたのか、

そのどちらなのかは悩ましいところですが・・・・。

だから、化物語以降、暦が目の前の 女の子 誰かを意地でも助けようとするのは、自分のエセ正義を貫こうとするのは、この後悔の念の裏返しなのだと思います。

この思いが故に、暦は「忍=吸血鬼=怪異の王」と行き遭うほどの歪みをその身に抱えてしまいました。

よって、今回、謎の教室の壁、床、天井に絡みつくような緑色は「緑≒植物≒絡まるツタ≒絡みつくしがらみ、罪悪感、後悔」の暗示です。

また、白っぽく色褪せた感じに描かれるシーンが多いのも、暦が意図的に押さえ込もうとして色彩を失くしかけている暦の思いの演出です。

あと、熱すると蒸気になって拡散したり、冷やすと固く凍てついたり、川のように流れたり、湖のように停滞したり、泉のように(心の中に)湧き出してきたり、千変万化な水はそんな移ろう(瑞々しい)心の演出です。

なので、教室の床が水になり暦が水底に沈んでいくようなシーンは、暦が心の中を潜っていって、暗く深く封印していた思いを紐解こうとしている演出となります。

●育とひたぎ

そんなこんなで、謎の教室で、暦による二年前の七月十五日に行われた臨時学級会の回想が始まります。

まず、ここで、老倉育と戦場ヶ原ひたぎの二人だけが普通の姿で描かれるのは、二人が普通の『ニンゲン』ではなく暦と同じ『怪異』に関わりを持つ者だからです。

二年前、臨時学級会のために教室に入った暦が、まずひたぎの姿を確認したのも、クラスの中で育とひたぎだけが同じ人の姿に見えていたからです。

●育の本心

それは育にしても同じで、育にも暦とひたぎだけが同じ人の姿に見えていたはずです。

だから、育が暦を学級会の議長にした本当の理由は、暦が『ニンゲン』ではなく自分と同じ

『下らない『ニンゲン』に迎合することなく自身の業を貫くことのできる、信頼できる仲間だと思っていたから』です。

暦が育の目指す数学で育より優れていることを快く思ってなかった、ライバル視してツンデレな態度を取っていたとしても、育は暦を信頼していました。なんだったら淡い恋心だって含まれていたかもしれません。
(文字人間だらけの中で暦だけが育と同じ人の姿に見えたからという理由以外で、そう思う詳しい理由はまた後で・・・・)

●宇宙と光源

話を戻して、暦の回想が進み、扇が

「ではこれで容疑者が十九人にまで絞られたということですね」

と言う辺りで、教室の窓に輝く宇宙の風景が描かれます。扇に話すことで暦が押さえ込み色彩を失っていたその思いが彩りを取り戻しはじめていることと、でもその思いをどうすれば良いのかわからず、暦が広大な宇宙を彷徨っているように感じていることが演出されています。

また、同時に教室内にはっきりと輝く青い光源と、はっきりしない(映される頻度が少ない)赤い光源が現れます。青いのは暦がはっきり認識している表層の思い。赤いのは、暦が認識していない(押さえ込んでいる?)自らの正義を貫けなかった(育を助けられなかった)自分への憤り、後悔の暗示なのだと思います。

因みに、幸腹グラフィティ8話感想の「照明灯の演出」の段でもこの光源の演出について書いているので、宜しければそちらもご覧下さいw

●暦が『ニンゲン』をやめた日

更に暦の回想を聞いて、学級会で探していた犯人を特定しない限り謎の教室から出ることはできないだろうと言う扇に、暦がその理由を尋ねると、

「案外それを一番気に病んでいるのは阿良々木先輩だから、かもしれませんね。阿良々木先輩の人生はその日一変した訳ですからね。(後略)」

扇はこんな答えを返します。

「まよいマイマイ」の時に暦が言っていた「暦が高校生になって変わってしまった理由=勉強についていけなくなった」なんて出任せではなく、それまで「良い子」だった暦が変わってしまった本当の理由がそこにある、そんなことが匂わされていました。

