さて、2話に出てきた「モンティホール問題」の(元となったTV番組に出場する挑戦者の)最重要目的とはなんでしょうか? 確率統計的に最も良い選択を導くことでしょうか? 勿論違います。挑戦者の最大の目的は、
『景品である新車を手に入れること』です。
モンティホール問題を確率統計的にどうこうと小利口に解こうが、新車を当てられなければ何の意味もありません。
だから五年前、老倉育が出したリドルの答えも数学なんてものとは全く関係ありませんでした。その答えは、モンティホール問題でいう新車は
『育のSOSに気付きDVから助け出すこと』
だったのだから。
●二年前の育の本当の目的
よって、終物語1話で取り上げられた二年前の学級会も、犯人が鉄条径である、なんて下らない答えはどうでも良かったのです。
阿良々木暦が、エセ正義の味方の『怪異』モドキが、クラスのトラブルで引きこもってしまった育を心配し、その家を訪ねていたら、育の家庭の惨状を知り、誰かにSOSを発することができたはずです。
だから育の本当の目的は、
『暦の同情を引き、暦が育の家にやって来るよう仕向けること』
でした。
だとすると、二年前の真相はまだまだ深い闇の中に隠れている・・・・気がします。
●これまでの諸々がw
何故かというと、まず、これまでを振り返って物語シリーズが非常に意地悪な作りになっているからです。なので、登場人物達が素直に真相を話している訳がありませんw
(終物語2話感想で書いたように、羽川翼の「人間」発言とか本当に意地悪です)
次にサブタイより育の力がリドルなら、そこには何かしら『怪異』的な要素があるはずです。しかし、上記の解釈だと育のリドルは普通のニンゲンが普通に出せる範囲のもので、まだ『怪異』的な何かが隠されているに違いないのです!(疑心暗鬼)w
●鉄条も被害者?
よって、そんな視点でこれまでを振り返ってみると・・・・
まず、二年前、育が学級会以前に、数学の勉強会を開いた本当の理由は、
『学級会を開く口実を作るため=鉄条に不正が可能になる場を提供し不正へ誘導する(誘惑する)ため』
でした(誘惑されたからって不正に手を染める時点で『ニンゲン』な訳ですが、鉄条もある意味被害者と言えば被害者なのかもしれません)。
なら、五年前のDVも育が意図的に親を誘導していた可能性が出てきます。
そして、これらを育ではなく育に願われた何かしらの『怪異』が引き起こしていたとすれば・・・・。
(まあ、翼のように完全に人格が分かれてなければ結局はその『怪異=育』となる訳ですけどw)
ただ、それでも育が『何を願ったのか』がまだわかりません・・・・暦と仲良くなりたかった、なんて願いではないことを祈りたいところですが・・・・怪異系女子のみなさんは揃って男の趣味が悪いですからねw
●暦は嘘吐き
何せ、二年前も五年前も、暦は今回までに明かされた程度の内容なら、ほとんど全てを察していました。全てをわかった上で、
『"正しい"解決方法がわからないから』
なんて下らない理由で育を見捨てているのです、多分。
(二年前に関しては、鉄条を告発しても問題が解決できない理由を終物語1話感想で書いています)
どうしてそう考えられるのかというと、終物語1話感想で書いたように、猫物語(黒)で暦が羽川翼に言った言葉、
「(前略)万が一将来幸せになっても無駄だぞ。どれほどハッピーになろうが、昔がダメだった事実は消えちゃくれないんだ。忘れた頃に思い出す。一生夢に見る。僕達は一生悪夢を見続けるんだ! 現実は何も変わらねぇよ」
より、暦が育を見捨てた(助けられなかった)後悔から悪夢を見続けていることが明白だからです。
その後悔が、暦を『怪異の王である吸血鬼』に往き遭わせるほど深く、暗く、どうしようもないくらい歪めてしまいました。
(まあ、翼が普通に認識できる阿良々木母、『怪異』の親に育てられ、元々かなり手遅れな感じだったのでしょうけど)
だから、忍野扇が繰り返し言っている
「私は何も知りませんよ。貴方が知っているんです、阿良々木先輩」
の言葉通りなんですよね。
終物語2話感想で書いたように、扇は「その力=フォーミュラ」で暦が自分の心の闇を認められるよう手助けをしてくれています。
