さて、ニコニコチャンネルの公式ページ様の、
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”別れ”をめぐる、4つのオム二バス。
すこしだけ切ない、大人の紙芝居
大切な誰か、なにかとの「別れ」や「旅立ち」と、「その先」をテーマに描く。甘酸っぱい後悔やどうしようもなかった出来事、そしてその先にある“いま”をそっと肯定し、慰め、また前へ進むための物語。
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より、作品のテーマはこんな感じになっているようです。
なので、今回はこれを頭の端に入れながら、本編を追っていきたいと思いますw
●吾妻の回想
冒頭は、(おそらく)吾妻が夫と知り合った頃、初めてポモドーロの作り方を教えてもらった時の回想になっています。
この時「夫の手元しか映されない=吾妻が夫の手元しか見ていない」のは、吾妻が恋愛絡みではなく最初は料理への興味で夫と話していたことの演出です。
それは後の吾妻の独白、
「私もかつて、貴方(=吾妻に憧れて弟子入りした名木)みたいだった」
「今ならわかる。勝手に憧れる身勝手さも、貴方と同じステージに立とうとしない卑怯さも」
などにも表れています。
だから、ただ夫に憧れていた、幸せだった頃の記憶なので、回想シーンはBGMも画面の色彩も明るい感じの演出になっていました。
●吾妻が回想した理由
でも、回想が終わると、吾妻が薄暗いテーブルに一人で座っている姿が映されます。吾妻の店で働いていた名木との別れが迫り、感傷的になっていることの演出です。
逆に、吾妻の背後の厨房は照明で明るく照らされていて、今も昔も料理は楽しいことと、名木を弟子として可愛く思っていることが演出されていました。
ただ、ポモドーロを作る名木と夫が重なって一見ポジティブな感じですが、そこには『別れ』という共通点があり、吾妻がそんな回想をしたのはやっぱり感傷的になっている部分が大きいのだと思います。
●紙芝居演出の意味
そして(おそらく)それは名木の方も同様で、そんな風に『別れ』に際し、どこかぎこちなくなっている二人の挙動が、中割りの少ない紙芝居演出で演出されていました。
●吾妻が見てるもの
その後、名木はミラノに行く理由を
「(吾妻のポモドーロの味に辿り着くためには)吾妻さんじゃなくて、吾妻さんが、見てるものを見なきゃいけないんだって。
明後日からのミラノの二年間で俺も吾妻さんみたいに、遠くを見れるような料理人になって帰って来ます」
こう語る訳ですが、では、『吾妻の見ているもの』とは何なのでしょうか? それは、
『冒頭の回想の時のような夫の料理への憧れ=夫を追い詰めてしまった後悔=夫に本場の料理修業で成功して欲しかった思い(かつて憧れた夫の料理ならそれができていたはずだという思い)=夫が諦めたなら代わりに吾妻がそれを作ってあげたいという密かな願い』
なのだと思います。
どうしてそんな話になるのかというと・・・・
「私もかつて、貴方(名木)みたいだった・・・・・・・・。
今ならわかる。勝手に憧れる身勝手さも、貴方と同じステージに立とうとしない卑怯さも。
憧れられる妙な罪悪感も、こそばゆさも。
責任も・・・・断絶も」
これらの吾妻の独白より、吾妻が『わかる』と言っている「罪悪感、責任、断絶」は名木には全く当てはまりません。よって、吾妻が『わかる』と言っているのは、かつて吾妻と別れて外国修行に行った夫の気持ちなのです。
名木に買いかぶられ、勝手に憧れられ、奇妙な罪悪感とこそばゆさを覚え、名木をちゃんと育てなくてはという責任と、それが重くて断絶したくなる思い・・・・。
吾妻は、それらが全て、かつて吾妻が夫を追い詰め、外国修行に行かせてしまった思いだったのだと、名木のおかげで知ることができたのです。
●夫のトランクの意味
でも、そんな苦い思いの滲む吾妻のポモドーロですが、名木は美味しいと言ってくれました。吾妻本人にとっては苦い思い出ですが、それが料理の味に深みを与えていたのです。
しかも名木は、そんな思いを知るために≒吾妻の思いを受け継ぐために、ミラノに行く決心までしています。
なら、吾妻が夫に憧れたせいで夫はシェフを辞めてしまったけど、吾妻が夫に料理を習った、その料理を受け継いだことは無駄ではなかったのです。
だから吾妻は夫のトランクを名木に託しました。夫は挫折してしまったけれど、それは吾妻の思いから逃げ出すためでもあったのだけれど、それでも外国修行(かつての夫の思い)を成し遂げさせてあげたかったから。
●塗り替えられた思い
しかも、そんなトランクを手に旅立つ名木は、朝日に白む空を背に、
「吾妻さん! 日本に戻ったら俺のポモドーロと吾妻さんの、どっちが美味いか勝負しましょう!」
と吾妻に約束していきました。
吾妻と夫の時は、断絶になってしまった外国修行ですが、名木はその繋がりを絶つためではなく強化するためだと明言していったのです。
吾妻と夫の苦い思い出を上書きして・・・・まあ、まだ夫のように挫折しないとは限りませんが、それでも今の時点でもう何割かはそんな新しい思いに上書きされたはずです。
吾妻がここら辺のことをどこまで認識できているかはわかりませんが、それでも、なんとなくだったとしても、直感的にこれらのことを感じ取り、名木の言葉に救われた気がして目から熱い思いを溢れさせたのだと思います。
そんな訳で、切なくも幸せな別れ、旅立ちにホロリとしたところで、
旅街レイトショー 2夜「トランジスタ・スマートフォン」
に続きますw
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