暦が自分から、意図的に、『ニンゲン』ではなく「正義の味方」になろうとして吸血鬼に襲われた(往き遭った)、『怪異=鬼』になってしまった本当の理由が・・・・。

●『ニンゲン』と『僕達』

更に暦の回想が進み、それを聞いた扇は

「そういう醜い言い争いや、取り留めのない議論、不毛なやり取りの中心に立たされて、阿良々木先輩はすっかり、『ニンゲン』という生き物に嫌気が差してしまったんですね」

こんなことを言いますが・・・・原作ではきっと『ニンゲン』なんて表記になっていないとは思いますが、『暦や扇や翼達=怪異』が言う『ニンゲン』は自分達とは異なる生き物、そんな意味がこめられているので、(読者に対する)意地悪をせず意味通りに書くとこんな表記になるはずです。

恋物語6話感想のコメントでも、撫子や貝木の場合のその辺りの話を書いているので、宜しければご覧下さい。

ただ、そのコメント内で、

「二人(撫子、貝木)とも自分が人間だなんて欠片も実感できてなくて、それでも少しでも人間の近くにいたくて、人間達の輪の淵で羨ましそうに輪の方を見てるんです」

なんてことを書いていましたが、それについては今回の話を観て、後述するようにちょっと解釈が変わっています。

話を戻して、そんな扇の問いかけに長考したあと、暦は

「・・・・・・・・違うよ。扇ちゃん、僕が絶望したのは議論じゃなくて、結論なんだ。

(『僕達(=暦と育)』は正しい議論をしているって感覚が、どっかにあったんだよ)

あんなことになるなんて誰も思ってなかった。正しさを追及したつもりで、『僕達』は決定的に間違ってしまった。その瞬間僕は己の正義を見失ったんだ」

こんな風に扇の意見を否定します。ボッチの暦は『ニンゲン』を仲間だなんて思ってないので、『僕達』に含まれるのは育(とひたぎ)だけなのだと思います。

だから、『ニンゲン』の感覚としては、ウザい、うるさい、仕切り屋の育ですが、

『譲れないもののために、『ニンゲン』集団から疎まれようと自分の業を貫いた育は、例え暦を毛嫌いしていようと、この時点では暦が自分と同じ姿に見ることのできた数少ない仲間でした』

●何になったのだろう?

そして暦の回想も終盤に差しかかり、扇が

「密室の中、二時間以上議論を続け、みんなの精神も限界でしょう。その限界の中、貴方がたはどういう結論を出したのでしょう。貴方がたは何に至ったのでしょう。(中略)みんなみんな目一杯、幸せになったら良いなぁ」

こんなことを言うと、

(幸せになれなかったことは確かだが、だとしたら僕達はあのとき、いったい何になったのだろう?)

暦はこんなことを考えます。

結論から言うと、あのとき、暦は『怪異』になり(『ニンゲン』に絶望し迎合することをやめ)、育は『ニンゲン』となり、『ニンゲン』の中では生き辛い、正しくても苦しいだけの異端、『怪異』候補として生きるのをやめました。

どうして育が二年前の時点で既に『ニンゲン』になっていたと言えるのかはまた後で。

●育の本心

扇の指摘通り、暦の回想の中では、一向に終わりの見えない犯人探しに学級会は紛糾し、混乱し、収拾がつかなくなります。

だから、暦は不正を働いた犯人を探すという(暦のエセ正義よりも正しい本来的な)正義より、好き勝手に不満をぶちまける『ニンゲン』達に流され、正義の追及を諦めてしまいました。