なのに、それでも暦は、今初めて気付いたような白々しさで
「いや、ちょっと待てよ。家庭崩壊、暴力を伴う家庭崩壊の解決なんて、荷が重すぎるだろ。中学一年生に何を期待してたんだ、あいつは」
などの自己弁護を重ね、自分の後悔に向き合うことなく隠し続けているのです。
今回、育の家で一通りの謎を解いた後、扇がわざわざ
「(前略)つきましてはそろそろ撤退を計るべき頃合だと考えますけれど、最後に一言、何かありましたらどうぞ・・・・締めの一言を」
と、暦に発言を促したのもそのためです。本当にそれで良いのかと・・・・。
だから、その後の二人の会話は茶番もいいところなんですよね。
●あの夏で出来ていた
そんなアレな阿良々木君ですが、一応、上記した鉄条や育の親と同じく、育のリドルの被害者、と言えなくもない可能性が残っています。
(元からアレな阿良々木君なので、その可能性は極めて低いと思いますけど)
まあ、そうでなくても、育が『怪異』の力に逃げず、ズルをせず、自分の問題に立ち向かえていたら、素直に「助けて」と言えていれば、こうはなっていなかった・・・・可能性があり、その場合は阿良々木君のカルマがいくらか減るかもしれません。
あと、偽物のトチ狂った『鬼』が自分勝手に動いたら、傾物語のような惨状を引き起こすのが関の山です。だから『ニンゲン』は自分の無能さを認めて、自分の分を弁えて何もしない・・・・なんて言い訳をする訳です。
よって、それらを踏まえた上で、阿良々木君の
「(前略)阿良々木少年は概ね、その後も正しさを求める姿勢を貫いたけれど、そのせいで時に暴走し、とんだしっぺ返しを食らうこともあったけれど、数学に限ってだけ言えば、彼は面白さを求めていたということだ。
その拠りどころがなければあの学級会の際、正しさを打ち砕かれた後に、彼の心にはきっと、何も残らなかったことだろう。あの子が数学の面白さを、人生の面白さを、世界の面白さを教えてくれたから、今の僕がある。
僕はあの夏で出来ていた」
この独白を見てみると非常に悩ましいんですよね。
五年前、阿良々木君が本当に数学の成績で悩んでいたのか怪しいところですが、とにかく
『五年前、暦の心を救ったのは、育の「リドル=怪異の力=偽物=正しくない行い」でした』
上で書いたように、阿良々木君は五年前の状況をほとんど把握していた=育が裏のある、本来正しいとは言えない思いから阿良々木君に近付いたことを察していたはずです。
でも、そんな育と(人生)勉強することで、阿良々木少年は知りました。
『正しくなくても誰かを救うことができる、正しさだけが全てじゃない』、と。
だから、阿良々木君は二年前の学級会以降「正しさ」を諦めても、吸血鬼に成り下がっても、それでも、がむしゃらに間違い続けているのです。
正しくなくても、間違っていても誰かを救えることがあると、あの夏、育が教えてくれたから・・・・。
「僕はあの夏で出来ていた」の本当の意味は、大体こんな感じだと思います、多分w
実際、
暦達が『偽物』な理由、貝木がひたぎを助けられなかった理由
でも書きましたが、阿良々木君より遥かに『本物』に近い貝木では救えなかった戦場ヶ原ひたぎを、暦が、何の役にも立たないが故に助けられることもあるのです。
そんな風に、暦が間違えたから、戦場ヶ原ひたぎが、羽川翼が、阿良々木月火が救われました。
因みに、原作「まよいマイマイ」の最初の方で、ひたぎと暦が交わした会話、
「改めて、お礼を言わせてもらおうと思って」
「・・・・・・ああ。いや、お礼だなんて、そんなの、別にいいよ。考えてみたら、僕、何の役にも立ってないしな」
「そうね。ゴミの役にも立たなかったわ」
に、ひたぎの、貝木と暦に対する複雑な思いが隠されているという意地悪っぷりですよw
そんな訳で、『ニンゲン』と『鬼』のどっちがマシかっていう非常に悩ましい話になるのですが・・・・そこら辺は物語的余白なので、視聴者一人一人が好きに解釈すれば良いんじゃないでしょうかw
といったところで、
終物語 第4話「そだちリドル 其ノ參」
に続きますw
スポンサード リンク
スポンサード リンク