さて、今回はまず「するがモンキー」のおさらいをして、神原駿河がどんなキャラクターなのかを見ていきたいと思います。
●駿河の心の闇
まず、心の闇を抱える『怪異モドキ』がその闇に飲み込まれると『怪異』になり、その闇に打ち勝つことで『怪異』から『怪異モドキ』に戻ります。
だから、重要なのは『心の在り方』であり、左手を切断したところで、そんなものが治療になるはずがありません。
勿論、駿河の心の闇が「過剰な自己愛」などなら別ですが。しかし、それなら、駿河が自分から「阿良々木君のために左手を斬り落とす」と言えた時点で心の闇を克服できているはずです。
よって、駿河の心の闇は「過剰な自己愛」などではありませんでした。
しかし、あの忍野メメが全く関係のない話をいきなり振るとも思えません。なら、「左手を斬り落とすかどうか」の質問にどんな意味があったのでしょう? それは、
『大切なものを切り捨てずに持ち続けることができるかどうかのテスト』
・・・・だったのだと思います。
つまり、あの時、駿河が泣き喚いて「左手が惜しい、何とかして助けて下さい」と懇願できていたら、きっと駿河は自分で勝手に助かることができていた・・・・気がします。
しかし、誰であろうと、本当は大切なものを手放したくはないでしょう。だから駿河は「猿の手」のような言い訳を作って、それを切り捨ててきました。
(悪魔にまで逃げるのを思い止まれた時でも、ひたぎがそう望んだから、ひたぎのためにもう会わない、とか)
「人間一人殺そうとしてんだぜ。それ(左手)くらい当然の代償じゃないのかい?」
よって、メメがこう言ったのは、正論だったからでも何でもありません。反論できない言い訳を示し、駿河を追い詰めるためだったのです。きっと、これまで駿河はそういった言い訳を作っては大切なものを切り捨て続けてきたから。
だから、もしここで、それでも大切な左手を失くしたくないと駿河が言えていれば・・・・。
こんな風に、普通は人格者と思われるような行動を心の闇に置き換えているんだから、本当に物語シリーズは意地悪なんですよね・・・・w
●駿河はガチ!w
すると、駿河が悪魔の手に逃げてまで切り捨てようとしていたものは「阿良々木君への恋心」・・・・としたいところですが、ここは意外にも表の流れ通り
『ひたぎへの恋心』
だったのだと思いますw
ひたぎの恋人を殺してしまったのだから、ひたぎに憎まれ拒絶されても仕方ない、と思うために・・・・。
(なので表の理由は当然「猿の手」などと同じ言い訳です)
何故かと言うと、化物語8話の最後で、駿河がひたぎに
「私は、戦場ヶ原先輩が好きです」
と『涙ながらに』言っているからです。
もし駿河が、阿良々木君への恋心を切り捨てようとしていたなら、
「私は、阿良々木先輩が好きです、私から取り上げないで下さい」
と言わなくてはなりません。
なので駿河は本当にレズっ子の百合少女でしたw
●・・・・
あと『涙ながらに』はかなり重要な描写だと思っています。ひたぎ(化物語2話)、駿河(ここ)、翼(猫物語(白))、真宵(化物語5話、鬼物語)と、みんな『涙』と一緒に思いを取り戻しているからです。
熱く沸騰したり、凍てついて固まったり、川のように流れたり、湖のように停滞したり、千変万化な瑞々しい水は、移ろう瑞々しい心の演出です。
だから、まさに『涙』は心を取り戻した演出にはぴったりな感じ・・・・なのですが、そうすると作中で泣いてないキャラがまだ残っているんですよね・・・・誰とは言いませんけど。
そう言えば、「するがモンキー」のラストで阿良々木君の
「戦場ヶ原ひたぎがどれだけ強欲で、諦めの悪い女なのかということくらい、僕はとっくに知っていたはずなのに。それが本当に大事なものだったなら。(中略)全くもってどいつもこいつも本当に捻くれてるよなぁ・・・・」
こんなナレーションが流れる訳ですが、
「強欲で、諦めの悪い」
とか、本当に上記した「大切なものを切り捨ててきた駿河が取り戻した思い」にドンピシャですよね。愚か者で察しが悪くて、だから答えがわからなくて愚行をしてしまう、なんて言い訳を醸し出している阿良々木君にしてはあり得ない鋭さです。
だからこんな台詞はひたぎに
「私がどれだけ強欲で、諦めの悪い女か知らなかったの、阿良々木君?」
とか言わせれば良いんですよね。なのに、敢えて裏の真相に繋がることを阿良々木君に言わせているのです。
だって、普通に観た時、この阿良々木君の台詞に凄い違和感がなかったでしょうか? 高校一年の時には駿河を振っていて、「するがモンキー」の時点で阿良々木君と駿河の間に何かしらが起こっているのは明白だったのに、メメに呼ばれるまで関わろうともしなかったひたぎのことを、いきなり「強欲」なんて言っても「???」なんですよね。いや、普通に駿河のこと切り捨てようとしてなかったですか? って感じでw
(勿論ひたぎ(とメメ)は、全てを察した上で、『他人を拒絶して、自分からは決して「助けて」と言えない阿良々木君が"自分から"ひたぎ(やメメ)に助けを求めるのをずっと待っていた』訳ですが。
他人が差し伸べてくれた手を掴むことはできても、自分からは決して「助けて」と他人に手を伸ばさない阿良々木君が助けを求めるのをずっと・・・・。
だから「つばさキャット」のラストで、あれだけのことをしてやっと、阿良々木君は普通の涙ではなく『血の涙』を流し、ほぼ自分に等しい『怪異』にだけは「助けて」と言えた訳ですが・・・・なら、『怪異モドキ』の仲間に対してもいつかはきっと・・・・と解釈したいのは山々なのですが・・・・・もうもうもう、なんですよねw)
だから、駿河の真相を知っていないと「強欲」なんて言葉が出てくる訳がないのです。
しかも、最後に「(阿良々木君も含めて)どいつもこいつも本当に捻くれてるよなぁ」なんてものを差し込んで、曖昧にそれを誤魔化す辺り、本当にもう、何ていうかね、もうもうもう、なんですよw
『怪異モドキ』のみなさんは総じてスペックが高いですし、その他にも探せば探すだけ、そうとしか思えない描写がゴロゴロしてるんですよね・・・・。
●ナイスプレイ!w
そんな訳で、今回、駿河が出会い頭に、阿良々木君に本気の膝蹴りをかました理由は、愛しい愛しいひたぎと恋人になっている憎い憎い阿良々木君に対する八つ当たり・・・・だったのだと思います。が、それでも、ナイスプレイだったと言わざるを得ませんw
・・・・極力主人公を悪く言わないように頑張っているのですが、化物語を観直したら探さなくても色々と目に付いて、もうもうもう、なんですよね、本当にw
といったところで、
終物語 第7話「しのぶメイル 其ノ貳」
に続きますw
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