そして(育が心の中では誰より認め頼りにした)暦は、

「(前略)勘弁してくれ老倉。手に負えねぇ。『これ以上酷いこと』になる前に終わろうぜ」

育にこう言ってしまいました。

「なに弱音吐いてるの。私より良い点取ってる奴が諦める気?」
「ああ、諦めるんだよ、無理だって」

更にこう食い下がる育にも、

「・・・・犯人を特定するまで、誰も帰さないわ」
「そんなことできる訳ないだろう。下校のチャイムが鳴ったらみんな家に帰るんだよ。お前だってちゃんとわかってるんだろう」

それでも諦めず思いを貫こうとした、一緒に業を貫いて欲しいと暦にすがろうとした育にも、暦はこう言って、育を見捨ててしまいました。

だから、心の中では誰より認めていた暦に匙を投げられ、その絶望に半ば自暴自棄になった育は、最後の、最悪の手段に打って出てしまいます。

その表情を見て暦も育のそんな気持ちを悟ったはずです。

(忘れていた。僕がどれだけ老倉に嫌われているか)

なのにこんなことを言うなんて・・・・「まよいマイマイ」でも、高校になって暦が変わったのは勉強についていけなかったから、なんて嘘を吐いていたし、阿良々木君も貝木みたいな詐欺師だったようで悲しい限りですよw

「私はお前が嫌いだ」

そして、育は最後にこんな精一杯のツンデレ台詞を吐き出すと、会議の結論を出すために、己の業を貫くために、自ら教卓に立ち多数決を、最悪の解決法を提示してしまうのでした・・・・。

ここら辺が上の方で、育がなんだったら淡い恋心を抱くほど暦を信じていたと解釈した理由です。

●阿良々木君の阿は・・・・

そして暦は、多数決で犯人に仕立て上げられてしまった育を見て、

(あの時見た老倉の、絶望した顔が、僕は忘れられない・・・・僕はその絶望に、多分、巻き込まれたのだ。(後略))

こんな思いを漏らします。

でも、嘘なのか、暦が表層意識では本当にそう思っているのかわかりませんが、とにかくこれが真実ではありません。

暦の絶望は、暦がずっと悪夢に見ている後悔は、暦から正義を諦めようと育に言ってしまったことと、そのせいで犯人に仕立て上げられた育を助けるために行動することができなかったことなのだから・・・・。

アレな『ニンゲン』的には早く(汚れた)大人になりなさいと諦め気味にうそぶく訳ですが、エセ正義の味方である阿良々木君はこのことを悪夢に見続けるのでしょう。

・・・・まあ、『ニンゲン』的には、いくら可愛い育の顔でも、あんな表情を悪夢でリピートされ続けたら・・・・なんて思う訳ですが、暦が育のことをどこまで夢に見ているかは微妙です・・・・。

暦にとっては、あくまで自分の正義を貫けなかったことが問題なので・・・・でも、暦が『ニンゲン』になる前の育の顔を、暦に失望したあの表情を、少しでも悪夢に見られていたら良いな・・・・。

話を戻して、だから、その後の暦は出くわした事件に関係する『ニンゲン』の多い少ないなんて全く眼中にありません。傾物語のように例え世界が滅んでも、忍を助けようとする、自分の正義を貫く、その方が遥かに大切なことなので。

阿良々木の阿は阿修羅の阿!w

まさに『鬼』と呼ぶに相応しい正義の味方に成り下がった訳です、『ニンゲン』視点では。

●断言、ですか

扇はそんな暦と

「そんなに背負うことありますかねぇ? 元々言われてたじゃないですか。老倉先輩は最有力の容疑者だって」
「あの学級会は誰に言われたものでもなく、彼女が自ら立ち上げた会なんだ。もしも老倉が本当に犯人だったなら、そんな会を開く必要はなかった。その一事を取り上げても、老倉が犯人でないって断言できるんだ」

こんな会話を交わします。でも、暦が普通に認識できていた時点で育が『ニンゲン』を巻き込んで何かしようと思う訳がないんですよね。
(物珍しさが失せた後でも、貴方は棒人間ならぬ文字人間に、いつまでも興味を向け続けられるでしょうか?)

