冒頭、おそらく「僕」である猫の夢の世界。青い空の下に広がる猫じゃらしの原っぱを早足に風が通りすぎて行く。
本来そこが猫の暮らす世界だから、人の作った人工物の部屋なんてイメージできないのでしょう。でも、吹きぬける風に「彼女」の気配と匂いを感じる。
眠っていても、飼い主の「彼女」と「友人」の話し声が無意識に聞こえてきたから。
そして僕は、彼女の声に混じるきまりの悪さから僕を探していることを感じて目を覚ます。
よって、夢の中で聞いた彼女の
「長い間、ありがとうね」
という台詞は、彼女が友人に向けて言ったもので、
「そんな、こっちこそごめんね。先に出ていくなんて。
(中略)
一年半か〜。なんかあっという間だったね」
という友人の返しに繋がっていきました。僕の眠る部屋の出口でまごつく二人の会話に。
●どうして二人は・・・・?
じゃあ、どうして彼女は僕を探していたのか? それは勿論、
『一年半一緒に暮らしても彼女と友人は打ち解けることができなかった』
からです。
だから、僕が近づくまで、二人の会話は「つい立てを挟んで≒心の壁に阻まれて」、しかも「顔≒表情≒心」を隠して、上辺の空々しいものであることが演出されていました。
それは清楚で地味めな服装の彼女と、華やかでケバい友人の服装にも表れていて、折り合いが悪かったろうことは想像に難くありません。
だから、二人は
「頑張ってね」
「(うん。)・・・・知歌も」
「(うん。)あんた(=僕)も長生きしてね。もうお爺ちゃんなんだから。じゃね」
本来あるべき()に書いた返しがない、投げっぱなしの、こんなぎこちない会話で別れてしまうのでした。
なので、どうして二人がルームシェアしてたのか不思議なくらいですが・・・・
きっと彼女は実家を出たくて、こうなる予感を抱きながらも無理にこの生活を始めた、のだと思います。
●窓の外には・・・・
翌日、僕と彼女の朝食の様子が映され、彼女が大学に出かけます。
その後、僕はずっと窓の外を見詰めていました。マンション前方の川に架かった鉄橋を電車が音もなく渡ってきます。そして僕はいつしかそこで寝入っていました・・・・。
●彼女と母の電話
その日の深夜になって、靴も脱ぎ散らかしてしまうほど疲れ果てて彼女が帰ってきます。
就活が上手くいってないようで、その後かかってきた母親の電話も、彼女は話の途中で無理矢理切ってしまいます。
ここでの二人の会話から、母親は娘に干渉しようとしていて、彼女はそれを嫌っていることが窺えます。
だから上記したように、おそらく一人暮らしは許さないと言う親を納得させるために、反りの合わない友人と無理にルームシェアをした・・・・のではないでしょうか。
●友人?知歌?
更に、そんなこんなで寝つけないところに、友人・知歌からの空々しいメールが届き、彼女はすがるように僕の体を撫でるのでした。
この時、携帯にはメールの差出人の名前が「知歌」だとしっかり映っています。知歌と別れる時の会話で彼女が名前も呼んでいましたし。
なのに、EDテロップには「知歌」ではなく「友人」とクレジットされていました。これは
『猫である僕には言葉も文字も理解できない=この物語が猫視点である演出』
なのだと思います。
●僕と彼女の物語!
そんな訳で翌日、僕のナレーションが流れながら、彼女が家を出ていくところが映されます。
彼女と僕の間を仕切るつい立ての一部が映り込みながら。
だから続けて映されるのは、彼女を見送る僕ではなく、窓の外を震える瞳で見詰める僕でした。
部屋に捕われているという認識はないのかもしれません。
猫だからその状況を理解できてないのかもしれません。
でも、冒頭の夢で、日々、彼女が出ていった後の部屋の窓から、僕はずっと自然の姿を追い続けているのです。
一方、親の干渉を止められず、就職も決められず、漠然とした漫然とした圧迫感の中で、息を詰まらせ暮らす彼女。
そんな僕と彼女はどことなく似ています。
だからこそ、僕が語り手となり彼女を暗示する二人? 二匹? の物語になっている!・・・・のだと思います。
といったところで、
彼女と彼女の猫 - Everything Flows - 2sec.「」
に続きますw
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