暦が『ニンゲン』との関係性を気にしていれば冤罪に陥れるとか色々ありますが、暦は元々学級会の連絡を誰からも貰えないほどボッチな訳ですし。

なので、暦から見て育が人の姿形に見えた時点で、育が犯人ではないと『断言』できるのは当然なのですが・・・・。

「ふふん、なるほど〜、断言、ですか」

扇がこう言った時の暦のリアクションが、なんと言うか、アレなので、後述するようにやっぱり「鉄条のこと」をわかってて育を見殺しにしてしまったのかな〜、と思ってみたり・・・・。

●鬼の始まり

「ともあれ、正しさが捏造される現場を目の当たりにして、馬鹿な結論が決まってしまう現場を目撃して、僕はどうしようもなくなっちまったんだ。(中略)僕は、あんな怖い瞬間を見たことがない。あの時僕は見失った。いや、見失ったのではなく、失ったのだ。僕はあの時まで、正しさみたいなものを信じていた。(後略)」

その後、暦はこんなことを言って、そんなアレな『ニンゲン』の中で、それでも人間として生きていく『本物』を諦めてしまった、『偽物』の『怪異』の力に逃げてしまった、そんな暦の『鬼』としての始まりが暗示されていました。

「友達はいらない。人間強度が下がるから」

そして暦はこんな結論に辿り着く訳ですが、(今回の最初の方の扇の台詞より)翼のおかげで『ニンゲン』の友達はいらないけど、『怪異』の友達は別だというところまでは改善されているようです。

山ごもりして自給自足の生活でもしない限り、現代日本で『ニンゲン』の世俗の垢にまみれず生きていくなんて不可能ですし。こんなことを望めば吸血鬼に成り下がりその力で自滅しかけるのも当然でしょう。

●鉄条は英雄?

その後、扇の解答編があり、翌日、暦が教室に向かう前に色んなことを独白し、一年三組の元担任・鉄条径が産休に入ったことが語られます。

育の人生、少なくとも高校生活を滅茶苦茶にしておいてこの結末な訳ですが・・・・

まず、全てが扇(暦)の推理であり、鉄条が本当に犯人だという物的証拠は存在しません。状況証拠でそんなことができたのは鉄条だけ、なんてのは本来何の証拠にもなり得ません。

真犯人を全力で探したけど見つからないから真犯人は存在しない、そんな主張が許されるのは全知全能な神だけです。そうでない人間が見つけられないのは、単に真犯人の方が上手で探した方が無能だからという反論を否定できません。

状況的にその犯行を行えたのは貴方だけだと、真犯人の影すら捉えることのできない無能な当局に冤罪容疑で逮捕されても文句はない、なんて奇特な方はいないはずです。
(まあ、この作品内では鉄条が犯人で間違いないんでしょうけどw)

だから、暦が鉄条を告発したとしても、鉄条が認めなければ、学級会は暦が育に言っていた『これ以上酷いこと=更なる混迷』に突き進みいよいよ収集がつかなくなっていたはずです。

暦が(、もしかしたら育も)学級会で最後まで鉄条の話を持ち出さなかった(正義の追及を諦めた、育を見捨てるしかなかった)のはこのため・・・・だったのだと思います。

次に、この物語シリーズの世界が(ひたぎの家庭を食いものにした悪徳宗教団体が平気で存続し、何の落ち度もない真宵が交通事故で死に、児童虐待をする翼の両親が平然と暮らしていた)アレな現実準拠な世界であることより、あの程度のことをしつつのうのうと暮らしている奴らは星の数ほど存在します。悲しいかなこれが現実です。

上の方で、

「二人(撫子、貝木)とも自分が人間だなんて欠片も実感できてなくて、それでも少しでも人間の近くにいたくて、人間達の輪の淵で羨ましそうに輪の方を見てるんです」

の解釈が変わったと書きましたが、暦達にしてもこんなアレな『ニンゲン』社会は願い下げなのだと思います。傾物語で『ニンゲン』の世界を滅ぼしてなんの後悔も抱かなかったくらいに。まあ、『ニンゲン』視点では『偽物』の癖に、って感じですが・・・・w

だから、そんな中でも『ニンゲン』との繋がりを願った撫子はあっち側の中では一番こっち側だったんだなと思ってみたり・・・・なので、やっぱり千石撫子は怪異可愛い!w

話を戻して、更に、鉄条のせい(おかげ)で育は暦のように本格的にこじらせる前に『ニンゲン』になることができました。高校の二年間は貴重ですが、今後『ニンゲン』の世界で生きていくための授業料だと考えれば安いものです・・・・かなり底辺であろう、こじらせてしまった暦達と比べれば、ですが。

それに『ニンゲン』視点では、鉄条は暦のように世界を滅ぼしかねない育の『怪異』の芽を早期に摘んだとも言えます。ある意味世界を救った英雄と言えなくもありません。まあ、育がどのレベルでヤバい怪異候補だったかにもよりますけど・・・・。

こんな感じで「おうぎフォーミュラ」(というか物語シリーズ)は『ニンゲン』について考えさせるためのエピソードが散りばめられた、結構文学的な内容になっています。

だから、鉄条がのうのうと産休に入ったのもこんな意図によるものです。

●育はもう・・・・

その後、暦が教室に入ろうとすると、中から翼が出てきてそれを阻みます。そして翼は

「阿良々木君、うちのクラスに空席が一つあるの気付いてた?」

こんなことを聞いてきます。暦は翼の豊満な胸をチラ見しつつ ガハラさんこっちです!w 、そこに幽霊でも座ってたのか? なんて軽口を叩きますが、

「座ってたのは幽霊じゃなくて『ニンゲン』だよ」

翼は意味ありげに、こう答えます。きっと原作では普通に"人間"表記なんでしょうけど、もう『ニンゲン』と書かざるを得ないほど意味深です(丁度この部分にエコーの演出まで入っていましたし)。

そして翼は暦に、そこに座ってた『ニンゲン』こそ、ずっと学校を休んでいた「老倉 育」だと告げるのでした。

でも、暦が『鬼』になる間接的な原因だったほど深い関わりがある相手なのに、それを忘れていた、どころか同じクラスになっていたことすら認識していなかった、なんて、酷い話だと思わないでしょうか?

むしろそんなことがあり得るのか? って感じですが・・・・答えは勿論、あり得ます。

何せ、『怪異』モドキだった二年前ですら文字人間にしか見えなかったのです、今の暦達にとっては『ニンゲン』なんて幽霊と同じ、描かれないモブ、姿すら認識できない何かでしかありません。

上の方で、二年前のあの日に育が『怪異』をやめて『ニンゲン』になったと書いたのは、この二人の会話と、扇の

「(学級会≒育のことを)忘れた日なんて一日もないけれど、考えた日は一日もない」

などの台詞があったからです。

だから、暦が絶望したのは、あの日、育を『ニンゲン』にしてしまったからではありません。暦の正義を貫くことができなかった、暦の正義を失ってしまったから、なのです。

●ED考察

そしてEDが始まる訳ですが、

暦達が『偽物』な理由、貝木がひたぎを助けられなかった理由

の記事でも書いたように、「化物語」から物語シリーズのEDは線画っぽい、鉛筆画っぽい、減色された、そんなタッチになっています。

これも暦達が『ニンゲン』の世界に重なりつつもその世界に溶け込めない、視聴者(『ニンゲン』)が見ている世界と違う、色褪せた儚い存在感が希薄な世界に生きていることの演出です。

という訳で、そんな暦が、阿修羅の、鬼の暦が、どんな終わり、結末に向かっていくのか、楽しみにしながら、終物語2話感想に続きますw


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2015年10月08日 03:07 by 元会長
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終物語 TokyoMX(10/03)#01新
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